↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスオーバー  作者: 連鎖
黄昏
70/141

破壊②

「そういえば…」


 明日は祭りだ。

 街はどこか浮き足立っていて、普段より笑っている人が多い気がする。


 ……まあ、俺には関係ない。


 彼女なんていないし、思い出といえば、小さい頃に両親に連れられて、

 境内の露店で何か食べた記憶くらい。


 あとはテレビやネットで見た情景と混ざってしまって、

 ――泣きながら背を向けて走っていく女の子の姿だけが、

 妙に鮮明に残っていた。


 ……誰だったっけ、あれ。


 今朝耳にした若い男の声にも、どこか覚えがあった気がして、

 何となく時間を持て余した俺は、

 目的もなく車を走らせて、その全てを思い出そうとしていた。


「……え?」


 いつまでも思い出せない気持ちのまま、

 適当に車を走らせていると、ふと、思い出が目に飛び込んできた。


 真っ白なロングワンピースに、よく似合う鍔付きの帽子。

 背が高く、スラリとした体つきの女の子が、

 まるで昔見たドラマのワンシーンのように、日差しの中を歩いていた。


 その姿を確認したくて、慌てて車を寄せて窓を下ろす。


「……みこちゃん?」


 その瞬間、思い出の中から抜け出してきたような彼女が、

 目を丸くして笑い返してくれた。


「なに言ってんの?

 この歳で“ちゃん付け”って。先生、頭おかしくなった?」


「……いや、ごめん。美琴さん。……俺が悪かった。本当に。

 あの時は……違う。違うな。全部、俺が悪かった。……ごめん。」


 言い訳するつもりなんてなかったのに、

 口を開けば何かしら言い訳が出てきそうで、

 拓海は、ただ何度も深く頭を下げた。


 そんな二人をみているのか、

 それとも軽トラが邪魔なのか、何台もの車が横を追い抜いていく。


「たっくん。……もういいって。ちょっと驚いただけでしょ?

 あんなこと聞けば驚くの、知ってたし。許すから、顔あげて。」


 やっと美琴は許してくれたらしく、

 肩苦しかった言葉が、少し前まで聞いていた言葉に戻っていく。


「……なんでも言ってくれ。何でもする。なんだっていい。」


「そうねぇ。じゃあ、車、乗せてよ。暑くてたまんない。

 面積増やせば涼しくなるかと思って、この格好にしたけど逆効果。

 はぁ。もう暑すぎよ。早くドアを開けて。」


「えっ……もう開いてるよ?」

「アハハ、そっか。そうだっけ。ありがと。……ふぅ、涼しい。」


 助手席に乗り込んだ彼女を見た瞬間、胸が満たされた。

 横にいる――ただそれだけで、心が落ち着いていく。


「美琴。今日はどこ行くんだ?」「叔父さんの家。知ってるでしょ?」


「……ああ、もちろん。」


 その名前を聞くだけで、どうしても顔が曇っていく。


「あの叔父さん、エロいのよね。はぁ、行きたくないなぁ。」


「じゃあ、行かなくても――」


 この時に、ただの知り合い程度の付き合いしか無い拓海から、

 彼女に掛ける言葉は、この程度しか出来なかった。


「ダメ。約束だから。向かって!」


 そんな拓海からの言葉に、

 彼女はとても真剣で、何処か切羽詰まった顔をしていた。


 そんな彼女の服装は、3年前にも見たような格好だったが、

 体つきが大人びてしまい、胸も、腰回りも、ずっと大きくなって、

 そのせいで服が少し窮屈そうに見えて、つい目がいってしまう。


「…」「また。中を見たいの?」


 その視線に気づいた彼女が、嬉しそうに笑って答えた。


 そんな彼女の姿を見る度に、

 昔は顔を真赤にして、恥ずかしそうに着ていた美琴を重ねてしまう。


 しかし今回は、インナーのキャミソールも外したようで、

 木陰を歩いていたときに、色々と透けていた。


「違う。美琴……さっき、全部見えてたぞ……」

「下着でしょ?別にいいじゃん。水着と変わらないし。」


「アレが水着って……」

「ふふ。今度、海でも……遠いよね。プール……ん~。プール…」


 そのまま、彼女はいたずらっぽく笑って、こちらを見た。


「水着は……下着と同じでティーバック……かもよ?」「……」


「あっ…日サロ、そろそろ行かないと色が抜けちゃう~

 ああ、たっくん。そこなら――トップレスにティーバックだから、

 そこで見せてあげてもいいよ。ウフフ。」


 そのときの彼女の顔。


 SNSにも載せていない、

 特別な他人以外には見せていない、その表情に思わず息を飲んだ。


 そんな魅力的な彼女と過ごす時間はあっという間で、

 気がつけば目的地の家に着いていた。


「帰りは大丈夫なのか?」


「うん。たぶん叔父さんの家に泊まるから、気にしないで。」


 どう見ても下着が透けているような格好で、

 少し困ったような顔をした彼女は、

 豪農の大きな古びた平屋に向かって走っていく。


「おじさぁああん!みこが来たよぉお!生きてるぅう?」

「おお、みこちゃんかぁあ。大きくなったねぇ。」


 ――この男。何度も結婚しては離婚を繰り返していて、

 愛人も複数いるという噂が絶えない。


 そんな叔父が腕を広げると、

 美琴は子供のように、その腕に飛び込んでいった。



 破壊②

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。