管理人①
独特な形とカラーリングがされた車に乗った理々杏が、
自分の住んでいるアパートに戻って来た。
二人は、その車から降りると、
一階にある「鈴木一徹」と表札がかかった部屋の呼び鈴を鳴らしていた。
「ピンポーン。。すみません。鈴木さん。鈴木一徹さん。ご在宅ですか?」
「ガチャ。。いまいくぞぉ。おぉぉぉう。理々杏かぁ。。理々杏やぁあ。」
人の良さそうな顔に、本当に孫が何人でも出来そうな力強い生命力と、
理々杏を見る顔も、可愛い孫を見ているような柔和な顔をしていた。
「すみません。身分証明書を見せてもらってもいいですか?」
「ほら、これだ。いいかな?」
「すずき。。ハイ。ありがとうございました。」
いつもの制服を着て、礼儀正しい受け答えが出来る男は、
鈴木から差し出された書類を確認し、問題が無い事を確認していた。
「理々杏さん。本当にこの人でいいのかい?」
「ハイ。おじいちゃんです。」「もう、迷子になったら。。」
もちろん連れてきた男も、彼女との名前が違う事には気になっているが、
渡されたのが公式の書類だったし、表札ともあっていたので、
彼に理々杏を引き渡していた。
「ぐいぃ。。ぎゅぎゅぅぅぅ。。理々杏。理々杏。。寂しかったぁ。」
男から引き渡されて、少し戸惑った顔をしていた理々杏を、
鈴木はとても嬉しそうに、とても愛おしそうに強く抱きしめていた。
「ハァ。。虐待とかは無さそうデスネ。じゃあ、理々杏さんもいいかな?」
「あっ。。はあぁあん。。はい、ありがとう。うぅう。。ございました。」
(クロ?これって普通の事?普通なの?)
(ちょっと。。。うぅうん。ちょおっぉと。。でも、普通だよ。)
胸が膨らんではいないとはいえ、身体を強く抱きしめられてしまうと、
どうしても色々な所から、イケナイ信号が出てきて、
夜中に一人でさわってしまう場所から、ダメな気持ちが膨らんでいた。
「ぎゅう。りりあぁあん。ちゅちゅっちゅぅう。
可愛いい、りりやぁ。可愛い。可愛いリリィいいいい。ぎゅぅぅ。」
普通に生活していれば、連絡など来ない場所から電話が入り、
可愛い姫の事だと解って気持ちが盛り上がってしまい、
この行為自体も仕方がない事もあると思うが、
他人の視線がある中で全身を強く抱きしめ、
鈴木が理々杏の顔にキスの嵐を降らせていた。
「肉親へ言うことでも無いのですが、
お年頃の女性への激しいスキンシップは、嫌われてしまいますよ。」
「ぐい。。理々杏?」
「あはは。ちょっと、ちょっとヤメテ欲しいなぁ。アハハ。ちょっとね。」
人の目もあるので肉親という事にしているが、
理々杏にとっては、少し知っているエッチなおじいちゃんの鈴木に、
顔中を舐め回されるのも、全身を強く抱きしめられるのも、
素直に気持ち悪く、嫌悪感を持っていればいいのだが、
何度考えてみても、嫌だと感じない事に一番困っていた。
嫌いなものに向ける拒否感と言えない、不思議な感情を感じてしまい、
いろいろな気持ちが混ざりあって、
ただ他人に見られて、恥ずかしいという気持ちが強く出て笑っていた。
「じゃあ、理々杏さん。都会に出てきて楽しいのは分かりますが、
ご心配をかけないように注意してくださいね。」
「ハイ。すみません。注意します。」「理々杏?」
「あはは、ごめんね。おじいちゃん。ちょっと、迷っちゃったんだ。」
心配そうに向けてくる鈴木の視線に嘘は無いし、
同居人からの警告もないので、
ただ心配をかけてしまったと、申し訳ない気持ちで一杯だった。
「もちろん、無事に帰ってきたんですから、
おじいちゃんも怒ったりしないでくださいね!怒ったらダメですよ。
ただ暖かく迎えてあげて下さい。それじゃ、理々杏さん。」
「すみません。ありがとうございました。」「。。。」
彼女に嫌われていないと思っていた鈴木は、
本当は嫌われていて、実は自分の事が嫌で逃げ出したのかもと、
少し申し訳ない気持ちで理々杏を見つめていた。
。
満腹になるまで食事を出して貰い、暖かいお風呂にも入れてもらうと、
一人暮らしをさせて貰う為に必要な、二人で決めた仕事を始めていた。
「何があったんじゃ?」
「道に迷っちゃった。。アハ。ごめんね。鈴木さん。すみませんでした。」
「まあイイ。無事だったんだからな。スルスル。。どうじゃ?」
「う。。うぅぅ。ちょっと痛いかな。」
彼女は全裸で、大きなクッションマットの上で顔を下にして寝ていた。
マッサージを受けている理由は、
鈴木がマッサージ師の仕事をしているので、
仕事では聞けない生の感想を、理々杏に教えて欲しいという事なのだが、
施術と言っても、異性に全裸を晒しているだけでも恥ずかしいのに、
触られている感想を話せというまで言われている事に、
男性とつきあった経験も無い理々杏は、
どう答えたらいいかわからなくて、施術を受ける度にとまどっていた。
管理人①