先輩①
「ハアハア。やっと着いた。やっと着いたぁああ。はあああぁぁぁ。」
歩いてきたので、もう昼を過ぎた時間になっているが、
新聞に書かれていた住所のビルに到着していた。
(ここなのかなァ。。クロぉお。ここでいいと思う?)
(やめた方がいいって、正義の味方なんて、ろくでもない奴だよ?)
(もう。それは、散々話したし、私は運命を感じたんですぅうう。)
歩いている最中も、クロは一生懸命説得をしていたし、
こんなに胡散臭い会社など、やめた方がいいとまで言っていた。
しかし正義の味方は、子供の頃からの夢であったし、
テレビで見たような超常現象も経験した理々杏の気持ちを、
変えることは出来なかった。
(そうか。。普通がいいんだよ。どうして、困難に首を突っ込むんだよ。)
(クロに会えた。鳥が人?に変わった。新聞での募集記事。
クロは、これが運命だと思わないの?正義の味方よ。せいぎぃいい。)
中学生が着るようなジャージ姿をした小さな子供が、
巨大なビルの前で、
誰かと話しているようにしている姿も目立ったようで、
「えーっと、君?このビルにお父さんでも務めているのかい?」
休みだと言うのに、警備員の服を着た男が理々杏に声をかけてきた。
「違います。社員募集の応募に来ました。」
(やったぁ。これが運命。そうよ。運命のダイ。だい、いっぽおぉお!)
(はぁあああ。僕は普通に。普通がいいと思うよ。リリィ。)
正義の味方という、一番わかりやすい目標に向かっている理々杏は、
あきらかに不審者?迷子を見ている、
可哀想なものを見ている男に、少しも気が付かなかった。
「そっかァ。。ぽんぽん。。そういう年にも見えないが、お嬢ちゃん。
お仕事って言うのはねぇ。。平日にするんだよぉお。
わかったぁあ。僕みたいになっちゃだめだよォ。ぽんぽん。」
流石に理々杏が小さな子供に見えても、
150cm。胸は。。ゴメン。。。お腹は、60の。。お尻。。80。
お子様という程でもなく、高校生と言うには幼い顔をして、
化粧もしていなく、産毛が生えて。。眉も自分で適当に手入れして。。
将来は美人顔と言いたいが、おさなさが残った顔で、
一重眉で細いアーモンド型。鼻はワシ鼻で、
上唇は細いが、この顔でも下唇は厚くポッテリとしていた。
「ガサガサ。違います!これ。。バンバン。これ!ここに書いています。」
「お嬢ちゃん?そういうのは、平日にお父さんと来たらいいよ。ぽん。」
この男も悪い男では無いし、
彼女の家庭環境を知って言っているのでは無いが、
「違うって言っているでしょ!わたしわぁああ。わたし。。ひっぅ。」
(泣くなって、リリィ。泣くなよォ。頼むから泣かないでくれぇ。)
(わたしぃ。せいぎぃいい。正義にぃいい。)
(ああ、わかった。俺も助けてやるから、な。。頼むよぉ。リリィ。
泣き止んでくれよ。こんな場所で泣かないでくれって。)
泣くのを我慢しているような顔をしているのだが、
手で顔を覆うこともしないで、
口をへの字ににして、相手を睨みつけるような目で男を見上げていた。
「アァア。。お嬢ちゃん!ごめんね。おじさんが悪かった。ごめんね。」
「ひぃわう。ひわうもん。わわはひ。ひはう。ひ。ひほほ。ほほおぉん。」
泣いている子供に勝てるような壊れた男が、
こんなに大きなビルの警備員をしている事は無かった。
「わかった。わかったから、じゃあ。お仕事のぉ。そうだ。おじさん。
ここのお仕事しているんだよ。」「お仕事。。ここの!お仕事ぉお。」
「じゃあ、会社の名前。名前は、なんていうのかなアアァ。」
(ヤバい。この子はやばいよなぁ。ハァ。なんで声をかけたんだっけ?)
迷子に手を差し伸べたかったのか、
それとも、あまりにも暇だったので話し相手を探していたのか、
今は最初の事などどうでもいいと、早く部屋に戻りたくなっていた。
「せっ。。。正義の味方会社。。正義の味方です。。。です。」
「。。ハァ?。。」
(やっぱり、ヤバい子。。ハァ。。やっぱり、そういうことかぁ。)
休日だと言うのにビルの前で警備をしているだけで嫌なのに、
意味のわからない事を言う、イタイ女の子だと確信して呆れていた。
「だから、正義の味方会社です。面接に来ました!ガサガサ。これです!」
「(うわっ。。)。。。」「ンっ!」
理々杏が指さしている場所に見えるのは、
デカデカと書かれた木の写真で、凄く小さな文字で書かれるか、
昔流行ったような隠し文字が書かれていれば、
この男でも微かな違和感を感じて、その事で何かを説明できるのだが、
何度見ても、ただの木にしか見えないので、
やっぱり理々杏をイタイ子だと確信して、
どうすれば、この子から逃げられるかを考え初めていた。
「いやぁ。おじさんは目が悪くってネェ。小さな文字は見えないんだよ。」
「ぐしゃ。ぐしゃ。ここ、ここを見てください。住所は、ここですよね?」
理々杏にもおおきな木がバックに描かれているのは見えているし、
募集要項など、枠に書かれたものが飛び出して描いてあった。
「そうだなぁ。。間違いかもしれないし、住所を読んでくれないかな?」
「東〇都〇〇区〇2-5-8SKビル50階。正義の味方会社。」
(おじさんって、見えないのかなぁあ。クロぉお?そうなのぉ?)
(ああ、あはは老眼ってのがあってさぁ。。年をとると仕方ないんだよ。
あはっ。あハハハ。だからかなぁ。多分どうかなぁ。そうかなぁ。)
新聞で使っている文字としては、大きい書体を使って書かれているので、
文字が見えないとも思えない理々杏は、素直に書かれた事を伝えていた。
「ああ、ごめんね。おじさん知らなかったよ。いやぁ。ごめんねぇえ。」
(ヤバい。真性の子供かよ。。ヤバい。ヤバいってぇえ。オイオイ。)
住所もビルの名前も合っているが、このビルに50階など存在しないし、
そこへ繋がるエレベーターなど存在しない、
もちろん、正義の味方会社などのプレートも無かった。
当たり前だが、繋がる内線電話も無い、ただの妄想だとしたら凄いが、
小さくもない子供が、本気で言っている事に慌てていた。
先輩①