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クロスオーバー  作者: 連鎖
リリアンとクロ(正義の味方)
3/89

出会い②

 彼女が逃げ切った後は、

 朝刊が遅れた事のクレーム対応に、一軒一軒、頭を下げて謝っていた。


 しかし、子供に見えてしまう理々杏に、

 強く避難めいた声で言う人は少なく、

 更新解除などとも言われなくて良かったのだが、

 逃げた時に歪んでしまった新聞は、彼女が買取る事になって困っていた。


 買取が新聞程度と言えるほどに、理々杏は裕福でも無く、

 元々少なかった現金が、もっと少なくなったので、

 少しでも節約しようと、一人暮らしをしているアパートの部屋で、

 チラシの食品ページを見ながら、少しでも空腹を紛らわそうとしていた。


「ガサガサ。。ハァああ。。これが、朝食。。今日のご飯。ハァア。。」


 小さな子供に見えてしまう理々杏が、奨学金で高校に通うためには、

 同じ孤児院を出ているような先輩を頼るか、

 お母さんの知り合いに頼むしかなく、

 このアパートの管理人がお母さんの知り合いで、

 たまたま、高校から歩いて三十分程度の距離にあったので、

 素直に何でもするから住まわせて欲しいと頼んでいた。


 もちろん、朝のアルバイトとは違うお手伝いをするという事で、

 このアパートでの一人暮らしを認めて貰ったのだが。。。。


(ハァ。。クロぉおお。ひもじいよぉお。これって、食べられるかなぁ。)

(蛍光インクだから毒になるよ。消化も出来ないし最悪動けなくなるよ。)

(そういうんじゃ無くてぇえ。ハァ。。美味しそうだなぁ。お肉ゥ。)

(朝ごはんが食べたいのなら、管理人に頼むか、家に戻ったら?)


 新聞に入っているスーパーのチラシは、とても美味しそうに見えるし、

 お菓子やジュースなどの嗜好品も多く印刷され、

 理々杏の若い心をかき混ぜていた。


 確かに同居人が言うように、

 孤児院に戻るか、身元引受人に話せば食事が出来ると思うのだが、

 何故か理々杏は、必死にどちらも嫌がっていた。


「ハァああああ。。管理人さぁあん。でも、これ以上。。家にぃ。ハァ。」


 やっぱり、食べたい気持ちを声に出して心を整理すると、

 何処かで食べようという気持ちも消えてくれて、

 夕食ぐらいは食べるようにしようと、心を先に進めていた。


(いい人だと思うけど?)(うぅン。。うん。クロが言うなら、いい人?)

(普通のおじいちゃんだよ。)(でもぉ。。ハァ。考えすぎなのかなぁ。)


 両親も、もちろん親戚や肉親など見たことも無いし、

 人との距離もドラマで見る程度の感覚なのだが、

 管理人のスキンシップが、この思春期が始まったような、

 少女から女に変わっていく身体が、拒否しているように反応してしまい、

 その後に続く、気まずい空気感が嫌で、

 最近は、あのおじいちゃんと話さないようにしていた。


(リリィが嫌ならいいけど。僕は普通だと思うよ。)

(ハァ。そうかなぁ。)(あはは、考えすぎだって。考えすぎ。)


 もちろん、母親におじいちゃんの行為を聞くという手段も考えたが、

 もし結果が悪い方向に転がれば、やっと一人暮らしを始められたのに、

 ここに住むことさえも出来なくなりそうで諦めていた。


「ガサガサ。。。ハァ。。。食事付きのバイト。。流石に。。深夜は。。」


(んっ!なにこれ。。。アレ?正義の味方会社。。なによこれ。

 年齢不問。性別不問。。。。身長。体重。スリーサイズ。えっ、応相談?

 月払いのお給料。。。。ウソ!。借金可能。50%先払い可能。

 有給完備。残業手当有り。出勤退社時間なし、緊急対応有り、応相談。

 待機時の食事代支給。うそ。。ご飯。。ご飯がぁああ。)


 理々杏が驚いているようだが、

 普通の社会人とあまり変わらない月給だし、

 書かれている内容は普通の事だったが、

 年齢不問なのも、会社の名前も、とても変な内容だったが、

 彼女の年齢で就職可能であれば、ありえないほどに破格の内容だった。


(やめた方がいいよ。リリィ。まともな会社じゃないから。ダメだよ。

 管理人さんの方が、何百倍もマトモだと思うよ。だからァ。

 早く行こうよ。大丈夫。あの程度は、普通のおじいちゃんだって。)


 クロは何かを知っているのか、

 もしかしたら、管理人から何か別のものを貰っているのか、

 彼女が見ている会社のことを、とても嫌そうに話して、

 管理人に助けてもらおうと説得していた。


(早く行かないと。。早く。正義。。正義の味方。。そうよ!これは。)

(待ってぇえええ。ちょっと、待とうよ。リリィ。ちょっとやめよう。)


「ガサガサ。私は、正義の味方よ。そうよ。これは啓示よ。これは運命!」


 お腹が空くと頭が冴えるとも言うが、

 今の理々杏は、今朝見たスプラッターで異常な光景と、

 目の前に広がっている「募集中」の文字が、

 全て自分を正義の味方にするために引かれたレールのように見え、

 その胡散臭い現状を疑うこともなく、全てを受け入れていた。


 

 出会い②

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