出会い①
有名進学校の私立八○川進高校の一年生として、
奨学金を貰い学校に通っているのが、
藤ヶ谷 理々杏 16歳の高校一年生 12月31日が誕生日の、
幸が薄い女の子。
両親共に知らないし、優しい寮母さんが母親代わりに育ててくれた。
高校は出た方がいいと言われ、
頭の出来はいい?ほうなので、奨学金を貰いながら入学していた。
もちろん、有名進学校なのでアルバイトは原則禁止だが、
生活が苦しい理々杏は、大学生と言って、
色々な短期アルバイトをしたり、バレても怒られない?事をしていたし、
始まりの事件も、早朝のアルバイト中に発生していた。
(ネムイ。眠いよぉおお。はァァあ。眠いよぉおお。)(がんばれぇ。)
低血圧なので眠いのか、
それともこんな朝早くに、サイクリングをして疲れるのが趣味なのか、
まだ朝が開けていない時間に、自転車に乗って仕事をしていた。
「鈴木さん。。フゥ。。次は、佐藤さん。。はっ。。長谷川さん。。」
理々杏は、一人でいる事が多く頭の整理が進まないのか、
それとも、眠気を少しでも覚まそうとしているのか、
必死に声に出して配達先を確認しながら、朝刊をポストに投函していた。
「んっ。。あの影!。。事件よ。」
残念な事に、この子は田舎暮らしが長かったせいで好奇心が強く、
田舎でもよく見かける影が横切ったのと、
その持っている物が気になって、すぐに影を追いかけていた。
(ネェ。。クロ?アレって何か知ってる?)(うぅウン。やめたらァ?)
(どうしてよ。。アレは事件よ!)(だから、やめた方がイイって!)
小さな頃に古ぼけた?苔むした?打ち捨てられた祠を直した時から、
自分は猫だと言い張る、頭に住み着く気持ち悪い同居人に聞いていた。
もちろん最近は、とても便利なネコ型ロボット?
完全カンニング機械?を、頼りになる話し相手として使っていた。
「ぎぃいいっこ。。ぎぃいいい。。ガチャン。。止まった。。」
(クロ。。止まったよ。。)
(だからさぁ。。やめなよ。普通がいいんだよ 。
ふつうに年をとって普通にさぁああ。だから、駄目だよ。だめだって!
普通じゃなくなるよ。リリィ。だから、諦めようよォオオ。)
彼女の着ているのは、
中学生時代に支給された使い古したジャージを外で着ているので、
見ただけで貧乏な苦学生だとわかるが、
そんな格好をした女子高生が、
こんなに朝早くに、影が隠れていった場所に回り込んでみると、
「クチャ。。くちゃくちゃ。。」
(ネコよ。。ほら、ネコ。ネコ語。。教えてよ。。さあ、教えなさい!)
木陰でスプラッターになった小鳥に牙を突き刺し、
前足を器用に使って、解体作業をしている猫に話しかけろという、
獲物の味でも教えて欲しいのか、それとも違う事でも聞きたいのか、
意味のわからない、無理難題を同居人に聞いていた。
(にゃぁああ。ねんっこにゃにゃにゃ。リリィ。ほら、これでいいから。)
もちろん、そういう事など日常茶判事らしく、
意味があるのだろうか、
少し考えただけで猫が発音しない言葉を並べて、同居人が話していた。
「にゃぁああん。にゃんにゃんにゃぁあん。」
もちろん、食事を邪魔する人間など敵でしか無いし、
声帯のちがう人間が正確に話せる訳もなく、
もちろん同居人が喋った音と、違う言葉を理々杏が喋っていた。
「ふしゅ。。だだっ。。ギギャァアアアアア。」
もちろん最初から諦めていた同居人が、言葉など教えるわけ無いので、
理々杏が声をかけるとすぐに、食事を邪魔された猫が振り向き、
普通なら獲物を持ってどこかへ逃げるはずだが、
彼女に向かって飛びかかって来た。
「いやぁあああ。クロぉおおお。助けてよ。いぎゃぁあ。助けてぇえ。」
(声を出さない、ただの猫でしょ。
普通に振りかぶって、こう。。終わったら、こう。。でね。こうだよ。)
同居人が甘やかすのが一番悪いと思うのだが、
落ち着いた声で的確なイメージが頭の中に流されたあとは、
それに合わせて身体が自動的に動くので、
理々杏は、ただ邪魔しないように全身の力を抜いていた。
「がツン。。」「ミギャ。。」「バツん。。」「ブギョ。」
「グチャ。」「ギギャァゃぁあ。。。。アッぁぁぁ。。」
まずは、ボクシングのように構えた理々杏は、
飛びかかってきた動物のコメカミに、右のフックを打ち込み、
次は左のショートアッパーを腹部に与えて悶えさせて、
最後には、地面でグロッキーに寝ている猫に向かって、
踏みつけるように、かかと落としを決めていた。
「やったぁあああ。。悪は滅びるのよ。バカめぇええ。アハハハ。」
さっきまで元気にしていた動物に対して、この行為は不憫だと思うが、
昔から悪即斬を決めて喜んでしまう、子供のままの理々杏は、
食事中の動物に向かって、自分の正義を実行して喜んでいた。
(ハァ。。やっちゃったああぁぁぁァ。。リリィ。もう、戻れないよ!)
(だって、小鳥さんを襲って食べていたような、凶悪犯罪を許せません!)
(だからァ。。君だってさぁ。。)
目の前で野良猫?飼い猫?毛並みのいい動物を気絶?させた後も、
その興奮が忘れられないのか、そのままの姿で二人で話していた。
「ピシ。ピシッ。ミシ。。ミシミシ。うぎゃああ。うぎゃぎゃぎゃああ。」
捕獲者が消えて何かが喜んでいるのか、
木をへし折ったような、何かを無理矢理動かしているような音がして、
さっきまでスプラッターで、ボロボロになっていた小鳥が、
突然膨らみ始めて、何かの形に変わろうと立ち上がっていた。
(クロ。。アレは、何よ。。アレって。。何よ。。)
(うぅうん。。幻覚かなァ。。気のせいさ。気のせい、気のせいだねぇ。)
小さな頃から好きで見ていたテレビ番組に出てくる怪獣のように、
人程の大きさまで小鳥が膨らんでいるのだが、
さっきの食事の時に壊れた場所は治っていなく、
腕は引きちぎれてぶら下がり、胴体部分も欠けて内蔵が飛び出し、
首など折れ曲がって、皮だけが繋がっていた。
(気づかれる前に逃げて!リリィじゃ無理だから、早く逃げるんだ!)
(え。。なによ。。アレって、クロ?アレって。。)
(早く逃げろって、逃げなってぇええええ。)(あっ。あぁ。。ハイ。)
「ダダ。。ガチャ。。ガチャン。。ぎいい。ぎいぎいきいい。」
必死に逃げた。ただ必死に自転車を漕いで逃げていた。
今だけは、クロが正しかったと反省しながら必死に逃げていた。
初戦は、理々杏が負けた試合で終わっていた。
出会い①