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戦争を語る仔  作者:
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75/80

75 息を潜めて

 宝子は武器を持っていただろうか。いや、自分と同じ程度で、せいぜいナイフしか持ってはいなかったに違いない。

 子供であるとは言え、軍人としては秘匿された部隊の自分たちが銃を持って町を行き来することは、検問を行っている正規軍の目に留まる危険なことだった。そのために、その先々で用意された武器を手にすることが常で、前線に駆り出されるのではない限り、町境付近の移動には最低限の武器しか身につけてはいなかった。

 空夜は足を速めた。

 襲ってきた二人の足跡をたどっていく。

 方向を正そうとして、空を仰いだ。

 ほとんど動いてはいない月が、天上やや斜めにかかっていた。火が出てから時間はまだそれほど経ってはいない。煙と木立に阻まれたユーリ・エバは、空夜を見捨ててしまったかのように遠く見えた。

 誰も来ないで欲しい、と空夜は願った。

 誰も来ないで欲しい……せめて、自分と宝子がこの森を出るまでは。

 火の手が上がったのを見て、町に常駐する部隊が駆けつけてくるに違いない。助けを求めることはできないだろう。身分証も身寄りもない黒い髪の人間である自分たちでは。

 涙がにじんだのは傷のためだったのか、それとも他に何かあったのか。

 宝子は小さな木立の前に倒れていた。炎の灯りに照らされて、まるで水の中を漂っているかのようにゆらゆらと揺れる影が佇んでいた。

 彼女の下には、やはり軍用銃で武装した男が奇妙な格好で仰向けになっており、その肩口から小さなナイフが突き出されていた。彼女はその男にのしかかるように倒れ込んでいた。


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