71 戦慄
近付いた頃には、すでにそれは大きな火煙になっていた。
古木がはぜる音と、生木の放つ凄じい煙。地面が熱を放って、熱い風が頬を切る。風にあおられて立ち止まると、奥の方で木が倒れ、土煙と湿り気を帯びた白煙で視界を奪われる。風がうねるような咆哮を上げている。
あっけにとられて、思わず立ちつくす。茫然と見上げた夜空には、錆びた星々を隠す白い柱。
不意に連続した爆発音がして、耳元を何かがかすめた。
とっさに伏せたが、それが熱で暴発した銃弾だとすぐに気付いた。
これ以上は近付けない。
しかし、それは確かに聞き覚えのある銃声だった。
空夜は身を低くして、足元を探った。木立の間、柔らかに濡れている腐葉土を炎の灯りで照らして透かし見る。
足跡……たくさんのそう大きくない足跡がいくつもついていた。
自分は戻ってきたのだ、部隊がひそんでいた場所へ。
だが、みんなはどこだ?
この火を起こした人間は?
煙から少し離れて、辺りを見回す。
崖に走った亀裂、その隙間から煙がもうもうとたちこめていた。大きな岩山が噴火でもするように、しゅうしゅうと煙を吐き出していた。
まさか、と背筋に戦慄が走る。
体力のないものをあそこで休ませようと、小さな隊員を気づかってゼファが言っていたことを思い出す。
慄然とした思いにかられて、視線を走らせる。
誰もいない。敵も味方も。
かん高い風の音が、人の叫び声に聞こえる。
宝子は……彼女も偵察に放たれたはずだ。そう遠くないところにいて、自分と同じように立ちつくしているに違いない。




