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戦争を語る仔  作者:
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67/80

67 命 背負う影

「分かった」

 空夜はナイフを握り締めた。コートのポケットに入っているもの以外は諦めることに決めて、その場に残して立ち上がる。

「うまくいくだろうな?」

「できなけりゃ、次に会うのはあの世かな」

 飄々とそう言って、秋比古はにんまりと笑って見せた。

「ま、そんなに悲観することもないだろう。桐珂さんは先に行ってる。俺たちは俺たちの命のことだけ考えればいいんだから。……じゃ、うまくやれよ」

 惜しむ間も与えないままで、彼は身を低くして走り去った。足音をひそめたり闇に紛れて隠れたりするのは、クレッフェであった彼にとっては造作もないことだった。

 空夜は凍えた手でしっかりと抜き身のナイフを握り締めた。戦争が終わって二年経ったとは言え、トラブルの多い娼館で警備をしているだけあって、緊迫した状況に体はきちんとついていく。彼も秋比古とは反対の方角へ走り始めた。

「食べ物の袋が残っている。この辺りにいるぞ」

 やがて、彼の背中は森の中で喧騒が広がるのを感じた。


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