60 鍵はどこへ行った?
「私の方は、君のメールの内容に思い当たる節があってね。昨晩は私が閲覧できる限りの軍の資料を当たってみたんだ」
廊下に出ると、タナカはそう話を切り出した。
「私のメール……ですか?」
「あぁ、」
半歩先で、タナカはうなづいた。彼はゆっくりと歩く。話す時間を稼いでいるのか、足がそこまで悪いのか、サベンコには分からなかった。
「ユーリ・エバで、戦時中クレア・エバに放棄されていた『武器』が見つかったという……」
「あぁ、あれですか。中央は語りたがりません。しかし、ユーリ・エバで近ごろ何かが起こっていることは確かです」
「クレア・エバのザゼルの司令部にクレッフェが侵攻して起こった例の事件、『ザゼルの悲劇』。あれはそもそも、クレッフェの力を解く『鍵』が制御できなくなったことから始まる。鍵を失くせば金庫もただの箱、『鍵』の存在自体が脅威になり、クレッフェもいつ牙をむくか分からない存在となる。カッセルはそれを恐れての試験部隊をザゼルで廃棄し、正規部隊は情報戦のみにそれを使用することとした。あの『鍵』、あれはどこへ行った?」
「散花の人間と共に、ザゼルの事件で処分されたのではないのですか?」
タナカは疲れたように首を振った。顔色が悪いのでひどく力なく見える。




