56 偽造移動許可証のルート
サベンコはもうそれ以上聞こうとはせず、ただうなづいた。そうして手に握り締めていた数枚の紙を机の上に置いて、彼によこした。タナカはそれに手を伸ばした。
「……これは?」
「国内の偽造移動許可証の主だった流通ルートです。収監されている偽造業者の証言と、情報部の囮が手配を依頼することによってつかんだものです。三枚目はここひと月の偽造移動許可証の場所別検挙数と手配業者名、四枚目は過去一年間で偽造移動許可証を売買したかどで検挙された、あるいは容疑を持たれた人間の名前です。もちろんこれは知り得る限りで、すべてではありません」
「ほう?」
感心したようにうなづいて見せて、しかしタナカにはまったくサベンコの意図が見えなかったようだった。ページをめくってはみるが、公安維持部でもない自分には関係のないこと、そういう考えが見えていた。
この早朝にサベンコがクマをつくってタナカの自宅まで押しかけてくるほどのものには見えなかった。
数回見直してみて、タナカは顔を上げた。
「これが?」
「ここ数週間のうちにカッセル次官が散花の部隊の生き残りを狩っていることは、それ相応の情報屋であればつかめることでしょう。つまり、散花六部隊のことを知っていて、その動向に注目している人間ならば、です」
サベンコは座り直すと、身をのりだした。
タナカも少しばかりこの資料の意味がつかめてきた。




