52 宝子の姉
「いってきます、だって。彼女すごいね」
リンが感心をあらわにして言った。ふり返った彼女の顔は桐珂に対する羨望をたたえていた。
「さっすが、戦争に行ってただけあるわ」
「戦争がそうしたわけじゃないよ」
空夜が言うと、秋比古もうなづいた。
「血だよ、あれは。宝子ちゃんそっくりじゃないか」
「そうかな」
「そうだよ。俺が最後に宝子ちゃんに会った時も、ああいう感じだったから……」
秋比古はまだ彼女を目で追っていた。そう言ってから明らかに今のが失言と気付いたのか、秋比古は口を塞いで空夜を見た。
空夜は困ったように笑って見せた。
「いいよ、別に」
「……悪い」
「桐珂が捕まることはない。だって、彼女は情報戦のエリート、クレッフェの正規部隊の人間なんだから。軍人恩給だって受けられる、黒い髪の中でも優遇された人間なんだから」
「……」
秋比古と空夜が黙ってしまうと、リンが大きく息をついた。
「あぁあ、なぁんかその発言ってヤな感じ。自分が疎まれているどうしようもない人間なんですぅ、って告白してるみたい。暗いのはイヤイヤイヤイヤ。今日は桐珂さんの出立を祝ってぱぁっといこうよ」




