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戦争を語る仔  作者:
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52/80

52 宝子の姉

「いってきます、だって。彼女すごいね」

 リンが感心をあらわにして言った。ふり返った彼女の顔は桐珂に対する羨望をたたえていた。

「さっすが、戦争に行ってただけあるわ」

「戦争がそうしたわけじゃないよ」

 空夜が言うと、秋比古もうなづいた。

「血だよ、あれは。宝子ちゃんそっくりじゃないか」

「そうかな」

「そうだよ。俺が最後に宝子ちゃんに会った時も、ああいう感じだったから……」

 秋比古はまだ彼女を目で追っていた。そう言ってから明らかに今のが失言と気付いたのか、秋比古は口を塞いで空夜を見た。

 空夜は困ったように笑って見せた。

「いいよ、別に」

「……悪い」

「桐珂が捕まることはない。だって、彼女は情報戦のエリート、クレッフェの正規部隊の人間なんだから。軍人恩給だって受けられる、黒い髪の中でも優遇された人間なんだから」

「……」

 秋比古と空夜が黙ってしまうと、リンが大きく息をついた。

「あぁあ、なぁんかその発言ってヤな感じ。自分が疎まれているどうしようもない人間なんですぅ、って告白してるみたい。暗いのはイヤイヤイヤイヤ。今日は桐珂さんの出立を祝ってぱぁっといこうよ」


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