46 過去 あわわ、ごめんなさいっ
「おにい……」
聞こえたのは意外にも高くて幼い声。その声の主に気付いて空夜と秋比古は安堵の息をついた。
対する彼女はしばらく闇を透かすように見ながら沈黙し、そうして、突然慌てたような声で、
「えっ……あ、あぁっ、ご、ごめんなさい、お邪魔して……!」
息を飲みながら、劇的に素早く後ずさると、
バタン。
シャワー室から出ていった。
「……」
「……」
空夜と秋比古は彼女が出ていった方を見て、硬直したまま沈黙した。それから顔を見合わせる。空夜の口を抑えたままの秋比古の手が、力なく重力に従って落ちた。
ひどく誤解されたような気がして、宝子の名を呼びながら二人でシャワー室を飛び出したのは、それから瞬間後のことだった。




