42 ザゼル
「終戦を目指して軍全体が工作を始めたこの時期に、散花の部隊がつかわれないってのはおかしいと思わないか? 今までだってさんざん人使い荒く使ってきたんだ。情報戦に長けているクレッフェが、ここに来て第一第二部隊とも疎外されている。そして、その直前に散花六部隊のうち、第四、第五、第六の三部隊が姿を消した」
「……どういう意味だよ。姿を消したってのは」
「そのままさ。いなくなった。戦場から消えた」
彼はなるべくさりげなく言おうと努力したようだったが、それはまったく成功してはいなかった。低い心地が声に出て、空夜に何ごとか警戒心を与えた。
「人づてに聞いた流れの情報だからあてにはならないが、初めは、第四部隊からだったみたいだ。クレア・エバの放棄していったザゼル地区の森の通信司令部から、情報を持ち出す作戦だった。そうして先月初めにそこに行ったまま、帰ってはこなかった」
それを聞いて、空夜は眉をしかめた。
「……ザゼル……?」
秋比古はうなづいた。
「全員が死んだ?」
「あるいはね。だがそれだけじゃない。それを奇異だとして、カッセルは第五部隊に調査に当たらせた。そこでも帰ってこない。そうして第六部隊も。偶然も二度までなら神様が許すが、三度となるとそうはいかない。ザゼルは今はもう前線でもなんでもないし、クレア・エバからの移民収容所を監視するためにドニの特殊部隊がすぐ近くの街に入っている。ふたつの部隊の人間が秘密裏のうちに逃げたのでなければ、あの比較的平和な地区で軍人が姿を消すなんてこと、」




