36 一緒に行くだろ?
「ゼファは覚えている?」
「ゼファ?」
「お前んとこの、第二部隊の隊長だよ。彼は生きているらしい」
空夜は少しだけ目を見張った。まるでよく見ればすぐそこにゼファの顔でも現れると思っているかのように。優しくて強いゼファ。彼が生きている。戦争が終わってから二年も経ったのに。ザゼルの悲劇から三年近くも経ったのに。
秋比古は得意気に言った。
「彼もラファティのところに通行許可証を手配しに行ったらしい。土地勘があるから案内してもらうことができそうだ。すごいだろ、こんな偶然。蛇の道は蛇ってところだな」
「……そう、なのか」
少しだけ嬉しいような、安心したような、そういう懐かしい気持ちになって、空夜はうなづいた。
死んだと思っていた人間が生きていること。情報が不足している戦場では珍しくはない。しかし、圧倒的に希望の欠けていたあの時を生き残った人間がいるということが、こうまで今の自分を安堵させるとは思っていなかった。
「一緒に行くだろ?」
秋比古が子供っぽく聞きかえした。




