35 混乱と古い許可証
「空夜、」
あとから秋比古がつき添ってきた。空夜は不機嫌に見かえした。
「なに?」
「ラファティと言う男と連絡をとった。中央から外への移動許可証を手に入れることができるかも知れない」
「こんなに早く?」
彼はポットを持ちあげた手を止めた。秋比古が早期の中央地区の脱出を目指していることは昨日の話で分かってはいたが、初めてのこの街でそれほど早く手配できるとは思ってはみなかった。せいぜい、雪が降るよりも前、そう思っていたのだ。
「まだ戦争が終わって二年だ。古い許可証が大量に出回っているのさ」
「古い許可証で?」
「田舎の道を通って行けば、まだ十分通用する。金に視界をさえぎられて、目の悪い人間ばかりだからな」
「呆れたな」
「それに、」
秋比古はそこで少しだけ言葉を切った。何か期待させることがあるのか、それとも言いにくいことなのか、そこまでは表情からは決して読ませない。
しばらく沈黙して、そうして空夜の方が苛立って、結局尋ねさせられる形になってしまった。
「……何って?」




