33 彼女の情報 カッセルの動向
「東方司令部に入り込んでいる人間と連絡をとったの。カッセル次官は確かにドニ軍東方司令部に居たわ。ただ、現在のところ軍の指揮関係には当たってはいないみたい。雑務係、彼女はそう言ったわ」
「カッセル……次官が雑務係……」
複雑な思いが胸に浮かんだ。
彼は、戦時中は軍の中枢部で最高機密であったクレッフェ試験部隊の作戦行動を指揮していたのだ。それが、戦争が終わった途端中央の汚点として地方にとばされ、その上雑用係。彼もまた諦めて二年もその仕事に従事してきたのであれば、戦後の焦燥には勝てなかった人間なのかも知れない。
「彼の周辺警護が厳しくなったというのも聞いた。ここ数週間のことだそうだけど。それから、彼の通信機に入るメールの数がここ数日パンクしそうなほど多くなったってこととか、最近よく出張するってこととか」
「どこかと密に連絡をとっている?」
「多分。でも私が連絡をとった人間は軍の人間ではないから、クレッフェのことは聞けなかったわ」
「ありがとう、桐珂」
空夜は手を伸ばして彼女の頬に触れた。彼女は微笑んでそれを受けた。
「……もしカッセル次官がクレッフェの試験部隊を集めているんなら、二年も沈黙を保ってからのことだから、それなりに理由があると思うんだ。それを知りたい。それを知れば僕たちが安全かどうか判断できると思うんだ」
「分かっている。中央にも人をまわしてみたから、何か今日中に報告が入ると思うわ」
「うん」




