表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦争を語る仔  作者:
31/80

31 老人のため息の軌跡

 彼らは表に現れることを恐れている。彼らが、国家という自分よりも大きな世の中から監視され、世の中から抹殺されることを知っているためである。

 一方、政府のほうはクレア・エバとの国交が正常化するよりも前に彼らを消し去りたいと思っている。クレア・エバにクレッフェの試験部隊の人間が入って、声高にその戦争の歴史を語られることを恐れているのだ。

 軍縮条約が結ばれて国交正常化に向かおうというこの時期が、政府のクレッフェ撲滅に拍車をかけているに違いない。クレッフェにとって、今この時期はきわめて生きにくい世界になっている。

 これでもまだ隠れている人間が本当にいるのか?

 彼らを見つけて、自分はどうする?

 ザゼルの悲劇を歴史上に明らかにするのか?

 それでこの国をおとしめる必要性があるのか?

 それにしてはここは中央からあまりにも遠い。

 数々の疑問符が浮かんで、タナカは微熱が出そうだった。

 ここ一週間ほどの慌ただしい中央の動きと、それにつれて増える地方の雑用に疲れていた。

 心なしか普段に増して足が痛むような気がして、彼は電話口で薬を頼んだ。これが睡眠薬でもあれば、仕事を放棄して心地よい眠りに浸るんだが。

 彼はため息をついて窓の外を見やった。

 遠く宇宙センターから昇っていく定期便の水蒸気が、尾を引くように空を仕切って天空へと去って行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ