27 楽園監視
リンはぶんぶんと首を振った。
「違うって。ユーリ・エバの持っている情報屋じゃなくて、どこか他のところからユーリ・エバに入りこんだ情報屋だよ。どこかがユーリ・エバを監視しているんだ。この世界に現存する最後の平和主義者たちを、誰かが監視してる」
「ユーリ・エバで何かが起こっているってこと?」
「仲間内では、戦争が始まるって噂」
「ユーリ・エバで?」
「もちろん、このタイミングでドニやクレア・エバが参加するわけないから、つまりは内紛だね。あの星で何か異変が起こってる。だから、最近宇宙センターの動きが慌ただしくなってるって」
「楽園の内紛……」
心なしか落ち込んだ声で空夜は言った。
彼にしてみれば、物心ついた時から戦場を中心に活動していたわけで、この世に平和を恒久的に約束している土地があると言うこと事態が珍事であった。そこが、今は戦争の危機にあるという。そのことのほうが嘘臭くなくて、心地いい真実の響きがある。
空夜はため息をついて立ち上がった。
マスターに支払いを頼む。昨日秋比古とリンが飲んだ分も払ったので、かなりかさんだが、仕方ない。
まだまだカウンターの隅に居座るつもりのリンは見あげるように空夜を見つめた。
「カッセルのことは任せといてよ。あんたは安心してがしがし稼ぎな」
「……頼りにしてるよ」
ひどく複雑な思いで呟いて、空夜は酒場をあとにした。
入口のところにたむろしている物ごいの男につり銭の硬化を投げやると、それから仕事に向かうため繁華街の奥に向かって歩きだした。




