26 リンへの依頼
「そこを無理言って、あたって欲しい。軍関係は僕たちには近付けないんだ。カッセル参謀の最近の動向だけでいい。東方司令部にいるんだろう? 近いからすぐにでも情報を得ることができるんじゃないのか?」
「三日、それでできるよ。東方司令部なんてフリーパスだもん。あそこは左遷専用の流刑地だから、中央の重要な情報は入ってこないの。だから情報に関してセキュリティーが甘いんだ。実際、ユーリ・エバのスパイとして情報を流している人間も何人か知っている」
「分かった、分かった。頼むよ」
「了解。お礼はここの払いとは別でもらうからね」
自分の財布の中身を思って空夜は顔をしかめた。加えて今は秋比古がいる。彼をもてなすために必要な経費はかさんでいる。秋比古がいなくなったら食いっぱぐれることになるかも知れない。
空夜は彼女に見えないところでため息をついた。
「それとさぁ、」
すでに完全に気分が良くなっているリンが、心地よさそうに空夜にもたれかかって耳元で言った。
空夜は思わず身を引いた。酒臭い息が頬にかかる。
「ユーリ・エバのことだけど、あそこで最近、クレッフェに似た仕事をしている人間が現れだしたって話があるよ。最後の中立地帯もとうとう戦争に汚染されたってね」
「そりゃ、ユーリ・エバだって情報の運び屋くらい雇っているだろ」
空夜はユーリ・エバの自治政府の下で働いている桐珂のことを思った。




