25 いらない迎え
「あんたと秋比古ももうすぐお迎えが来るってわけ?」
空夜は眉をしかめて肩をすくめた。
「かもね」
「じゃぁ、カッセルよ」
「カッセル参謀?」
「あのおやじ、自分が発案して設立した最初のクレッフェの部隊を歴史の表舞台に出すことができなかったことで、かなり政府を恨んでたから。国家の体裁のために英雄になり損ねたのよ。クーデターでもしようとしてるんじゃないの?」
「クーデターに何か意味があるか?」
「何の意味もない。でも、何か意味のあることしか人間がやらないなら、戦争なんてこと初めからやるわけないじゃん。馬鹿な大衆が考えることなしに煽動されて自分の意見に妙なプライド持ってつけあがるから、戦争なんてことになるんじゃないの」
「辛いな」
「一般論でしょ?」
彼女はすました顔でビールを空けた。払いは空夜もちだと知っていて、二杯目を注文する。
「馬鹿は嫌いなの」
「……とにかく、カッセル参謀を当たってみてくれないか?」
「言ったでしょ。馬鹿は嫌いなんだって」
「……僕?」
「カッセル。奴なら本当にクレッフェ復活ももくろんでいるかもよ。軍事力じゃかなわないから、情報力でユーリ・エバくらい侵略しようとしてるんじゃない? もちろんあんた達みたいなのを使ってさ」
機嫌が良くなってきて、リンは大きな声で笑った。轟音ともいえるほどの音楽がかかっているこの店の中でも、二三人がふり返るほどの大きさだった。
空夜はそれをなだめてから、彼女のコップにビールを継ぎ足した。




