22 花弁 微笑む
「何だかこの世界で生きていくのが嫌になるな」
「誰だって皆、そう思ってるさ。……ところで桐珂、それなら、中央軍の動行は知っている? カッセル参謀の行動とか」
空夜が少しの期待を込めた質問をすると、彼女は寸分おかずに首を振った。
「私もすべてを知っているわけじゃないけど……今のところ、軍が活発に動いているような感じはないわ。現在のカッセル次官についてはほとんど知らないと言ってもいい。でも、」
彼女は今度は空夜のほうに顔を向けた。
「探る必要があるのなら、なんとかならないこともないわ。中央政府には戦争中からのいくつものつてがあるから」
「僕たちでは政府に近付くこともできない。頼めるかな」
桐珂ははっきりとうなづいた。
感嘆して、秋比古が大きな声を出した。
「桐珂さんは現役なんだな。目が見えないのに」
「目が見えないからよ。ほとんどのひとが私に同情してくれて、対幼児並みの親切さで接してくれるの。だからこちらも無邪気にして、重要人物に近付くことができるのよ。これは私の武器」
「それは桐珂さんが美人だからだ」
秋比古は笑った。
ありがとう、桐珂が言った。
「クレッフェの試験部隊の動きについてつかめるようにするわ。何かあったら空也に言う」
「気をつけて。あまり無理はしないで」
桐珂はうなづいた。




