21 日向の花
彼女は微笑んで言った。
「カッセル参謀なら、今、東方司令部にいるわ。彼は事務次官まで降格になったけれど、まだ軍で生きている。でも、軍人を召集できるような権限はないはずよ」
秋比古はあっけにとられたような顔つきで彼女を見た。
空夜のほうは口に手を当てて桐珂の話を検討した。
「ここから近いな。だからリヴンのクレハスを見つけることができたんだ。東方司令部ならリヴンに近いから」
「……ちょっと待って。桐珂さんって……?」
秋比古が混乱した顔つきで言った。深窓の楚々たる美女の桐珂が軍の話をすることにまだ慣れていない様子だった。
桐珂は秋比古のほうをふり返った。視線は合わせることはなかったが、彼のいる場所について正確に分かっているように向き直っている。
「私は政府の情報屋として働いているから」
彼女はそう言って、秋比古にパンを勧めた。
「桐珂は、戦争が終わっても政府に雇われて情報屋として働いているんだ。もっとも、中央政府の下でじゃない。ユーリ・エバの自治政府だけど」
「クレッフェを?」
「正規部隊は世に疎まれているわけじゃない。むしろエリートとして優遇されているくらいだ。先の戦争で中立だったユーリ・エバとしては、ドニとクレア・エバの両方の優秀な人材を集めて、双方を監視しようと言うのは当然のことだよ」
「クレッフェがエリート扱いで優遇、か」
あからさま落胆した顔つきで秋比古は眉をひそめた。




