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最強の女戦士ここにあり  作者: 田仲真尋
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グリッジブルー

大会を終え、一週間が経とうとしています。

そろそろ本格的な夏を迎えたようで、日中の外は蒸し暑くてたまりません。

ここブレイズは、レト大陸よりも暑さが厳しくなるのが若干早いように感じられます。


僕らは家で待機中です。

やはり、カモミール姫といえど、なかなかレジェスを探し出せないでいるようですね。

まあ、僕は一向に構いませんがね。この石造りの涼しい家で夏が過ぎるのを気長に待ちましょう。


それはそうと、あの大会のその後ですが、聞いた話しによると僕の棄権(逃亡)により、僕に惨敗したアレックスさんが決勝へと駒を進められ、見事に優勝を飾ったらしいです。

単純に考えると、僕があのまま決勝戦を戦っていたら優勝していたこと間違いなしということになりますね。


結局、僕らは揃いも揃って優勝にありつけませんでした。

ちなみに魔法アートコンテストに参加したシエルさんは、なんと予選落ちだったそうです。


何を出品したのか?と訊ねたところ、彼女は風の魔法を用いて巨大な芋虫を創作したと答えました。

僕らも試しに見せてもらいましたが、何も見えませんでした。

本人いわく、これは凡人には見えないそうです。

きっと審査員たちは皆、凡人だったのでしょうね。


こうして僕たちは今日の、だらだらとした生活を送る日常に至っているのです。



「今日は何しようかな。」


そんな風に考えていた、ある昼下がりの事でした。


「ピート、お客さんよ。」


サーシャ様が何だか、にやけ顔で僕に近寄ってきました。

お客さん?

はて、僕には心当たりがありません。どなたでしょうか?


「いつの間に、あんな可愛い子と知り合いになったのよ。まったく、ちゃっかりしてるわね。」


可愛い子!?

女の子の来訪でしょうか。

僕は喜び勇み足で玄関へと走りました。


「……どうも。急に押しかけて申し訳ない。」


何と、そこに立っていたのはアレックスでは、ありませんか。

どうして、ここが分かったのでしょう。

いや、その前に僕に何の用があるのでしょうか?

僕は警戒感を顕にして訊ねます。


「な、何の用ですか?」


「い、いや……用というか、貴方ともう一度きちんと話がしたくて。参りました。」


僕は全身に寒気を感じました。

確かにアレックスさんは美しい。

最初は男だろうと構わないとか言っていましたが、あれはあくまで冗談です。

さすがに僕は男性は受け付けません。


「ピート、中に入ってもらいなよ。」


サーシャ様、余計なことを。


「あっ!貴女はあの時の!」


今度はローラスが、しゃしゃり出てきました。


結局、アレックスさんを家へ招き入れる、はめになってしまいました。


「貴女、確かピートにプロポーズしたのよね?」


サーシャ様に要らぬことを吹き込んだのは、ローラスです。


「は、はい。あれは自分でも驚いてしまいました。――ですが、その気持ちは変わりません。」


いえ、是非とも心変わりしてください。

僕は心の中で、そう願いました。


「実は、今日はお願いがあって参りました。」


僕には嫌な予感しかありません。

さっきからサーシャ様が悪どい顔で、にやにやしています。

何か企んでいるとしか思えません。

しかも悪いことに、今は全員が暇をもて余してしまっています。

こういう、ハプニングを求めているのです。


「私を、皆さんのグループに入れてもらえませんか。」


僕は言葉を失いました。

そんな願いを聞くわけにはいきません。

僕たちは目的があって、ここに滞在しているのです。

そんな仲良しグループに入れてくれ、というのとは次元が違いますよ。


「構わないわよ。」


サーシャ様!?


「本当に?」


「本当よ。今は少しでも戦力になる人材を探していたのよ。確か、貴女……。」


「アレックスです。」


「そうそう、アレックスは強いのよね。ねえ、ローラス。」


「ああ。俺は負けちゃったからな。彼女なら俺は意義なしだ。」


ローラス。君が弱いだけだ。

君に発言権はないですよ。


「シエルは、どう思う?」


「賛成、賛成!アレックスちゃん可愛いから、いいじゃん。」


シエルさん。可愛いからって言っても彼女……男なんですよ。


だけど、この展開はまずいです。

打開策はないのか。僕は頭をフル回転させました。

そして一つの光明を見つけました。


「あの、アレックスさん。確かあなたは、グリッジブルーという組織に属しているとお聞きしましたが、そちらはどうするんですか?僕たちは、近いうちにレト大陸へ戻ることになりますよ。」


「私は……グリッジブルーを抜けた……ただ了承は貰えてない。」


ほら、やはり簡単には辞めれないのですよ。

これは、今すぐグリッジブルーへ戻るべきですね。


「アレックス。貴女は、その組織を辞めたいの?」


サーシャ様、もうこれ以上は止めてください。


「私は辞めたい。もし、皆さんに拒否されてもグリッジブルーへ戻る気はありません。」


アレックスさんの話しでは、グリッジブルーという傭兵軍団は、グリフォンブルーという国の専属傭兵をして生計を立てている集団だそうです。

グリフォンブルーという国は小国ではありますが、超が付くほどの武力国家で、そこからの仕事ならば剣の修行に役立つのではないかと、参加したのだそうです。

ですが実際のところ、このグリッジブルーの団長が持ってくる仕事というのは、剣の修行にすらならない、汚い案件ばかりだそうです。まあ、暗殺とか他国への工作とかでしょうかね。

下請けなんてそんなものですよ。


「ここに居ればいいわ。」


サーシャ様が、そう言い出したら仕方ありません。

僕は従者ですからね。

しかし、アレックスさんとの婚姻は絶対にしません。

そう固く心に誓いました。


「ありがとうございます。でも……一つだけ不安があります。」


「何?」


「私の居場所がグリッジブルーに知られれば、連れ戻しに来るかもしれません。ですから、今から何とか脱退できるように団長を説得しに行って来ます。」


確かに、そうなれば迷惑以外のなにものでもありません。

きちんと過去を精算してから、仲間になるのが筋というものです。

ですが――。


「でも、その団長といかいう輩はろくでもない人なのでしょう。でしたら、わざわざ出向く必要はありませんよ。」


僕はいったい何を言い出したのでしょう。

自分でも驚きました。


「よく言った、ピート。見直したよ。」


い、いえ違うんです。

僕は心にもないことを口に出してしまっただけなのです。


「アレックス。そいつらが来たら私たちか追い払ってあげるわ。」


「で、でもそれじゃあ迷惑に――。」


そんな、やり取りをしている時でした。


「おい、アレックス!出てこい!ここに居ることは分かっているんだ!」




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