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最強の女戦士ここにあり  作者: 田仲真尋
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思い出と苦難

僕たちが次に向かったのは、リグレットという小さな町でした。

ここは、僕にとって非常に思い出深い土地です。


「サーシャ様、なんか懐かしいですね。」


「そうね。確かあっちの方だったわよね。」


この町外れで僕とサーシャ様は運命的な出会いをしたんです。

サーシャ様にとっては、どうか知りませんが、僕には何だか故郷に帰って来たような、そんな気持ちになりました。


この町から少し北の方に行くと漁村があります。そこから舟でシグレ島までは、ほんの僅かで着きます。

とりあえず、お日様もまだ高いので、このリグレットの町はスルーして先へと進みます。


しかし、町で少し気がかりな噂話しを耳にしました。その噂というのは、なんでも最近この辺りに『ブラックエッジ』が出没するとい

う話しです。

未だに僕の偽物が出るとは、僕もやるものですね。

まあ、どうせどこかの野党が騙っているだけですから、関わらないに越したことはありません。


リグレットを通り過ぎて、しばらく歩いていると、これまで機嫌の良かった天候が突然に不機嫌になりだしました。


「曇ってきましたね。こりゃあ一雨きちゃうかもしれませんね。」


天候が悪化していくのに混じって、何やら不穏な空気を感じました。

それは悪意に満ちた殺気のようです。


「サーシャ様。」


「分かってる。」


僕らは進む歩を止めて、ゆっくり振り返りました。

そこには、三人の黒いフードを被った者たちがおりました。


「何か、ご用でも?」


僕は慎重に、ゆっくりと訊ねました。


「クックック。久しぶりだね、ピート――いや、ブラックエッジ。」


その中の一番背が低い男は、そう言ってマントを脱ぎ捨てました。

その顔に見覚えがありました。


「グリ坊でしたか。」


「グ、グリ坊と呼ぶな!」


そのやりとりに後ろの二人も肩を小さく上下に揺らし笑っているようでした。

彼の名はグリエル。僕が最初にお仕えした主人であり、僕の人生で二人目の弟子でした。

小生意気な小僧でしたが剣の才能は確かなものでした。


「知り合いかピート?」


「ええ、彼はグリ坊です。」


「だからグリ坊と呼ぶな。」


それにしても、先程からグリ坊が背負っている剣が気になります。


「その剣は、やはり君が持っていたのですね。」


「ああ、あんたの黒鋼だ。」



ある夜、僕の剣はグリ坊と共に姿を消していました。どうも僕は弟子に逃げられる運命にあるようです。


「それで今日は何か用があるのかい?」


偶然に出会ったということは、まず無いでしょう。


「当然、大有りだ。あんたを倒して、俺は本物のブラックエッジになる。」


いえ、本物は僕ですから。本物になるとかちょっと意味不明です。グリ坊は昔から、そういった中二病的なところがありましたが、まだ治っていないようですね。

これはお仕置きが必要でしょう。


「なるほど。それで、お友達を連れて僕を倒しに来た、という訳ですか。」


「勘違いするな。この二人は別件だ。」


グリ坊がそう言うと、後ろの二人が前へ進み出てきました。


「私達が用があるのは、そちらのサーシャさんです。」


「私?何かしら、お手合わせなら大歓迎よ。」


その二人は顔を見合わせて、マントを脱ぎ捨てました。

すると、その出で立ちに見覚えがあります。

白銅の胸当て、剣の太陽と星の刻印。

キリエスの裏の実行部隊、ザラス。

以前にサーシャ様を襲った時の目的同様、今回も狙いはサーシャ様の瞳なのでしょう。


「面白い。そこの二人は私が相手してあげるわ。」


「大丈夫ですか?以前は、こてんぱんにやられて――。」


バシッ!


もちろん頭を強く叩かれました。全く戦いの前に脳震盪でも起こしたらどうするんですか、と言いたいです。


「私は大丈夫。それより、あんたこそ大丈夫なの?」


僕は、にやりとして答えました。


「ええ、全然余裕ですよ。」と。

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