正真正銘の黒い刃
僕はサーシャ様から頂いたエッグブレイドを抜き、かつての主人であり弟子である、グリ坊と対峙しました。
「何その剣。そんなんでこいつに勝てると思っちゃってるの。」
グリ坊は、黒鋼を手に構えました。久しぶりに見た、かつての愛刀は美しく黒い妖しい輝きを放っていました。
きちんと手入れは怠らなかったみたいですね。僕は少し嬉しくなりました。
「いくよ!」
「こい!」
僕らが戦いの火蓋を切って落とした瞬間、サーシャ様たちの戦いもスタートしました。
「おい、どちらがやる?」
「お前に譲ってもいいぜ、面倒くせえし。」
「だったら、あの女に決めさせよう。」
「おっ、名案。」
サーシャ様はザラスの二人のやりとりを苛立った様子で聞いていました。
そして、「二人まとめて相手してやるわ。」と、吐き捨てました。
すると、ザラスの二人は、
「上等!」
「後悔するなよ!」と、勢いよくサーシャ様へと斬りかかりました。
バキン!
鈍い金属音が響きます。
最初の一撃で互いの剣が激しくぶつかり合いました。
「ぐっ!」
そして、僕はグリ坊の成長に驚きを隠せませんでした。
それはパワーです。僕の手首は最初の一撃でグリ坊のパワーに押され痛めてしまいました。
ですが、僕は元々非力だったため、そういったことには慣れっ子です。むしろ僕の強みはスピードにある。
「超音速!」
ほぼノーモーションからのトップスピードに達するこの攻撃で決まりです。
しかし、グリ坊は不敵な笑みを浮かべ、そして、
「超音速!」と、僕と同じ……いや、もっと速い剣撃を繰り出してきました。
呆気なく僕の攻撃は弾かれてしまいました。
さらに、追撃してくるグリ坊。
僕は防戦一方です。
「そんなものか、ブラックエッジ!」
「くっ!」
攻撃の嵐は止まることを知りません。
「これで終わりだ。黒い稲妻!」
僕は完全に無防備状態でした。腕が痺れてまともに動きません。
まったく、どれだけ強くなったのですか、グリ坊は。
僕は諦めにも似た感情を抱きました。
しかし、その時でした。
「燃え盛る剣!」
サーシャ様の魔法剣が発動しました。以前のサーシャ様では出せなかった激しい炎の光りが辺りを照らしました。
その光りに一瞬気をとられたグリ坊の必殺技に少しの隙ができました。
僕は見逃しません。
何とか腕を動かし、グリ坊の斬撃を防ぎました。
ふと見るとサーシャ様から頂いたエッグソードに深刻なヒビが入っていました。
僕は、この時サーシャ様に殺されると膝が震えそうでしたよ。
「ちっ!気が散った!次は仕留める!」
「グリ坊。強くなりましたね。ですが、こっちの戦いに集中してください。君は集中力が長続きしない悪い癖がありますからね。」
「殺す!黒い稲妻!」
今の僕では、まともに戦ってもグリ坊に勝てないでしょう。彼は僕と離れてからも修行を積んでいた筈です。一方の僕は剣を捨て稽古を怠ってきました。当然の結果です。
ですが、そんな僕でも以前とは違うものがあります。そして、それはグリ坊も知らないことです。
「うおぉぉぉお!」
鬼の形相で切り込んでくるグリ坊の顔が怖いです。
「もらった!」
僕はグリ坊に対し剣を引き、代わりに左手をグリ坊に向けて広げました。
「ファイア!」
虚をつかれたグリ坊の顔面に僕のファイアがクリーンヒットしました。
「ぐわぁ!」
完全に前のめりに突っ込んで来ていたグリ坊の体制が崩れました。
「隼!」
ほぼ無防備のグリ坊に僕の剣が隼の鋭い嘴の様に突き刺さりました。それと同時にエッグブレイドは、パキン!と、折れてしまいました。
「ぐっ、汚いぞ、ピート。」
「僕はもう剣士では、ありませんからね。それに汚いのは昔からでしょう。」
その言葉にグリ坊は薄く笑みを浮かべました。
「こ、これはあんたに返すよ。」
グリ坊は倒れたまま、黒鋼を僕に渡しました。
「いいんですか?」
「ああ。こんな痛い思いするくらいなら、俺はもう剣士やめるよ。」
なんという甘ったれた発言でしょう――でも、グリ坊らしいですよ。
さて、こちらは何とか片付きましたが、問題は、ご主人様の方です。
因縁のあるザラスに果たして勝つことができるのでしょうか。
そろそろ時間がなくなって参りましたし、ちょっと僕も疲れてしまったので、続きはまた次回。
そんなことを思っているのがばれたのか、サーシャ様は僕の方を一瞬、睨みつけました。
本当に勘の鋭い方ですね。
ふと、僕の頭に何やらポツリと落ちてきました。
「あっ、雨だ。」




