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最強の女戦士ここにあり  作者: 田仲真尋
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accept pupils~上編~

あれは確か六年程前だったと記憶しています。

夏の憂鬱な湿度の高い暑さの中、僕は何故か黒いマントを羽織っていました。まあ若さ故の過ちですね。

当時の僕は、こう呼ばれていました「黒いブラックエッジ」と。

自分で言うのもなんですが、この頃の僕はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いがありました。自分が最強の剣士だと疑う余地など全くありませんでした。

事実、連日の真剣勝負に僕は連戦連勝でしたからね。

お相手も、その辺の雑魚ではありませんよ。有名な剣士や魔法使い、槍使いに弓矢の達人、魔法剣士、拳法家、占い師に漁師のおっさん。どんな相手でも力でねじ伏せてきました。


そんな僕の名前が世間に浸透し、誰もが黒い刃の名前に恐怖感を抱き始めた、そんな折でした。


「さて、次はどうしようかな。この辺りだともう互角に戦える人なんていないのかな。ならば思いきって海を渡ってギアン大陸まで足を伸ばしてみようかな。」


暑い中、黒光りした刃の剣と厚手のマントを羽織って、ブツブツと一人言を言いながら歩く僕に、近づいてくる者なんていませんでした。

僕は、ただ強い者と真剣勝負をしたかっただけなんですよ。

ある意味、この頃の僕は孤独でした。戦う相手にも恵まれませんでしたから。

たまに勝負を挑んでくるのは金品目当ての盗賊くらいです。

もちろん相手にもなりませんでした。僕は、ただ人を斬りたいだけの奇人ではありません。

きちんと礼に始まり礼で終わるような崇高な戦いを求めているだけなのです。

しかし、そんな相手とは、なかなか巡りあえません。

そのフラストレーションが僕を恐ろしい人斬りに変えたのかもしれません。

当時の僕は、街のちょっとした喧嘩でも剣を抜き、相手を斬り殺してしまうようになっていました。

その傍若無人ぶりに、これまで仲良くしていた友も僕との距離をおくようになっていました。まさしく自業自得です。


僕は放浪の旅に出ました。そして、くる日もくる日も誰かを斬りまくりました。

しかし満たされません。それどころか苛立ちだけが僕を支配していきました。


そんな、ある日でした。

僕の行く手を遮るかのように道の真ん中に少年が一人立ちつくしていました。

もちろん僕は彼を避けて行くことなど致しません。

きっと少年が避けるだろうと思っていました。

しかし僕が彼の目前に迫っても、その少年は微動だにしませんでした。それどころか、僕の目をじっと見つめていました。

僕は最初、腹が立ちましたが次第に彼の純真無垢な瞳に吸い込まれてしまいそうな錯覚に陥りました。


「そこをどきなさい。」


僕は、なるべく穏やかな口調で言いました。

しかし彼は動きません。


「殺されたいのですか。」


僕は少年とて容赦はしません。大人げないと思いたいのなら、どうぞ思ってください。だけど僕にも意地があります。

そして、こう決心しました。

絶対に少年が道を譲るまで僕は彼を避けては行かない、と。


「さあ、おどきなさい。」


するとどうでしょう、さっきまで少しも動こうとしなかった少年が簡単に道を譲ったではありませんか。

少々、拍子抜けな感は否めませんが、まあ当然の結果でしょう。

しかし、だったら最初から譲ればよいものを、何故彼は譲らなかったのでしょうか。

そんなことを思いながら僕は歩き始めました。

その時でした。


「――!」


僕の背後から恐ろしいまでの殺気を感じました。

僕は、すかさず剣を抜き、振り返りました、

すると、そこには先程の少年が僕の後をついてきているでは、ありませんか。

あの殺気は、この少年が発したものなのでしょうか?

僕の頭は少々混乱気味です。


「僕に何か用でも?」


「……。」


うーん、なかなか面倒な展開になってきてしまいました。


「それは!?」


この時、僕は初めて気がつきました。

少年の腰に、ぶら下がっているものにです。

それは剣でした。短剣より少し長めの剣です。

少年用なのでしょうか?

何にせよ殺傷能力はありそうです。

だとすれば、やはりさっきの殺気は少年のものなのかもしれません。

僕に大事な人でも殺されたのでしょうか?

あの殺気には、そんな憎しみが込められていたのかもしれませんね。


「僕を殺したいの?」


僕はストレートな質問をぶつけてみました。

すると、これまで何の反応も示さなかった少年が初めて応えました。少年は、首をブンブンと、ちぎれんばかりに横に振りました。

そして、落ちていた木の枝を拾うと、地面に何かを書き始めた。


「――弟子にしてください……えっ!」


僕は心底驚きました。

だって、これまで僕にそんな事を言ってきた人は一人も居なかったのですから、驚いて当然です。

その突拍子もない願いもさることながら、もう一つ気になったことがありました。


「君、口がきけないの?」


少年は、悲しそうに首を縦に一度だけ振りました。


「そうか……じゃあ名前は?」


僕の問いかけに少年は、また地面に文字を書き始めました。

それは、とても短い言葉でした。


「――ない。」


僕は何故か、その少年のことがとても気になり始めました。

しかし、僕だってまだ修業の身です。弟子をとるなんて考えてもいません。

どうしたものか。僕が頭を悩ませていると、複数の殺気を感じました。

それは非常に弱い殺気です。


「おう兄ちゃん。面白い剣を持ってんな。それと金品、全部置いていきな。命だけは残しといてやるから。」


ああ、こんな時にまたしても盗賊の連中の登場です。

どうやら僕は野党を引き寄せる力が備わっているようです。

そんな力、全然要らないんですけどね。

まあ、とりあえず盗賊を片付けますか。

そう、思い剣に手をかけた時でした。

なんと!少年が剣を抜き、僕の前に飛び出したでは、ありませんか。


「なんだ?このガキ、生意気にも剣なんか持って――ぐわ!」


少年は躊躇いもなく盗賊の一人を斬り捨てました。


「て、てめえ!」


残りの盗賊、四人程が少年目掛けて一斉に襲いかかりました。

しかし、少年は落ち着き敵の太刀筋を見極めながら一人、また一人と斬りました。

そして気がつけば盗賊たちは全滅していました。

僕の胸の中で何かが弾けた様な気がしました。

それは見事な太刀さばきでした。

恐らく幼い頃から剣術を習っていたのでしょう。

それでも、人を躊躇いもなく斬ってしまうメンタルと恐ろしいまでの剣の才能に僕は見とれてしまいました。

この子は強くなる。僕には、それが鮮明に見えました。

そして、決めました。彼を弟子にすることを。

僕が彼に、その旨を伝えると、照れるように、そして嬉しそうに笑顔を見せました。

こうして見ると、普通の何処にでもいそうな少年ですね。

喋れないのは気の毒ですが、僕にとっては逆にそれが有り難くもありました。

基本、子供は苦手なので話さなくてもよいなら気は楽です。

しかし、困った事もありますね。名前です。

やはり名前は、あった方がいい。

ここは、僕のハイセンスな命名力を発揮する時でしょう。


「君は今日から『ペンカタハカタドラキューリアバンブツリヨウカヤナカラシモツナノ』だ。」


すると、彼は目を輝かせて喜びました。

そうでしょうそうでしょう。僕のセンスに喜びを隠せないのは仕方ありません。

あっ!でも名前が長すぎるので、僕はこれからも彼のことは彼とか少年とかしか呼びませんから、あしからず。







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