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第24話 顛末と集落入り 商品はいつ見られるんでしょうか

 パルモル商会は関所を発つ準備のために宿へ向かう。

 パルモルはカスターの《迷いの森》攻略情報(パルモルの添削入り)をガリングに渡しに役舎(えきしゃ)へ。

 カスターは手伝いにかこつけてパルモル商会の商品を覗きに行く。

 コンラートはマロウの指示に従い労働力となり、シーラとセリアの手伝いもこなす。

 《迷いの森》の範囲外になったのでティダも元気だ。まだ食事をしているところを見ていないが。


「カスターさん。水汲みに行きますよ」

「まだ見始めたばっかなんですけど!」

「一個に時間をかけすぎなのでは?」


 はい、と桶を渡される。コンラートは二個、カスターは一個。

 さっさと歩きだしてしまうコンラートを「なんだよもう」と追いかける。

 そんな感じで支度を終えて馬車共々広場へ行くと、見送りかなにかかガリングが出て来ていた。

 パルモルはにこにこである。


  報酬が決まったのかな。


 合流するとパルモルが仕切った。


「皆さん、準備ありがとうございます! 《迷いの森》拡大の原因特定と解決について! ガリングさんから報酬の発表があります」

「はい。森の範囲が元に戻ったことを記念して野営地にて周知を目的とした催しの企画が出ました。実現の暁にはパルモル商会を解決に尽力した団体としてお招きします。商(あきな)いは関所を潰さない程度を条件にご自由にどうぞ。

 それともうひとつ。関所から仕入れをお願いする際のお店にパルモル商会を指定します。定期便は面白みがないと断られたので」

「おお」


 コンラートが笑顔で音を立てないほど軽く拍手をする。なんというかなんというかだ。コンラートってこういうちょっと外れた話好きだよな。


「良いんではないですか」


 マロウが言うとパルモルは両手を上げた。

 そのまま降ろしてガリングの手を取り握手する。


「では、今後ともお付き合いのほど、よろしくお願いいたします!」


 いざ出発。

 パルモル商会は関所を出た。


  ***


 《迷いの森》を行く。

 森の効果は変わらず、人々を体調不良にし迷わせるし虫も健在だ。

 カスターは荷台を締め切った中に玉手弾を撃った。そこにパルモルとマロウとシーラが入る。

 セリアは魔力操作が上達して魔力を引っ込められるようになっていたので御者を務め、二号車は一号車に連結された。カスターたちが先頭を歩いて先導する。


「この景色見覚えありません?」

「ですよねー」


 迷っていた。

 ヴィータも動く気配がない。


「結晶使ってみるかー……」


 出発前に砕いておいた結晶をひと欠片ヴィータにあげてみる。

 結晶を取り込んだヴィータはその流れでカスターにもすりすりと寄ってきた。たまらん。


「えへへ」


 頬が緩む。


「効果ありました?」


 コンラートが水を差してきた。

 カスターはしぶしぶヴィータを降ろす。ほよんほよんと威厳たっぷりに置かれた場所から動かない。


「この辺にはもう結晶なさそうですね」

「そうですか」

「え、納得しちゃった? ちょっとねぇおかしくないですか? 結晶に引き寄せられていったらさらに迷いそうに思うんですけど!」


 セリアが苛ついている。

 カスターも確かにと納得しかけた。

 しかし、


「人の魔力で成長する結晶ですから、人が多く通るところに現れるでしょう?」


 コンラートの考察が上手(うわて)だった。

 なるほどー、とふたりで感心する。

 コンラートは苦笑した。


「ですが、昨日取りすぎたようですね。どうしましょうか」

「考えてください!」


 セリアがカスターたちに問題解決を押し付ける。

 カスターはお手上げのポーズをした。

 コンラートが笑う。

 それから肩のティダを見て言う。


「ティダ。なにかない?」


 ティダはぺちーんとコンラートを叩くとその手をそのままコンラートの首に突き刺した。


「あたた」


 コンラートの反応はそれだけだ。


「え、あれ大丈夫なやつですか?」

「さあ」


 セリアが御者台から身を屈(かが)めてカスターに顔を近づける。

 二人はティダとコンラートを固唾(かたず)をのんで見守った。

 ティダの身体にコンラートの血液が漂うのが見える。

 地面に降り立ったティダは弾力充分つやつやだ。

 コンラートがポーチから布を出して傷を押さえた。

 ティダに目を戻すとヴィータにぽよんとぶつかりふたりで離れた場所に移動する。すぐそこで止まったので追いかけないで眺めた。

 少ししてヴィータだけ戻ってくる。カスターの足元から頭の上まで這って登ると翡翠の玉を掲げた。メンダーから貰ったおまけだ。

 ぱやぁ、と淡く光る。

 なんとカスターの体調がそこはかとなく悪くなった。


「俺の魔力使ってね?」


 ヴィータが頭の上でぷるるん、と揺れる。そうなんだな。

 しかしこれでどうなるのかはさっぱりだ。

 カスターが上目で頭上を見ているとティダがコンラートの上に戻ってきた。

 ビシッと進行方向を指してコンラートの後頭部を小突く。縦横無尽(じゅうおうむじん)の身体である。


「あっち? 本当に?」


 コンラートが疑いの言葉を口にすると小突く力が強くなる。いいから行けと。

 コンラートは小突かれた勢いで二歩行くとその流れで歩き出した。

 カスターたちもついて行く。

 前を歩くコンラートとティダを見るとその力関係がわかってくる。


  コンラートよりティダのほうが上だ。


 カスターは鞄から薬草飴を出した。

 ひとつを口に入れてもうひとつをセリアに差し出す。


「薬草飴です」

「え、ありがとうございます! 美味しく出来ました?」

「まずいです」

「えー……」

「薬草の加工は難しいんですよ」

「チャレンジ精神に拍手!」


 本当に拍手してくれた。次はもっと美味く作りたい。

 セリアが飴を口に入れて「うわ」と顔を顰(しか)めた。

 遠くの樹に鮮やかなオレンジと黄色がぶら下がっているのが見える。

 ティダの指し示す方角はオレンジと黄色のなにかの方角と同じだった。

 近くまで行くとそれは長い布だ。

 迷っているときは気づかなかったのに一度目に入ると離れない。

 布を過ぎてさらに少し歩く。

 あるところから石が膝の高さまで積み上げられていて頂点だけこれもオレンジに塗ってあった。


「集落の人の道しるべなのかもしれませんね」


 コンラートが嬉しそうに言う。

 このパーティーの中でコンラートが一番集落を楽しみにしていた。

 簡素な門が現れる。


  ***


 扉のない門を潜る。

 そこが森の境界だったらしい。景色が変わる。

 それに伴いヴィータが翡翠の玉を仕舞って茶葉を出した。カスターの目の前に揺れる毎にぶつかる距離でぶら下げる。


「はいはい」


 カスターは水筒に入れておいた水に蓄熱石と茶葉を加えて振った。

 再び開けるとほかほかと湯気を立てるお茶の完成だ。

 ヴィータに渡す。


「かけないでくれよ」


 カスターの頭に水筒の底がゴツンと当たった。

 門から先は緩やかな坂になっている。

 降る前にパルモルたちに声をかけて出て来てもらった。

 馬車の連結を解き、それぞれ動かす。

 時刻は昼下がり。

 森を抜けたので明るかった。


「体調不良に怯えなくていいなんてなんて素敵なんでしょう!」


 パルモルが手綱を握ったまま深呼吸をする。

 カスターたちは最後尾に移動して陣営はいつも通りだ。


 坂の上から下を見ると集落が見える。

 坂から集落までの斜面には何筋もの布が地面に沿って干されていた。


「いろんな色だなー」

「綺麗ですね」


 カスターの感想にコンラートもまた感想を述べる。

 坂の上から見渡せば、見える家々の屋根にも布が見える。木の屋根とそれを装飾する布の屋根、飾り物、いろいろだ。

 集落の先は景色が切れている。そしてその向こうに見えるのは、


「ここからは見えませんが、向こうの崖下に湖と滝があるはずですよ! この集落は崖の上にあるんです! 《迷いの森》のせいで孤立してるんですよね」


 パルモルがカスターたちに一枚の絵を寄越した。

 カスターとコンラートは護衛中には珍しく横並びで絵を覗き込む。

 空から見た集落とその周辺が書かれていた。


「空路サービスっぽいなー! ホバリングオプションとかあんのかな」

「カスターさんはあの鳥に乗った経験が? 乗り心地はどうでした?」

「こんなふうに絵を描くなんて考えもしませんでした。風凄くって、全部飛んで行きますよ」

「へぇ、これを描いた人はプロですね」

「っすね」


 そんな話をしながら集落まで降っていった。



『携帯用蓄熱石(SS)  [ 総合評価3.2]


 蓄熱石は一般的ですし、その便利さは書くまでもなくご存知かと思いますが、サイズはどうでしょうか。S~Mサイズがもっとも多いのでは?


 この記事ではSSサイズについて書きます。


 まず素晴らしいのは、水筒に入るサイズだということです。

 それだけならSサイズでいいでしょうが利点はそれだけではありません。わざわざ取り上げるだけの理由があります。それが、感度です。

 携帯用蓄熱石には専用の袋がついてくるかと思います。

 あの袋がなんのためにあるかといえば、誤作動したときのためです。断熱布ですから外に熱を出しません。誤って火傷するということにならないので採用されています。

 ですから蓄熱石使用の際は出し入れが必要ですよね。

 ところがSSサイズは感度が悪いので袋に入れていなくても大丈夫というわけです。

 ひと月ほどポケットに入れていましたが一度も誤作動はありませんでした。

 旅の途中のちょっとした休憩やなんなら歩きながらでも簡単に使えるというのはとても便利です。強めに刺激する必要がありますが。

 私は主にお茶を淹れるために使うので水と茶葉と蓄熱石を入れて振ってしまいます。雑ですが結構おいしく淹れられますよ。


 蓄熱石に使われる袋の断熱布ですが、魔法加工ではなく布そのものが断熱なので切り貼りしても効果が薄れません。中古品を扱うお店には袋単体での取引もできるとか。

 SSサイズ購入時にもついてきますし自分でカスタマイズするのにも使えますのでそういう点でもSSサイズ、お勧めします。


 注意点として、

 製造元が安全確保のために推奨しているのは袋を使うことです。

 私のような使い方をされる場合にはよく気を配り、少しでも異変があればすぐに対処いただくようにお願いいたします。』

 

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