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secondary damage~令嬢スイーツ刑事の真実探求は、私に沼る乙男上司といつだってビターdeスイートですのよ!~  作者: 琴音七色


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第3章 『私的な捜査』 3.食ハラ対象回避パーフェクト懐入り込み作戦

3 食ハラ対象回避パーフェクト懐入り込み作戦



 無事に聴取が始まり、愛美たちの聴取の様子をマジックミラー越しに皆で見守っていると、中下が作業をしながら慌てて何かを検索し始めた。

 挿絵(By みてみん)

 「明日香さぁ、愛美のお気に入りの洋菓子って……ヒルズステーションタワーのタルトが一番だったよな! いちごクリームタルト」


 「そうそう! あっ、御機嫌取り?」


 「おう」


 「いや、みのさん……今日は、もう苺は……」

挿絵(By みてみん)

 「はっっ、危ないっ。主任、ナイス・アシスト! マズい、俺としたことが……久々に動揺しているっ……落ち着けぇ~。なぁ、明日香! 苺じゃないやつでとびっきりのヤツ……なんか知ってるかっ?」

 

 「あぁ~、最近……なんか希少なカカオの焼き菓子にハマってるみたい。ブノワ・ニアンってお店で。虎ノ門ヒルズ店限定の何だったかなぁ? 上にマシュマロが乗ってたやつで。マヤ遺跡がどうとか言ってたような」


 「(カチャカチャカチャ……)これかっ、クッキー・オ・モルソー・ド・ショコラ・ノワール……。すまん、明日香……俺ちょっとログ突合で席外せないからさぁ、退勤間近のところ、大変恐縮だが緊急事態だ。至急応援願いたい、聴取終わる前までに」


 「出た出たw 出動要請。じゃぁ~私と~あとうちの可愛い僕ちゃんの分もいいよね!?」


 「おう、好きなの買ってくれい。悪いな! 助かる」


 「愛美は昼休憩で2個買ってるから最低4つで3,500円、私達親子も2個ずつでいいなら……ザっと見積もって5,200円」


 「なっっ、何だとっ? 愛美、そんなすげぇショコラ食ってんのか? 1個1,000円前後するのか……俺ならPico・2を2枚買うけどな」


 「なに、ピコって?」


 「Pico・2はな、こんなちっこいのにPC並みに高性能な大型チップ搭載でさ、最新のセキュリティ機能がギチギチに詰まってんだ。一昨年の秋に出たばかりで……」

挿絵(By みてみん)

 「あぁ~、よく分かんないけど、了解~!」

 

 小楠が打ち明けた話では、被疑者への売掛金は数十万円程であるのだが、リストの件を逆手にとって職場に脅すという卑劣な行為で脅され続けて利用されてきたということであった。払えなくなると“パパ活ビジネス”を勧められ、事に応じるしかない流れだった。パパ活の客の中には品の悪い者もいて、割に合わないと言ってきて肉体関係を要求してくる者もいたとのこと。そこまでの被害を受けずに済んではいたようだが、それが被疑者には都合が悪かったようで、彼女はおそらく被疑者がパパ活利用客から別の支払いも受けるような中抜きやキックバックのような仕組みがあったのでは? と思ったとのこと。そして小楠は、事件直後から被疑者が雲隠れをしたため、現状がどうなっているのかを把握したくて被疑者と関係の深い人物を探したとのこと。情報から亡くなった銀座の女子大生ホステスが性被害に遭った件で彼女を連れ出すために一役買わされたホストがとある店舗にいるとのことで出向き、彼女はそこでその彼との接点を持った。今現在行方をくらましているそのホストの彼の居場所を知っていることも判明した。そのホストも被疑者に脅されていて、たまたま接点を持ち、共感しあった2人が恋人関係にも発展していたようでお互いを恐怖の中で守り合っていたとのこと。いつどこで自分達がまた脅されて利用されるかと怯え、また小楠は自分の給与の範囲で頑張ってその彼をかくまっているらしく、お金も底をつく寸前でもあり、生きた心地もせず気が気でない毎日に耐えられなくもなっていたところに愛美が捜査の一環で職場に現れたという流れであった。そこで彼女は、今日が腹をくくる良い機会だと思って声を掛けたということであった。被疑者とのやり取りがスマホだけでなく自宅のPCにもあるということだった。

 聴取が無事に終わり、愛美たちが取調室から出てきた。モニター室では中下が供述のリアルタイム反訳と並行して、明日から捜査員全員が迷わず動けるよう“班別任務割当”や“重点捜査対象リスト”等まで作成していたため、捜査員の夜間勤務もスムーズに集約された。

 佳祐の指示で被疑者の接触や小楠の警護も兼ねて谷原と西野が彼女の自宅付近に張り込むこととなり、愛美は証拠品の押収とデータのバックアップをして本庁に持ち帰る指示を受け、張り込み用のワンボックスワゴンにて4人で新小岩へ向かうことになった。

 

 「私だけ、なんかサラッと仕事上がれそうでスミマセン……。あっ、高島屋見えてきましたね! そうだ、私、夜勤のお2人へ心ばかりの差し入れですが、お弁当の調達をしたいので寄りましょうよ♪」

挿絵(By みてみん)

 「出たっ! デパ地下か? ……しょーがねーなぁ」


 「谷さん、どんなご飯が好きですか?」


 「いいんですか? じゃ、お言葉に甘えて。僕は何でも大丈夫です! サッと買えるものでいいですよ」


 「了解です。じゃ、西先輩、荷物持ちをお願いします。あ、二人きりにさせてはいけないので小楠さんも荷物持ちのお手伝いをお願いできますか?」


 「あっ、はい」


 地下1Fフロアに着いて少し歩き回ると、数軒の従業員が愛美に最上級の会釈や“二階堂様、いつも大変お世話になっております”という呼びかけがあり、小楠が愛美の素性を完全に悟った。

挿絵(By みてみん)

 「西先輩……この神戸ビーフすき焼弁当でいいですよね」

挿絵(By みてみん)

 「おっ、マジか?  4,860円だぞ! いいのか?」


 「はい、では選べるように海鮮弁当と2種買いましょう。あと、飲み物と…………それから……小腹対策でデザートとかいりますか?」


 「いいよ、でも、まぁ……とりあえず…………任せて……見守るw」


 「了解です! あっっ、東京會舘のプティフールにしましょうか! 食べやすいサイズですし、ねっ。オンラインショップのほうの季節限定のものも色合いが楽しめるデコレーションもあって、そちらも可愛くて美味しいんですよね……」

挿絵(By みてみん)

 「ふーん、よく分かんねーな」


 「ねっ、小楠さん! 女子は知ってるんです、絶対」


 「はい、以前クリニックのお客様からいただいて食べたことあります。味だけでなくて見た目も可愛いんですよね!」

挿絵(By みてみん)

 「ね~~っ! ほら、先輩。あっ、……先輩……スイーツを侮らないでくださいね。あの子たち、ちゃんと魂ありますからね……。スイーツは……美味しく・楽しく・ありがたく食べてくれる人に…………良縁もたらしますからね! だから、もっと興味持って頑張ってくださいねっ!」


 「えっ、それ、本当かっ?」


 「…………ごめんなさい、独自の見解です。さぁ、谷さん待たせてますので、急ぎましょう」


 「なんだよっ!? 御利益に噓とかオリジナル持論展開すんの、やめろよ……信じるとこだったぞ」


 「フフフw 私、なんか二階堂さんの言うことなら信じられるかもw」


 「さすが小楠さん、お目が高い♪」

 挿絵(By みてみん)

 新小岩駅に到着した。被疑者の接触の可能性があるため、万が一に備えて怪しまれないよう、愛美と小楠は駅で降ろしてもらって友人を装い、徒歩で彼女の賃貸マンションに向かった。谷原たちは、彼女の自宅マンション向かいの住居者に協力を得て駐車場に停めてセレブ弁当を食べながら待機することにした。程なくして愛美たちも到着し、2人は部屋に入った。夕方の試験用新型ウェアラブルカメラ・ペン型を変更して今度はピン型を愛美が胸元に装着していた。谷原達はそれを車両から遠隔で行うと愛美に伝えていたが、実は本庁駐車場での装着の時点で起動させていて、リアルタイム中継はやはりデパ地下の買い物前から始まっていた。遠隔操作の担当ももちろんデジタルおじさん上司の中下であった。小楠がPCを立ち上げ、2人で作業に入った。小楠が色々とスムーズに対応してくれたことで作業時間はさほどかからなかった。バックアップが完了し、証拠品を手にしながらも独り暮らしの部屋が気になって仕方のない愛美は、少し見させてもらって衝撃を受けた。出てくる言葉は『凄い! ロフトもあって秘密基地みたい。え~、凄い! 独り暮らしか……、素敵です! 』と自分がずっと実家暮らしで情けないと嘆き、この町で頑張って生活を維持してきた彼女に尊敬の念を抱いたことを伝えた。そして、最後に玄関で少し話しながら彼女に高島屋で購入した海鮮弁当とすき焼き弁当とプティフールを渡した。

挿絵(By みてみん)

 「私、これからまだ本庁で……。生物だから帰庁する頃にはアウトでしょw 良かったら消費してもらえますか? いらなければお手数ですが処分してください。あれ、この写真……」


 「あっっ、…………私……です…………」


 「えーーーーっ、一重だったの?」


 「はっ、はいw ……高校の時に……好きな子にフラれて。で、変わりたくて。……実家が小岩なんですが、卒業を機にちょっとだけ離れて新小岩に。で、今のクリニックの広告を電車で見かけて……」


 「そうだったんですね。え~、やっぱり小楠さん凄い! 革命起こしたんですね、こんなふうに立派に独り暮らしもされてて。目のビフォーアフターも凄いw でも、どっちの小楠さんも可愛いですね! へぇ~、これがその高校の時の制服なんですね……似合ってる。えっ、小楠さん? どうかしましたか?」


 小楠が泣き出した。そして、愛美の腕に泣きついた。


 「ご飯もお菓子も……夕方のパフェも本当にありがとうございました。海鮮弁当も……一緒にパフェ食べながら雑談した時に私の好きなものとか聞いてくれて話したこととか、ちゃんと覚えててくれたんですよね。……聴取もそばにいてくれて……しかも一緒に泣いてくれて。なんか、リストの漏洩で頭ごなしに怒られたりするのかなぁって初めて取調室に入って本当怖かったんですけど……こんなに優しくて……心配してくれて。あの……、私、やっぱりもう……これ以上……独りじゃ…………助けてほしいです……」

挿絵(By みてみん)

 そう言って泣き崩れながら、自分一人の力だけで自分と彼を守るにはもう限界だと感じた彼女がずっとひた隠しにしていた今の時点で最もキーパーソンとなる重要参考人の彼の居場所を打ち明けてきた。愛美は彼女の背中をさすりながら仲間の捜査員に『小岩お願いします』とだけ伝えた。無線から聞こえる仲間の慌ただしさで彼女が自白した彼の居場所へ向かうことが分かった。そして、涙を流しながら彼女に『苦しかったね、ずっと。ありがとう、生きててくれて……本当に』と声をかけて居場所を教えてくれたことに礼を述べた。その中継を見ていた佳祐が中下に『小楠が泣いたところからここまでの映像だけを共有で』と指示を出した。中下は、サクッと情報共有タブレットのアップデートを完了させ、無線で張り込み班の2人に予定変更で『潜伏先の小岩のビジネスホテルへ直ちに急行、保護を頼む』と呼びかけた。愛美へはポリチャで『グッジョブ! 俺は大事な作業で離れるから戻ったら証拠品は本部に預けておいてくれ。デスクにマヤ遺跡……お疲れ』とメッセージを残して解析の準備で消えた。愛美がここから帰庁して無事に証拠品が届けば、本部の残業メンバーが受け取ったところで一課の現場以外の者が退勤出来るところまでこぎ着けた。

 彼女が落ち着いた様子を見せたので愛美は証拠品を持って本庁に戻るため、新小岩駅でタクシーを拾うことにしたが、彼女が心配だった。そのため、今夜だけでも一先ず安全な所に移るよう促し、説得に応じて彼女が実家に避難すると言うのでタクシーで回ってあげることにした。無事に彼女を実家に届けて佳祐に連絡を入れると『緊急連絡先を伝えておいて』と指示が入り、番号をメモして渡した。そして、愛美が無事に本庁に到着した。本部に証拠品を提出している間に谷原と西野たちも無事に小楠の彼氏である参考人のホストを保護したことを報告するため、佳祐に連絡してきた。


 「お疲れで~す、西野です。今、谷が聞き取りしてます。もう少ししたら任同で向かいます」


 「あぁ~い」


 「……主任、あの…………弁当……どう思います?」


 「ん~ん、……高いなぁw 下々の俺達が簡単に夜食で買えるもんじゃね~よな。あれ、高島屋の『高』って……そういうこと?」


 「あ~、なるほどね~、って、いやいやいや……あれマジで天然でやらかしてんすかね? パフェから始まって弁当と小洒落た菓子で2人目の参考人まで上げたんすよ、……あいつの作戦なのかなぁ? 俺、マジで分かんねーっす」


 「西野…………考えるな、感じろ! 彼女は……」


 「彼女は?」


 「……………………令嬢スイーツ菩薩なんだよw お疲れ! (ツー、ツー、ツー……)」


 「あっっ、切られた………………いやっ、もっと分かんねぇー!」

挿絵(By みてみん)

 西野たちを惑わせ、本部の捜査員たちまでかき乱し、ハイスペックな中下のCPUをフル稼働させて、一時的とはいえ、高負荷でかなり強いダメージを与えて不具合を生じさせた謎のアプリ・二階堂愛美が課に戻ってきた。そして、佳祐に諸々の報告をするのだが、話し終えても席に戻ろうともせず主任デスクをただじっと見つめて微動だにしない。

挿絵(By みてみん)

 「ん? どうした?」


 「…………あの…………ほっ、報告書……」


 「うん……」


 「報告書を……」


 「うん、お願いしまぁ~~す」


 「ん~ん…………ほっ…………ほぉ……」


 「ほ? 」

挿絵(By みてみん)

 「…………あの、ここまでの流れ……で…………これだけのことがあって、こっ……こんなスケールの捜査報告書を…………私は一度も書いたことがありませんっ」


 「おぉ~~っ、マジかっ?」


 「はいっ」


 「んーん……、分かった。んじゃ、やるか……ちょっと5分だけ待って。こっち済ませたら手伝う」


 「すみません、ありがとうございます。……では、ほうじ茶淹れてきます」


 「ほうじ茶?」


 「あっ、はい。あの、時間的に……カフェインを摂り過ぎているのでは? と思ったので。主任とこの時間帯までご一緒するのは初めてですし。……コーヒーのほうが良いですか?」


 「ふーん、そこまで気が利くのね」


 「まぁ本来は、万年事務員お茶汲み係なので。西先輩は『何が何でもブラック』派で、谷先輩は『じゃ、二階堂さんと同じものを』って合わせてくれる派で。明日香先輩は『何でも嬉しい、ありがとう』宣言されてるので迷わず淹れられます。デジ……あっ、えぇ~っとみのさんは『緑茶・ほうじ茶・梅昆布茶』をランダムで嗜みます。あっ、ほうじ茶と梅昆布茶は私が勧めました。ほうじ茶は、PC作業による神経疲労の回復効果があります。梅昆布茶は、梅のクエン酸で疲労回復効果や昆布のカリウムやマグネシウム等のミネラルで体内の水分バランス調整をしてくれます。……主任のお好みのものを……まだ把握しておらず……」


 「おぉ、そうだったね。ありがとう、じゃ、ほうじ茶お願いしま~す!」


 「はいっ!」


 佳祐は思った……。


 『…………うっっ……かっ、可愛いっ…………報告書のモジモジから急旋回で管理栄養士ぶっ込んでくるとか……秒で出来る女に巻き返すって、ん? これも作戦なのか? 謎過ぎるぅ~』

挿絵(By みてみん)

 佳祐は、心をかき乱されながらも作業を済ませて報告書作成のサポートのために過去の幾つかの実際の報告書をサンプルとして愛美のPCへ転送した。そして、彼女がほうじ茶を淹れて戻ってきた。佳祐のデスクに置こうとする手を止めさせ、愛美の隣の明日香のデスクへ置くように頼んだ。そして、A4用紙を数枚とペンを持ちながら明日香の席に座ると、愛美のPCを少しいじりながら課題を出した。


 ――捜査報告書作成ステップ

 ①過去の類似案件サンプルに目を通し、語彙をコピーする。

 ②本日の行動を時系列で箇条書きにする。

 ➂1ブロックごとに下書きし、随時チェックを受ける。

挿絵(By みてみん)

 愛美が取り掛かり始めた。佳祐が腕組みしながら見守っていると、西野と谷原が小楠のかくまっていた重要参考人の彼氏を連れて到着した。佳祐は愛美にステップ①から②にかけてを行わせ、その間に西野たちの様子を見に行った。要領が良く把握も早い愛美は、➂までを既に仕上げていた。佳祐が戻ると、デスクの空きスペースに突っ伏している愛美の姿が見られた。疲れ果てた彼女を起こさずにそっと下書きをチェックしていると、ほどなくして愛美がむくっと起き上がり、➂の下書き全てのチェックをお願いしてきた。彼女の顔を見るなり、佳祐はニヤッとしながらズレたメガネを顔に触れずに上手いこと直してあげた。そして報告書をOKして、清書に取り掛かるよう指示し、下書きの編集中の愛美へ少し話し始めた。

挿絵(By みてみん)

 「……みのさんのこと、まだ腹立ててるか?」


 「えっ?」


 「今日、俺と分かれて単独捜査になってからここまでの数時間ってさ、確かに結果オーライで二階堂のお手柄だったんだよな。でな、参考人の小楠もいい子だったから良かったんだよな。でも、まだ油断できないんだよ、実は……。この後さ、もし彼女にまだ被疑者との接触があって、また恐喝行為で彼女があっちに寝返ったり、引き込まれて保身のために供述翻す可能性もゼロじゃないんだよ。そういう……もしもの時のためにウェアラブルカメラで撮ってたものの全てが俺たちの盾になる。逆にそれが無かったら嫌疑不十分でホシを落とせないどころか、場合によっては俺たち刑事側の行動を逆手にとって『不当な捜査だ!』って反撃してくるってパターンもなくはないからさ。……脇の甘さが命取りってやつな。みのさんの技術は、そこをカバーする1つの重要なツールであって、それを巧妙に操るプロのオジサンの技術あってのチームプレーなんだよ。しかもさ、ほぼ事務作業しかさせてもらえなかった二階堂がだよ、今日初めて大きく動いたわけだ。みのさんとはチーム結成からの仲だろ!? 彼の年齢って二階堂のお父さんと同じ世代じゃん。もうさ、みのさんからしたら二階堂なんてきっと“娘”みたいなもんだぞ。手塩にかけて育ててきた娘に“はじめてのおつかい”させるような心境でしかないんだよ。そんな大事な娘がせっかく掴んだチャンスを応援しないわけがないじゃん。冷や冷やしながらも娘が無事に用事済ませて無傷で家に帰ってこれるようにって、言わずとも護衛部隊を買って出て抜かりなく動く姿って親と変わらないだろ。陰でガッチリ対策しながら現場の捜査員を強力にサポートしてくれる縁の下の力持ちだよなぁ。二階堂……、二階堂はなぁ、愛されてるんだぞ!」


 「愛……されてる?」


 「おう! いじってからかって遊んでるわけじゃないからな。あぁ~そうそう、聴取で二階堂がみのさんに睨み効かせて去ってった後なんか、死に物狂いで詫びスイーツ探してて、裏じゃ大変だったんだぞw これこれ」


 「あっ、ショコラ・ノワールだっ!」


 「二階堂に、って。どうだ? 機嫌直りそうか?」

挿絵(By みてみん)

 「あっ、もう、直ってます!」


 「はやっ!!! すげ~な、スイーツの力…………。よしっ、じゃぁ~、それチャチャっと仕上げて……飯でも行くか? あっ、食ハラになるの嫌なんで強制はしませんが……」


 「しょっ、食事ですか?」


 「うん。あっっ、あれか……SATが突入してくんのか?」


 「んーん、……どうでしょう? ……来るかもしれません……し……来ないかもしれませんし……来ないと見せかけて泳がせておいて突如として現れるパターンもあるようです。よく分からないんですよ、基準が……」


 「なるほど。まぁ、これは上司によるお手柄部下への労いの晩飯だっ! とりあえず行こうぜ、聞きたいこともあるし……」


 「聞きたいこと? ……分かりました」


 帰り支度をして課を出た2人。エレベーターを降りて本庁を出てタクシーを拾うことにした。

挿絵(By みてみん)

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