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secondary damage~令嬢スイーツ刑事の真実探求は、私に沼る乙男上司といつだってビターdeスイートですのよ!~  作者: 琴音七色


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第8章『現場』1.吹雪の脅威を超越した令嬢刑事の第六感

【前回までのあらすじ】 BBQ現場での潜入捜査中、薬物グループの主犯に襲われ絶体絶命の危機に陥った愛美。佳祐の献身的な看護で回復した彼女は、自らの弱さを克服するため、新たなスキルアップ研修に挑む。バディの谷原と向かった雪山での聞き込み捜査。しかし、平穏な研修は突如として暗転する。谷原の失踪、そして雪上に残された血痕――。愛美の「刑事としての本能」が今、試される。

受刑者に朝が来た。

昨日溺水した看守の

顔色をチェックしていると、

彼女の目が開いた。


挿絵(By みてみん)


 「ん?」


 「おはよう」


 「あっ、おはようございます」


 「体調、どうだ?」


 「問題なさそうです」


 「んじゃ、俺、先行くぞ!」


 「早いですね」


 「うん、一緒に通勤できないだろ」


 「まぁ……、そうですね」


 「朝一で会議2つあるからさ」


 「そうなんですね」


 「今日、昨夜の話通り、

  谷さんと雪山なっ!

  防寒対策して向かうように。

  響子さんにも話しておいたから、

  ある程度は用意してくれてるはず。

  向こうに着いたら一報なっ。

  何かあれば直ぐ俺に連絡しろよ。

  じゃ、行ってくる。本庁でな」


 「あっ、はい。

  ありがとうございます。

  いってらっしゃいませ」


 「あの~、その……

  かしこまった感じの

  『ませ』とかいいからさ、

  もう一回

  『いってらっしゃい』って

  見送ってもらっていいですか?」


 「えっ、あ、はい。

  いってらっしゃい」


 「うん、いいね! いい!

  うん。行ってきまぁ~す!」


 「…………」




佳祐を見送った愛美が

身支度を終えて、

玄関に向かった。


出ていこうとする愛美へ

響子が話しかけた。


 「仕事で

  星空リゾートだなんて

  残念ね……」


 「うん、滑りたくなる!

  でも、また今度かな」


 「そうね。あっ、そうそう、

  向山バーム

  買ってこれたらお願い!」


 「あぁ~、あれね!

  分かった。

  帰ったら私も食べる!

  じゃ、行ってきます」


 「うん、気をつけてね」


 「は~い」


本庁に着いた愛美は、

一課メンバーに

挨拶を済ませて真っ先に

中下の元へ向かった。


挿絵(By みてみん)


 「みぃ~のさん!」


 「おっ、体はどうだ?」


 「うーん、大丈夫です。

  ご心配をおかけしました」


 「本当だぞ!」


 「すみませんでした。

  で……、

  取り返しのつかない流れを

  今後また起こさないために

  お願いがあるのですが」


 「おう、頭使ってきたな!」


 「はい、電気が入って

  刺激が加わりました!」


 「ハハハ!

  で、お願いって?」


 「あの…………、

  もしもの時のために、

  私、現場で動くたびに

  ウェアラブルカメラ

  付けていたいんですけど」


 「ほう、

  あれだけメカ嫌いだって

  突っぱねてたのにな!」


 「すみません!

  でも、それなら父も

  少しは安心して私が

  仕事続けることも

  納得してくれるかな? と」


 「うん、正解だな!」


 「ウェアラブルカメラじゃなくても

  何でもいいんです。

  サブ入れて2つ以上は必ず

  何か追跡可能なもの

  携帯しておきたいなと。

  特に今日は雪山なので」


 「サブ?」


 「はい。今日は聞き込みですが、

  昨日の潜入のように

  スタンガンで

  感電させられたことで、

  主任が『略取(拉致)だったら』

  と心配していたんです。

  万が一に備えて、

  皆さんにご迷惑をおかけする

  リスクを少しでも減らしたくて。

  バックアップがあれば、

  現場経験の浅い私に何かあっても、

  生存率が上がります。

  それに、連れ去られた瞬間の

  タイムロスをゼロにして、

  追跡から救出までシームレスに

  ……文字通り『途切れなし』で

  動いてもらえるかと。

  で、欲を言えば、

  バディを組んでる方にも

  サブのカメラやGPSなどの装備は

  内緒にしたいんです。

  みのさんとだけ

  確実に繋がる超小型アイテム

  ありませんか?」


 「なるほどね。

  公安レベルになってきたな!

  で、どうして内密なんだ?」


 「んーん、なんか、

  ライブ中継し続けることで

  気分を害する方も

  おられるかな? と。

  あと、父親への対策であって、

  でも父は警察庁の人間でもあり、

  公私混同な装備になると思うので」


 「うん、で、主任には?」


 「…………」


 「話してないのか?」


 「…………はい」


 「その理由を話したら

  用意してやるよ。

  責任も俺が取る」


 「責任だなんて、そんな……」


 「他言しないから話してみろ。

  自分の身に何か不安があるのか?」


 「…………父が心配して、

  ずっと父の代わりに私のこと

  近くで守って来てくれたのって、

  みのさんですよね?」


 「おっ、バレたか!?」


 「直ぐに分かりました。

  警護するなら

 『デジタル系』の能力が最強で

  身近に居れて、

  私とほぼ同じ

  勤務体制の人間だなと。

  みのさんしかいないんで……」


 「その洞察力、

  慶一さんの娘!って感じだなぁ。

  さすが!」


 「ありがとうございます。

  主任には時期が来たら話そうと。

  今はまだ出来る限り

  知る人の数は少ないほうが

  いいと思っていて」


 「何か自分の中で都合があるのか?」


 「ん~ん、

  上手く言えないんですけど。

  あと父が心配する

  私へのリスクですが、

  過去に身の危険が及ぶことは

  ほぼなかったんです。

  でも、昨日あんなことがあって

  “ハッ”としたのと同時に

  “抜け穴か?”と

  気付いちゃったんです」


 「…………愛美を狙うタイミングが

  職務中なら可能ってことか?」


 「さすがですね!」


 「フン……………………、

  なるほどなぁ。よし、分かった。

  これ付けていけ!」


 「あっ、ありがとうございます、

  …………これは?」


挿絵(By みてみん)


 「ピアス型の超小型カメラだ。

  音声の送信はオフ、

  こっちへの『一方通行の

  生中継(ライブ配信)』だ。

  万が一、拉致された時に

  装着がバレない限り、

  音声と位置情報で、文字通り

  シームレスに追ってやるよ!」


 「助かります!

  では、谷先輩との会議

  行ってきます」


 「頑張れよ!」


 「あっ…………」


 「なんだ? どうした?」


 「ずっと…………そばで

  私のこと守ってくれて、

  ありがとう! みのパパ」


挿絵(By みてみん)


 「はっっ!!!」


 「行ってきます!」


挿絵(By みてみん)


“新宿パフェ堪能事件”から久々に

ハイスペック・中下の

CPUがフル稼働した。


その理由は、前回同様に

中下を揺さぶる愛美の言動だが、

今回は“睨み”ではなく

“ワード・みのパパ”によって

コマンドを実行したからだった。


挿絵(By みてみん)


しかも“負荷テスト”無しで

無意識に且つ複数のプロセスを

生成することなく一瞬で

ハイスペック・中下CPUに

ダメージを与えて

不具合を生じさせた、

朝一番から非常に重たい

謎のアプリ・愛美であった。




デジタル執務室を出て、

愛美は

一課の谷原のところへ向かった。


すると、

西野と話し込んでいる姿が見えた。




 「西先輩、おはようございます!」


 「おっ、来たな、電撃苺娘!」


 「ご心配おかけしました」


 「無茶すんなよ」


挿絵(By みてみん)


 「はい、大丈夫です。

  今日は谷先輩がバディなんで

  余裕です!」


 「本来、俺のバディなんだからな」


 「フフ」


 「何だよ!?」


 「新バディ結成に

  妬いてるんですか?」


 「妬いてねーよ!

  ていうか、期間限定だろ!」


 「まぁまぁ。

  あっ、お土産買ってくるんで、

  機嫌直してくださいね!」


 「おっ、おう。

  じゃ、甘いやつ、頼む!」


 「了解です!

  ということなので、谷先輩!

  お土産調達のお時間の確保を

  お願い致します!」


 「フフフフ、

  そういう作戦ですか?

  比率としては

  自分用に買うものが

  多そうですね!」


 「フン。

  そういう分析とか

  いらないんで、

  会議お願いしますっ」


 「はいはい。

  では、サクッと

  済ませてしまいましょう」


 「はい、

  よろしくお願い致しますっ!」


愛美たちは、

10分程度で会議を済ませた。


都内で外回りの予定である西野に

駅まで送ってもらうこととなった。


佳祐の調整により、

この日から愛美は

“谷原~明日香~西野”の順番で

数週間ごとにバディを変更して

スキルアップ研修していく。


そのため、本来は

“西野のバディ”である谷原が

今日から1週間ほど

愛美とバディを組んで動くため、

谷原が戻るまでの間、

明日香が西野のバディとなった。

 

更衣室での着替えを済ませた

明日香がやって来た。


溺水して以来、

愛美の様子が

分からなかったため、

彼女を見かけるなり

駆け寄ってきて

激し目に抱きついた。


挿絵(By みてみん)


 「愛美っ!」


 「あっ、おはようごっ、

  うっっ、ぐぉっ、

  おっ、うっっっ」


 「ごめん、本当に。

  ごめん、体はどう?

  何ともない?」


 「はっ、いっ、あの、

  今のこのハグのほうが、

  くっ、苦しいですっ!」


 「ああぁぁ、ごめん!」


 「ふぇぇぇ」


 「良かった、本当に」


 「大丈夫なので

  気にしないでください」


 「うん。でも、

  もう一回だけ謝らせて。

  本当にごめん!

  あと、この際だから言う。

  愛美専用冷蔵庫のおかず、

  たまにもらってた。

  それもゴメン!」


 「…………知ってました」


 「えっっ?」


挿絵(By みてみん)


 「数、数えてますし。

  っていうか、

  鍵かけてるのに開けたんだなぁと。

  そっちのほうが衝撃でした」


 「あぁ~、

  みのりんにサクッとね」


挿絵(By みてみん)


 「でしょうね。

  あの、本気で

  やめてもらっていいですか?

  おかず泥棒」


 「スミマセン」


 「食中毒にでもなったら、

  先輩にも一課にも

  ご迷惑をお掛けしてしまうので。

  あの、家に

  お中元・お歳暮グッズや

  百貨店とのお付き合いで

  定期的に購入してる割に

  食べきれない

  備蓄食品とかあるので、

  それ持ってきます。

  販売品なら問題ないので

  良かったらそっち食べてください。

  持ち帰って好きな時に

  食べれられますし。

  お子様との夕飯の足しにしてください」


 「えっ、もしかして、

  夕飯のおかずの

  足しにしてたの、知ってたの?」


 「ええ、はい。

  退勤時に冷蔵庫確認してまして。

  お昼まであったおかずの一部が

  明日香先輩とともに夕方消えるんで。

  あと複雑なパスワードにもかかわらず

  突破された上に

  頻繫におかずの減りも早く、且つ

  明日香先輩が休みの日も減るので、

  共犯者が複数いることも掴んでいます。

  そして、パスワード解読できるのが

  みのさんしかいないので、

  それを良しとして開けたということは、

  皆さんが私の調理や保存方法などの

  衛生面で問題なしと

  判断されてのことだとは思うので、

  嬉しくもあります。

  ですが、ここは強行犯係なので

  万が一のことがあって

  食した方々が

  出動できない事態ともなれば、

  一課だけの問題じゃなくなりますので」


 「…………愛美」


 「はい?」


 「その鋭い洞察力と責任感…………、

  あんた、いい刑事になるよ!」


 「あっ、窃盗犯の開き直りだっ!」


 「すんませんっ」


 「フフフ。

  明日香先輩、今日、私

  “郡山”なんです!

  お土産買ってきますね!」


 「ありがとう!

  郡山かぁ、雪だね。

  今井たちの余罪の聞き込み?」


 「はい、その裏取りなどで

  今日からしばらく

  谷先輩のバディ務めます!」


 「谷くんか。

  んじゃ、心配ないね!

  暖かくして行くんだよ」


 「はい!

  防寒はバッチリです!」


 「うん、っぽいね!

  谷くんの次は

  私とバディだよね!?」


 「はい、楽しみです!」


 「だねっ!

  普段話せないこと、

  たくさん話そう!

  じゃ、まずは谷くんの指導で

  しっかり掴んで

  スキルアップ頑張って!」


 「はい、

  ありがとうございます!」


 「私たちの

 (車両で駅まで)乗ってく?」


 「はい、

  谷先輩と西先輩の間で

  そんな話になってます」


 「うん、じゃ、

  駅までの10分で

  郡山の土産の品を選ぶわっ!」


 「ハハハ!

  では、主任に挨拶してきます」


 「うん、じゃ、私たちは

  先に駐車場行って待ってるね」


 「はい、では挨拶を終えて

  直ぐ下に向かいます」


 「了解!」


愛美は

再び谷原のところへ戻った。

2人で荷物とスケジュールの

確認を終えて

主任デスクに向かった。

佳祐が

若干の笑みを浮かべながら

2人を待ち構えていた。


挿絵(By みてみん)


 「おっ、苺姫!」


 「あっ、

  姫?……格上げ

  ありがとうございます!

  えぇ~、今日は

  スキルアップ研修

  頑張ってきます!」


 「あ~い。

  じゃ、谷さん、頼みます!」


 「了解です!」


 「えぇ~、くれぐれも

  売店や飲食エリアで

  二階堂を見失わないよう、

  気をつけてください!」


 「承知しましたっ!」


 「あの、

  修学旅行前日の

  小学生扱い

  やめてもらっていいですか?」


 「真っ先に

  売店行きそうだからさ、

  念のためなっ。

  さて、二階堂、

  体調に異変を感じたら

  直ぐに谷さんに報告を。

  あと、帰ったら

  研修用の報告書もな」


 「はいっ!」


 「雪山なので

  本当2人とも気をつけてな!」


 「了解です。行ってきます!!!」




挨拶を済ませると2人は

西野たちの送迎で

東京駅へ向かった。


 「先輩、

  コーヒーか何か

  買っていきましょうか?」


 「そうですね、1時間ありますし」


 「あっ、私、昨日も今日も

  かなりお手間を

  取らせてしまっているので

  奢らせていただきます!

  わぁ~期間限定の

  加賀棒ほうじ茶ラテだ!

  私これにします。先輩は?」


 「一緒のものでいいですよ!」


 「了解です!」


2人が乗車する

9:00東京駅発

10:12郡山駅着の

山形新幹線つばさ129号が

ホームに到着する

アナウンスが流れた。


すると、愛美が

両手にドリンクの

カップを持ちながら

笑顔でエスカレーターを

上がってきた。


挿絵(By みてみん)


 「先輩、お待たせしました!」


 「間に合いましたね、

  タイミングもバッチリです!」


 「本当だぁっ、来ました!

  つばさ君だっ」


挿絵(By みてみん)


 「フフフ、

  もしかして、ヲタですか?」


 「違いますっ!」


 「冗談です、

  さぁ、乗りましょう!

  つばさ君に」


 「ヲタじゃないんで」


 「でも、

  愛着を持って呼んでいる場合、

  鉄女に入るようですよ!」


 「そうなんですか?

  あっ、でもその

  “鉄女”って呼ばれ方なら

  受け入れられます。

  でも、さほど詳しくはないので

  専門の方々に失礼ですね。

  やはり鉄女は辞退します」


 「真面目かっ!?」


 「あっ、先輩、

  そういうツッコミ

  するんですね!?」


 「言いたくなりました!

  さて、14のCとDです」


 「あっ、そこですね」


 「では、鉄女に

  D席を譲ってあげましょう」


 「えっっ? いいんですか?

  窓側席ですよ!?

  新幹線の窓側席って、

  その日その時にしか出逢えない

  瞬間的景色を

  窓枠いっぱいに

  独り占めできる

  特等席なんですよ!?」


 「フフフ、

  鉄女並みに席の魅力を

  解説できてますね、

  やはり!?」


 「あっ…………」


 「さぁ、どうぞ」


 「(にやけ顔で)

  ありがとうございます!」


 「では、着くまでの約1時間を

  スキルアップ研修

  講義にしますので

  テーブルを出してください」


 「はい!

  宜しくお願い致します」


 「では、本日のレジュメです。

  ざっと目を通してください」


 「はい!」


挿絵(By みてみん)


 「車両内なので小声で。

  また専門的な内容や用語は

  隠語を使いますね」


 「はい」


 「僕たち(警察官)には、

  十人十色の『型』があります。

  僕みたいに

  理詰めで動く人もいれば、

  直感だけで動く人、

  人情で落とす人、

  ひたすら威圧する人もいます。

  苺娘がこれから学ぶべきは、

  彼らの真似をすることじゃなく、

  バディの『型』に合わせて、

  自分の役割(ポジション)を

  カメレオンみたいに変える

  スキルです。

  これは、外部の人間や

  潜った時(潜入捜査時)の

  状況に対しても同じですね。

  昨日の件を例に反省点

  あげてみましょうか!?

  自分で何か

  気づいたことはありますか?」


 「ん~ん、よくよく考えたら、

  もっと手前の段階で

  皆のところに

  戻っておくべきだったと

  思いました」


 「そうですね。

  そんな感じで

  パターンというのは

  何通りもあるので、

  選択肢が複数あるうちに

  有利に動いて

  身を守ることも重視しながら

  立ち回れると良かったですね」


 「次からは、とにかく

  水場には近づきませんっ!」


 「ハハハ。でも、大事です!

  もう1つ、僕から提案すると、

  誘われた彼(主犯)より

 『あの人のほうが気になる!』

  って感じで彼から離れて

  元の場所に戻るのも

  1つの手でしたね」


 「うわっ、賢い!

  肉食系女子を

  演じるべきだった

  ってことですね!?」


 「うん、そうやって

  主導権を握ることも

  1つのテクニックです!」


 「勉強になりますっ!

  ……公私ともに」


 「フフフフ。

  さて、では

  今お伝えしたことも含めて

  アドバイスを記載した

  この用紙を

  お渡ししておくので、

  良ければお持ちください」


挿絵(By みてみん)


 「ありがとうございます。

  あっっ、パフェだっ!

  先輩、絵お上手ですね」


 「どういたしまして」


 「何パフェですか?」


 「それ、必要ですか?」


 「えぇ、重要です!」


 「ハハハ!

  では、ストロベリーショコラで!

  観察してきた感じですと、

  その2つが大好きなようなので」


 「鋭い観察眼、見習いますっ!」


 「では、以上です」


 「ありがとうございました!」


 「では、僕は今から

  車の手配をしてくれている

  支店の方(県警)に連絡をしに

  デッキへ行ってきます。

  特等席で一期一会の

  景色をご堪能ください!」


 「一期一会

  もしかして(苺娘に)……、

  かけてますか?」


 「いえ。

  ……あだ名

  受け入れたんですね!?」


 「愛称で呼ばれることは

  距離を縮めたいという

  相手の心の現れなので

  チーム愛だと受け止め

  受け入れることにしました」


 「心理学者かっ?」


 「……いってらっしゃいませ」



先輩刑事・谷原からの

スマート且つユーモアな

講義の受講が終了した。


そして、新幹線は予定通り

10:12に郡山駅に到着して、

2人は現地の警察車両に乗り込み、

磐越自動車道を使って

スキー場へ向かった。


車内でもバディトークが

少々繰り広げられ、

愛美は前日の失敗に

執着することもなく、

前向きな気持ちで

バディの心得を

頭に叩き込んでいた。


挿絵(By みてみん)


 「時間もほぼ予定通りですね。

  スキー場に到着したら、

  まずは二手に分かれて、

  出店エリアや売店で

  聞き込みを開始しましょう。

  で、郡山ブラックの

  オーナーへの聞き込みは

  最後にして、

  そこで昼食にしましょうか」


 「はいっ!」


 「フフフ、元気がいいですね!」


 「すみません……」


愛美は車内から

窓の外の景色を見ながら、

心を落ち着かせていた。


そして、ここまでの

谷原のスケジュール管理を

見習って、

メモをとるなどしていた。


谷原はそれを

横目でチラッと見ながら

感心していた。


挿絵(By みてみん)


11:30過ぎ、問題なく2人は

星空リゾート磐梯山に到着した。


ここから

谷原の組んだスケジュールで

スキー場や売店・キッチンカーなど、

複数の人間への聞き込みを

開始することとなった。

 

2人は分担で聞き込みを開始した。

そして、愛美は

耳に着けているピアス型カメラを

数回トントンとタップして

ONにして捜査に当たった。


このピアス型カメラは

極小ゆえに、連続録画だと

バッテリーが数時間しか持たない。

だから、愛美は

このタイミングで

起動することにした。


挿絵(By みてみん)


13:00過ぎに

聞き込みがほぼ終了し、

2人は合流して

昨日の主犯の逮捕後の

聴取で割り出した

グループの仲間の一人で

重要参考人の出店先である

ラーメン店で

昼休憩を取ることにした。


そこで谷原が従業員に

「郡山ブラック」を注文して、

その際に『オーナーさんと

14:00にホテルのカフェで

お話を伺う予定になっています』

と伝えた。


重要参考人であるオーナーが

未だ不在の為、

従業員が2人へ

ラーメンを運んだ後、

電話をかけてくれることになった。


谷原が『出来立ての

郡山ブラックが冷めないうちに

食べましょう』と言って、

2人は寒さの中を耐えて

聞き込みを終え、

ようやく温かい食事にありつけた。


 「では、いただきましょうか!?」


 「はいっ!」


 「(2人とも手を合わせて)

  感謝していただきます!」


挿絵(By みてみん)


 「あっっ!」


 「ハハハ!」


 「谷先輩も

  その挨拶なんですね!?」


挿絵(By みてみん)


 「あ、あぁ~、

  前に内勤の日に(愛美が)

  そう言ってから食べ始めたのを

  見たことがあって

  真似してみました」


 「あぁ~、そうだったんですね!」


 「エリート娘さんでも

  ラーメンとか食べるんですね!?」


 「えっ、普通に食べますが……。

  あ、でも、この郡山ブラックは

  久しぶりなので。

  先程スケジュールに

  組み込まれた時、

  舞い上がりました!」


 「なるほど、

  だから威勢のいい

  お返事だったんですね!?」


挿絵(By みてみん)


 「そうです!

  わぁ~、チャーシューだぁ!」



2人は、白い息を吐きながら

熱々のラーメンを食べて

冷えた体を温めた。


B級グルメだろうと何だろうと

お構いなしに美味しそうに

ラーメンをすすって食べる

愛美の横顔を見て、

谷原は

“無邪気で憎めないエリート娘”

だと感じていた。


 


14:00少し前となり、

リゾートホテルの

ロビーに入った2人。


ここのカフェで

ラーメン店のオーナーから

話を伺う約束のため、

席を確保した。


すると、

先程のラーメン店の従業員から

ロビーの受付に電話が入った。


谷原がアナウンスに気付いて

受付へ向かった。


そして、神妙な面持ちで

谷原が席に戻ってきた。


 「オーナーが

  男性浴場で休憩中だそうです。

  ここで頻繫に

  出店していることもあって、

  人目に付くところで

  話したくないそうです。

  苺娘は(男性浴場へ)

  入るわけにいかないですから、

  僕、ちょっと行ってきますね」


 「そうなんですね、了解です。

  あっ、あの」


 「一課への

  土産の買い物ですね!

  どうぞ!!!」


 「はいっ! あ、あの、

  どれくらい

  かかるんでしょうか?」


 「ん~ん、

  30分程度でしょうかね。

  何かありますか?」


 「シェフの自慢の

  特製ベイクドチーズケーキが

  あるんです。

  食べて待っていても

  いいですか?」


 「フフフ、

  自腹でお願いします!」


 「はい!」


愛美は、

谷原の後ろ姿が

まだ見えているにもかかわらず、

店員を呼んでデザートを注文した。


挿絵(By みてみん)


その頃、一課では

主任の佳祐が

別班の聞き込み班の

対応をしていた。


そこへ二課の者が

『デジタル執務室で

中下さんがお呼びです』と

言付を頼まれたと

話しかけてきたため、

佳祐は作業を部下に引き継ぎ、

彼の元へ向かった。


 「どうも、みのさん。

  やってまいりました」


 「お待ちしておりました!

  念の為、

  鍵を閉めさせていただきます」


佳祐が

執務室の出入口の戸を閉めると、

中下がカシャカシャっと

キーボードをタイピングした。


次の瞬間、

佳祐の背後で“

ウィ~ン、ガシャッ”と

遠隔で電子ロックの

閉まる音が響いた。


 「こちらへどうぞ!

 (モニターを指差す)」


 「おっ、苺姫だ!」


 「はい、

  先程のスキー場での

  聞き込み開始時に

  カメラがONになりました」


 「あれ、

  今日ウェアラブルカメラ

  着けてましたか?」


 「いいえ。実は今朝、

  愛美がここへ来まして。

  自分から

 『着けていきたい!』と

  申し出がありまして」


 「ほほう、昨日の一件で

  ビビりましたか!?」


 「いや、それだけでなく、

  どうやら警視正や主任に

  心配をかけないための

  判断だそうです。

  昨日被疑者に襲われたことで

 『現場に隙がある』と

  気づいたとかで

  カメラの装着を

  希望してきましたから」


 「現場に出続けたい

  ということですかね!?」


 「そのようですね。

  ただ、腑に落ちないのが

 『主任にもまだ今は黙っていて』

  の一言です。

  主任にも刑事を辞めるよう

  言われるのでは?

  と思ったのかもしれません」


 「ん~ん、現場が

  面白くなってきたんですかね。

  愛美のお父さんが

  懸念していることに

  何か本人も気になるところが

  あるのでしょうかね?」


 「ありえますね。

  愛美の自宅用の

  PCのパスワード、

  解除しましょうか?

  同居生活も

  スタートされたようですので!」


 「おっ、筒抜けですね!」


 「ですね!

  お2人をお守りするために

  私がおりますので、

  一通り把握しております」


 「ありがとうございます、

  色々と」


 「いえ。私は主任に

  以前救われましたので。

  警視正にも主任にも、

  私はこれからも尽力いたします」


 「いえいえ、こちらこそ

  宜しくお願いし、あっ、

 (愛美が)ケーキ食べ出したっ!」


挿絵(By みてみん)


 「フフフ、カメラがONだろうと

  お構いなしですね!

  ちなみに、愛美に着けさせたのは

  ピアス型の超小型カメラです。

  あちら側から一方通行で、

  リアルタイムの映像と音声が

  送信されてきます。

  万が一のことがあっても、

  カメラだと気づかれない間は

  追跡が可能です。

  ただ、デメリットは

  こちらの指示が

  向こうに届かないことです。

  リスクがある時は、

  彼女の能力任せになりますね」


 「ほう、それでも十分ですよ!

  助かります。

  おっ、犬用の首輪?

  シュチェルの首輪だな!」


挿絵(By みてみん)


 「フフフ、

  警視正の愛犬ですね!」


 「ですね。ん?

  首輪3つも買ってる?

  職務中に堂々たる

  私的な買い物ですね、これは」


 「まぁ、それでも

  谷原君にちゃんと

  許可取りしてましたので

  セーフです!」


 「彼女、そこは

  ちゃんとしてるんですよね」


挿絵(By みてみん)


と、そこへ

買い物を終えた愛美から

主任の社用スマホに連絡が入った。


 「おう、苺姫、どうした?」


 「あの、主任!

  谷先輩が戻られないんです」


挿絵(By みてみん)


 「男性浴場で

  オーナーと、って話か?」


 「はい。念の為、別れ際に

  所要時間を確認した際に

  30分程度かなと

  言われたんですが……」


 「どれくらい経ってる?」


 「それが、もう50分、

  もう少しで

  1時間経っちゃいます。

  先輩の端末に何度も

  連絡を入れているのですが、

  一向に繋がらなくて……。

  あの、主任、私、

  何か嫌な予感がします」


挿絵(By みてみん)


 「……よし、じゃ、

  受付へ行こう。

  ホテルの責任者を呼んでもらって。

  で、係の方に事情を話して

  谷さんの顔写真を見せて

  男性浴場を確認してもらおう。

  あと、オーナーの写真も一緒に。

  で、フロントに防カメ映像を

  その場で開示するよう

  強く求めてくれ。

  手続きの『捜査関係事項照会書』は、

  後追いで本部に切らせる」


 「はい、では、

  受付に行って交渉してきます!

  カメラ映像の件、本部に

  正式な照会を要請するよう、

  再度こちらから

  連絡を入れればいいですか?」


 「あー、ここにちょうど

 『みのさん』がいるから、

  本部への連携や照会書の手配は

  こっちでやっとく。

  愛美、切らずに

  通話のままにしようか!?」


 「あ、はい! あ、

  雪山用のスマホネックホルダー、

  私物を持ってきて

  着けてるんです!

  トークアプリに切り替えて

  ビデオ通話にすれば、

  私の視界がそのまま

  主任のモニターになりますよね!?」


 「そうだね、頼む!」


 「はい、

  ではフロントに行きます!」


 「うん、映像が確認できたら、

  谷さんと離れた直後からの

 『50分間の録画データ』の確保を

  フロントに約束させてくれ。

  こっちも直ぐに動く」


 「はい、分かりました!」


挿絵(By みてみん)


愛美は急いで

ホテルのフロントに向かった。

そして、佳祐は中下に

愛美のスマホと繋いだままの

社用スマホを渡して

指示を出した。



 「みのさん、俺の端末、

  ここのモニターに乗せて

  ビデオ通話を大画面で

  共有してください!

  谷さんとオーナーが映ったら

  そのままリアルタイムで

  映像解析に入ってください」


 「了解、回線繋ぎます!」


本部の大型モニターに、

愛美が構えるスマホの

カメラ映像が映し出された。


挿絵(By みてみん)


画面の向こうで

愛美がフロントの人に

警察手帳を出して

諸々の事情を説明し、

責任者への許可を得て

防カメ映像を

見せてもらっている

様子が見えた。


挿絵(By みてみん)


 「はっ、た、谷先輩が……

  裏に連れていかれたようです!

  えっ、言い争ってる?」


挿絵(By みてみん)


モニターに映し出された

衝撃の映像に、

執務室が凍りついた。


 「愛美、応援を要請するから、

  そこで待機な!」


 「みのさん、

 『事案認知(事件化)』で!

  直ぐに一課の案件として

  初動手配を掛けてください!」



佳祐の丁寧なトーンが、

一瞬で鋭い指揮官へと変わった。



 「了解、

  すぐチャットに投げます!」



中下の目が

元公安の鋭さに切り替わり、

目にも留まらぬ速さで

キーボードをタイピングする。


『――ファン、ファン、ファン……!』


と庁舎中に警告音が響き渡り、

システムに


【一課緊急】

捜査員襲撃事案・初動捜査開始

現場臨場員:二階堂 愛美 巡査部長

/ 谷原 凌 警部補


の名前が登録された。


執務室内の刑事たちが

一斉に顔を跳ね上げる。

画面に刻まれた

『二階堂愛美』のフルネームを見て、


「おい、二階堂って、

あの本庁(警察庁)の……」


と、周囲の刑事たちが

ざわつき始めた、

まさにその瞬間。


映し出されている

現場の映像が揺れた。


 「主任、愛美がっ!」


 「動いちゃいました?」


 「はい、

  谷原くんが連れていかれた

  スタッフ専用出入口ですね」


呼吸を乱しながら、

愛美は

谷原の足取りが途絶えた

男性浴場の裏の

出入口にやって来た。


ドアから少し離れたところの

雪の上に

血の滴った痕を見つけた。


挿絵(By みてみん)


 「こんなところに血痕が……っ!?」



愛美の心臓が、

ドクンと大きく跳ねた。


視界が白く霞む吹雪の中、

雪の上に点々と続く赤黒い痕跡が、

残酷なほど鮮明に浮かび上がっている。


だが、その瞬間、

彼女の瞳から

「エリート娘」の甘さは消え失せた。


首から下げた

スマホのスピーカーからは、

『待て、愛美! 勝手に動くな、

聞こえてるか? 愛美!』という、

佳祐の怒号に近い制止の声が

割れた音で漏れ聞こえてくる。


(谷先輩を、死なせたりしない……!)


愛美はその声を振り切るように、

震える指で

スマホの通話終了ボタンを

無造作にタップした。


静まり返った雪原に、

プツンと非情な切断音が響く。


吹き荒れそうな雪の中、

愛美は迷うことなく

血痕の先――白銀の地獄へと

足を踏み出した……




To be continued… case:8‐2

『現場』:七色の光を放つ山岳救助犬

さて、次回は……。

雪の上に見つけた血痕は

誰のものなのか?

そして、愛美はどうするのか?

今後の展開もドキドキ・ハラハラ

しちゃいますわよ……。

次回もどうぞお楽しみに ♥

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