第7章『聴取』2.勾留延長?
【前回までのあらすじ】 BBQ現場での潜入捜査中、愛美は薬物グループの主犯に襲われ、スタンガンで撃たれてプールへ転落。絶体絶命の危機を救ったのは、上司の佳祐だった。病院へ駆けつけた愛美の父・慶一(警察庁監察官)は、救護のための人工呼吸や、過去の「キス」を執拗に追及。佳祐は、愛美の父から「今夜、家に来い」と事実上の出頭命令を下されるのだった。
二階堂邸に到着した2人。
慶一から
連絡を受けていた響子が
2人を出迎えた。
「良かった、愛美ちゃん。
具合どう? 歩ける?」
「あ、うん、大丈夫。
ただいま……。
あ、響子さん、こちらが……」
「あ、どうも初めまして。
私、愛美さんのいる班で
主任を務めている
神谷佳祐と申します」
「あら、あなたが……
愛美ちゃんを……
この度は本当に
ありがとうございました、
大変助かりました。
そう……そうなの……
あなたがw 例の…………
“ゆるフワ好き”の……
上司さんねw アハハ!
さぁ、どうぞ、
お上がりくださいw」
愛美から
情報を得ていた響子は、
緊張している佳祐を見て
会話で和ませた。
そして、
スリッパを出して
佳祐をリビングに通した。
佳祐にはコーヒーを出し、
愛美には生姜入りの
手作り甘酒を渡して、
夕食の準備が
もう直ぐ済むことを告げると
響子はキッチンに戻った。
ダイニングに少しずつ
食事を運んでいると、
慶一が帰宅した。
「あっ、お疲れ様です。
お先に……お邪魔しています」
「おおっ、
響子さん、気を付けろよw
リビングに
不同意わいせつ罪の
被疑者がいるからなw
あ~、そうそう、
この間の純米大吟醸
出してもらえるかな?
着替えてくる……」
「はいはいw 用意しますね」
犯罪者扱いで
ネタにされている佳祐が
愛美に救いを求めるように
横目で見つめた。
愛美も
お手上げな表情であった。
「断らずに(うちに)
出頭するからですよw」
「断れねーだろ、
警察庁……監察官だぞっ!」
「(ざまぁ顔で佳祐を見ている)ww」
「…………終わったか? 俺……」
「ご愁傷様ですw」
「………………」
4人での食事が始まった。
慶一が
部下からもらった酒だ
と言って佳祐に勧める。
「数量限定の
極上の大吟醸だぞっ!
飲むか?」
「あっ、すみません……。
大変ありがたいんですが……」
「何だ、酒、ダメなのか?」
「いや、飲めなくはないですが……
お邪魔している間に
彼女の容態がもし
急変するようなことがあれば……
(病院に)
連れて行こうと思ってるんで……」
佳祐がハンドルを握る
ジェスチャーと共にそう伝えると
それを聞いた慶一が
酒瓶をドン!と置いて
佳祐に向かって突然言った。
「……うんっ、
お前、気に入った!
よしっ、娘の結婚相手になれ。
とりあえず、今夜
うちに泊まっていけよ!
それだけ気にかけて
心配してくれてるなら、
朝まで娘のこと見ろ。
……断れないよなぁ~w
この間の張り込みで
キスするフリでいいところを
本気でやりやがったんだからなぁw
まぁ、娘の命を
救ってくれた件に関しては、
そうだな……、
もっと出世したいなら
出来る限りの
協力をしてやろうじゃないか」
「……ちょっと待って、お父さん!
何言ってるの? そんな……」
「何だ?
何もおかしくないだろ。
これだけお前のこと
気遣っていて
気が無いわけないだろw
なっ、神谷佳祐!
惚れてるだろ? うちの娘に」
「ちょっとやめてよ。
……主任、すみません」
「なぁ神谷、婿になって
ここで愛美を
公私で警護しないか!?
家賃ゼロ、食事付き、昇進あり!
いずれはここの土地も家も
資産だって全部付いてくるぞ!
どうだ!?」
「お父さん、本当やめてって!
(愛美が言葉を失くし、
表情で佳祐に謝る素振り)」
慶一と愛美が
言い合っている中、
響子が
皆に聞こえるボリュームで
佳祐に話しかけた。
「んーん…………
上司が部下に権力使って
不当な逮捕・監禁・取調べに
無理矢理に政略結婚だから……
職権乱用罪と脅迫罪……
強要罪も付くのかしらね!?
じゃぁ……これで
慶一さんも立派な犯罪者ねw
監察官が監察される側に
回っちゃうなんて……
もうドラマよね、アハハ!
さぁ、佳祐さん、
もっと召し上がってね!
愛美ちゃん、お粥もあるから!」
秒で
警察庁と警視庁の対立を制止し、
不祥事疑惑の刑事のピンチさえも
同時に救った強者の
一般市民・響子であった。
食事が済み、
体調に問題が無いからと
愛美は響子の家事を
無理のない程度で手伝いながら
慶一の突拍子もない
発言の数々を
ずっと響子に愚痴っていた。
一方で、慶一は
話の続きをするため、
佳祐を暖炉の前に呼び寄せた。
とその時、
外で大きく風が吹いたためか、
大きな物音がして
愛美が異常な驚きを見せた。
慶一が片手で
シュチェルの体をなで、
酒をたしなみながら
佳祐に話しかけた。
「今……愛美の様子を見たか?」
「あ、はい。
今日ちょっと
風が強いですよね……」
「時々、ああやって
怯えるんだ……」
「彼女に……何か…………
あったんですか?」
「んん……」
慶一は、
大きな物音に
過剰な反応をする時がある
愛美について
『亡くなった妻の事故と
関係しているのでは?』と
考えていることを話した。
そして、
食事中に言い出した
『この家に住んで
愛美を警護しろ!』という
誘い話も冗談ではなく、
それが原因で言った
ということも付け加えた。
また
『妻の死が、実はただの
事故ではないかもしれない。
仕事柄、自分が恨まれている
可能性は捨てきれず、
娘の愛美も危ないのでは?
と懸念し、娘が付き合う相手を
ずっと見定めてきた。
君なら公私で娘を命懸けで
守ってくれるのではないか
と感じたからだ』と言い、
妻の件で未だ極秘に
調査も続けていることや
娘の不安を軽減させるために
考えた案だと打ち明けてきた。
そして、佳祐に関しては
既に徹底的に調べ上げていて、
身辺調査や
職務遂行能力なども調査済みで
『妻を亡くしてから
ずっと独り身で浮いた話も無い
仕事人間で誠実な人物』
であることも把握していた。
愛美との接点を作るために
警視庁から所轄へ
移動していた佳祐を連れ戻し、
愛美のいる部署へと
移動させるよう働きかけたのも
自分だと白状した。
「じゃ、今回の辞令は……」
「あぁ、そうだ、私だ。
これで分かっただろ?
本気だってことが。
断るなよ~~、この話w
こっちにはな……
張り込み中の車内カメラ
全方位のデータという
切り札があるんだw」
「えっっ? …………あっ!」
「中下実はな、元々……
私の専属
サイバー・デジタル人材でな。
君よりも私の方が、
彼とは長い付き合いなんだよw
信用できる婿候補を
ピックアップさせて
君を薦めてきた男こそが、
長年私が信用を置く中下だ。
驚いたか?」
「(みっ、みのるぅ)………………」
「まぁ、
未だ独り身のお前を
心配しての善意だから
彼を恨むなよw
……娘を気にかけてくれてる
ことも知れて安心したよ。
今夜、本当に
泊まっていってくれ。
で……もっと
娘との仲を深めてくれ。
そして、もし君が
悪い話じゃないと
思ってくれるのなら、
本気で娘との今後を
考えてみてくれないか?
無理を言っているのは
もちろん承知の上だ。
だが、私の一番の願いは、
とにかく娘が安心して
暮らせることなんだ。
君なら任せてもいいと思えたんだ。
……君も私と同じように
妻を亡くしている身だろ?
大切な人を亡くした者同士で
家族になるのはどうだ?
補い合えると思うぞ、色々。
過去に整理がついているなら、
真剣にうちの娘と生きる人生を
考えてみてくれないか?」
それは
契約に近い政略結婚
のような話でもあった。
おかしな契約・おかしな結婚
という無茶なお願いをする慶一。
娘を守る為なら何でもする父。
奇妙な話ではあるのだが、
既に愛美に
心を惹かれ始めていた佳祐は、
好意があることを
素直に慶一に打ち明けた。
そして、慶一が
何振り構わず愛美の恋を
潰してきたわけではない
ということが解ったため、
迷わず話を有難く受け止めた。
「事情は分かりました。
ただ…………無理矢理ではなく、
彼女がちゃんと
納得できる形にしたいです」
と愛美がこの政略結婚を
ちゃんと受け入れられるための
期間の要請と希望を伝えた。
それを聞いて尚更、慶一は
二人を結婚させたいと思った。
そして佳祐は、
愛美の母親の事故死の
不可解さを聞き、胸を打たれ、
調査も含めて慶一に
協力していくことにした。
酒を飲み干した慶一が
最後に佳祐へ言った。
「寝床だが……、
愛美の部屋で寝ろ!
生きる警備システムだな!
ハハハ。
まぁ、冗談はさて置き……
昼間のこともあるから
二次溺水による合併症が心配だ。
念のため、夜通し
娘に付き添ってやってくれ。
頼んだぞ!
特に唇の色を注視しろ。
お前の好きな唇をなw」
と最後まで嫌味を言って
佳祐に背を向け、
手で“おやすみ”の挨拶をして
自室に向かった。
To be continued…case:7-3
『聴取』許さざるを得ない脅迫
【作者より】
毎回作品だけでなく、
執筆する私自身も
日々様々なことに奮闘中で、
更新が遅れることもしばしば……。
それでもこうして
読みに来てくださる皆様、
本当にありがとうございます!
皆様の応援が、
愛美と佳祐の物語を紡ぐ
大きな力になっています。
さて、次回は
二階堂家での食事を終えて
佳祐は果たして
自宅に帰るのか(?)
それとも、
勾留延長となるのか!?
今後の展開も
気になりますわよ……。
次回も
どうぞお楽しみに ♥




