五話 結局、俺はヘタレです。
部屋の窓からは、いつも通りの朝日が差し込んでくる。なぜか今日は、ちゅんちゅんとスズメの鳴き声がよく聞こえる。
結局、昨晩はすべてが終わった後は眠ることができなかった。うとうとはするものの、初めてのことで興奮してしまったのだ。
レティシアも寝付けなかったようで、先ほどシャワーを浴びにいった。
思い切り背筋を伸ばすと、なんだかどっと疲れが出た。そういうものなのかなーと思い起き上がると、いつの間にか、部屋の扉の前にレティシアが立っていた。
汗だらけの麻のシャツは洗ったようだ。身に着けている少し大きめのシャツは俺のものだ。ズボンは高校指定の俺のジャージを履いている。男物の大きなシャツ一枚だけを身に着けている女の子。そんなのを期待したが、さすがに恥ずかしいらしい。
レティシアはなんだか、恨みがましい目をしながら床を踏み鳴らし、俺の前に座った。頬を膨らませる姿は可愛らしいと思ったが、不意に俺から目をそらすと、
「あそこまでヘタレだとは思いませんでした」
感情がない低い声色でそう言った。
レティシアが物凄い辛辣。
でも、昨晩のことは自分でも相当情けなかったと思う。
結局、俺はレティシアに新たな力を与えることはできなかった。
途中までは大丈夫だった。うん。でも、いざっ! って時には俺のアレはへたったままだったのだ。緊張しすぎてどうしようもなかったのだ。
途中、レティシアに「頑張ってください!」なんて言われた時には死んだほうがマシと思った。
でも、本当に途中までは頑張れたんだ。電気を消していたので、よく見えなかったが、俺の瞳の奥に焼き付いたレティシアの悩ましい肢体。触れるとしっとりと汗に濡れた弾む肌。それと控えめながら、形の良いおっぱ……。おっと、まずい。今になって俺の……。
「不浄です」
そう言いながら、レティシアが鞘から剣を抜いた。見つめるのは俺の股間。
「なんで昨晩にそれができなかったんですかあぁぁぁあ!」
レティシアは剣を上段に構えると、外のスズメが逃げ出してしまうくらい大声を出した。
「うひいいぃぃいい! ごめんなさいいいぃぃ! ほんっとうにヘタレですいません!」
もう平謝りするしかない。
「役に立たないのなら切ってしまいましょうか?」
レティシアの剣の先っぽが俺の股間に触れる。さげすんだ目線が俺の股間をとらえて離さない。あれ? なんだか積極的。
「ご、ご、ご、ごめんっ! 今後使うかもしれないので切らないでください」
妙な性癖に目覚めそうになりながらも、俺は必死に懇願した。
ふと、気が付くと、レティシアの口がだんだんとへの字になり、眉間にしわが寄ってくる。鼻を、すんと鳴らすと持っていた剣が床に落ちた。
「わ、私はそんなに魅力がないのですか……?」
あ、やばい。またぐずり出した。
「そんなことないって……! 凄い綺麗だったし……えっと」
「私……騎士の鍛錬で筋肉物凄いし、胸だって大きいほうじゃないし……」
レティシアは手で顔を覆い、ヒックヒックと嗚咽を漏らし始めた。
「オークにばっかり襲われて……ぐすっ」
ううう。困った。話を聞いてくれない。
「……ごめんなさい。ナオキ様。私ちょっと頭を冷やしてきますね。すぐ戻りますから」
そう言うとレティシアは静かに俺の部屋を出ていった。後に残るのは、沈黙のみ。
あぁ……。どうしよう。自分のヘタレさに涙が出てくる。
レティシアは確かに魅力的だった。でも、しょうがないじゃん! 童貞なんだから!
一階に降りていくと、丁度玄関の扉からレティシアが外へと出ていくところが見えた。ちょっと心配だったが、さすがに知らない土地では遠くには行かないだろうと思う。俺も風呂に入って頭を冷やそう。
服を脱いで風呂の扉を開けると、まだレティシアの入った後の湯気が浴室内に残っていた。
俺は水のシャワーを浴びて火照った体を冷やす。
「なんだよっ! もう!」
俺は下を向いたままのヘタレを叩いた。ヘタっていても痛いものは痛かった。




