22.聖魔大戦と魔王の鎧(よろい)の伝説
「……はぁ、はぁ……」
路地裏に転がり込む。
シルフィアとカイルは、同時に壁にもたれた。
「生きてるか……?」とシルフィアが聞く。
「なんとかな……」とカイルが答える。
しばらく沈黙。
遠くから、怒号が響く。
「……今頃は戒厳令だな」
カイルが呟く。
「帝都全域が対象だろう。完全に包囲される」
「派手にやりすぎたか」
シルフィアが答える。
「分かってたならやるな!!」
『今さらだな』
「うるせぇ……」
シルフィアは珍しく、天井を見上げたまま動かない。
「……届かなかったな」
ぽつりと漏れる。
カイルが一瞬、言葉に詰まる。
「……ああ」
「今のままじゃ無理だ」
拳を握る。
「大帝をぶっ飛ばすには、力が足りねぇ」
『ようやく理解したか。小娘』
「うるせぇ」
『むしろ遅いくらいでありんすな』
「よく分かったよ。今夜の戦いは無駄じゃねえ」
シルフィアはゆっくり立ち上がる。
「強くなる」
「……どうやってだ?」とカイルが怪訝そうに聞く。
「決まってる」
シルフィアが振り向く。
「回収だ」
「……は?」カイルが間の抜けた声をあげる。
『ほう』
エクリプスが低く笑う。
「魔王の鎧だ」
空気が変わる。
カイルが眉をひそめる。
「……あれか」
「知ってんのか?」
「ああ、有名だ」
息を吐く。
「千年前の聖魔大戦」
『我が全盛期だな』
『その言い方』
セラフィクスがツッコむ
「魔王エクリプス対五族連合軍」
カイルが指を折る。
「人族、獣人族、エルフ族、ヴァンパイア族、天使族」
「それ全部相手にしたのか?」
シルフィアが聞く。
「した」とカイル。
『した』とエクリプス。
『したでありんす』とセラフィクス。
「……バカじゃねぇのか?」
シルフィアが呆れる。
『勝てたと思っていたからな』
「思うな!!」
カイルが即ツッコむ。
「で、結果は?」
「辛勝だ」
カイルが答える。
「五族側のな」
「でも殺せなかった?」
「そうだ」
『当然だ』
エクリプスが鼻で笑う。
『我を殺せる存在など、この世におらぬ』
「でも、封印されたんだろ」
『ぐっ』エクリプスが答えにつまる。
『効いてるでありんすな』
『うるさい!!』
カイルが続ける。
「魂は剣に封じられた」
「それがこれか」
シルフィアがエクリプスをまじまじと見る。
『そうだ』
「で、鎧は?」
「五つに分けて管理された」
カイルが指を立てる。
「剣は人族」
「今ここだな」シルフィアが声をはさむ。
カイルは指を立てながら続ける。
「腕部は獣人族」
「胴部はエルフ族」
「脚部はヴァンパイア族」
「頭部は天使族」カイルが右手の指をすべて立てた。
「……面倒くせぇな」とシルフィア。
「五族協定だからな」
カイルが言う。
「再び魔王を復活させないためのな」
「でもよ」
シルフィアがにやりと笑う。
「集めりゃ復活するんだろ?」
沈黙。
『……するな。理屈の上ではな』とエクリプス。
「復活するのかよ!! ただの伝承ではないのか!!」
カイルは半信半疑だ。
『するでありんす』
「軽いな!?」
シルフィアはパシンと拳を鳴らす。
「決まりだな」
「何がだ」カイルが訊く。
「鎧、全部集める」シルフィアは、さらりと言ってのける。
カイルが頭を抱えた。
「待て」
「なんだ」
「それ、完全にアウトなやつだ」
「強くなれるんだろ?」シルフィアは深く考えていない。
「なれるが!!」
「じゃあいいだろ」
「よくない!! 魔王が復活するんだぞ!!」
カイルは嫌な予感がする。更なる厄介ごとの予感だ。
『ようやく気づいたか!我の力を使うのは当然だな』
「乗るな!!」
「でもよ」
シルフィアが真顔になる。
「今のままじゃ、あいつに勝てねぇ」
「……」
カイルは黙る。それは事実だったからだ。
「だったらやるしかねぇだろ」
シルフィアは静かに言い切る。
「力を集める」
「……はぁ」
カイルは天を仰いだ。
「なんでこうなる……」
「運が悪いな」シルフィアは、シレッと言う。
「全部お前のせいだ!!」
『正論だな』
「否定しろ!!」
その時。
『そういえば』
セラフィクスがぽつりと言った。
『聖魔大戦の起こった理由、知っておりんすか?』
「理由?」
シルフィアが首をかしげる。
「世界征服とかじゃねぇのか?」
『当然だ。世界を正すための聖戦であったのだ』
エクリプスが即答する。
『違うでありんす』
「は?」カイルも顔を上げる。
「……違うのか?」
セラフィクスがくすりと笑う。
『簡単でありんす』
一拍。
『エクリプスが、わっちにカッコいいところ、見せたかっただけでありんす』
沈黙が場を一瞬、支配する。
「……は?」シルフィアが固まる。
「……え?」カイルも止まる。
『……』エクリプスだけが沈黙した。
「「え?」」シルフィアとカイルの声がかぶる。
『それだけでありんす』
「それだけぇ!?」カイルが叫ぶ。
「五族巻き込んだ戦争の理由がそれか!?」
『青春でありんすなぁ』
「スケールがおかしい!!」
シルフィアがエクリプスを見る。
「……マジか?」
『……』
「おい」
『……』
「おい!!」
『うるさい!!』
エクリプスが叫んだ。
『若気の至りだ!!それに理由は他にもあったのだ!!』
「若気で済むか!!他の理由ってなんだよ!!」
『知らなくてもいいことだ!!』
『千年単位で迷惑でありんす』
「ほんとそれだ!!」とカイルが同意する。
シルフィアはしばらく黙ったあと。
「……まあいい」
「よくないだろ!!」
「強ぇならなんでもいい」
「基準が雑すぎる!!」
シルフィアは立ち上がる。
「行くぞ」
「どこにだ」
「鎧集めだ」にやりと笑う。
「魔王だろうがなんだろうが、使えるもんは使う」
『いい心がけだ』
「乗るな!! 俺の人生がまた壊れる……」カイルが頭を抱える。
それでも。
歩き出すしかなかった。
「次はどこだ」
「知らねぇ」
「調べろ!!」
『行き当たりばったりだな』
『いつも通りでありんす』
夜の帝都。
戒厳令の中。二人と二振りは、新たな目的へと動き出した。
読んでいただき、ありがとうございます!!
「面白かった!」
「続きが気になる!」という方は、
ぜひ評価をお願い致します。星ひとつでも構いません。お気持ちだけで結構です。
ついでにブックマークをして頂ければ、とても嬉しいです。
では、次回も、お会いしましょう!




