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師匠が最強すぎる  作者: 不病真人


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第四話 雑役弟子六十七名

「第一試験根骨測定を開始する」


 老人の声が、広場の隅々まで響き渡った。

老人がそこまで声を響かせられるかと思いなくもない、私の前世もあるが。

(皺くちゃ爺ちゃんではないからな、お肌も綺麗だし)


 「では来なさい。あの高台へ」


 その瞬間、広場に集まっていた少年少女たちの間から、わずかに緊張が広がった。

多分広がった、だって私も、少しだけ背筋を伸ばしてる、それだけでわかるよ、私は緊張している。

当然だ。さっきまでに考えて気を紛らしてもやはり無理だ。


 根骨測定一つだけ聞けばもはや身体測定とすぐわかるだろう。という事は今眼前にあるこの霊石も、いや何かの装置か。


 「は、はい!」

一人の少年が答えていう。

 彼が霊石へ手を置くと光が何色に輝くかを見る。


 はい、あなたは火霊根です。あなたは水霊根です。あなたは凡人です。

という、いつもの測定か。

いや違う


 しかしだ、広場の中央へ運び込まれたのは、青雲村で見た霊石とはまったく別のものだった。


 高さは二丈を超えている。

巨大な柱状の結晶で表面には無数の細かな文字と紋様が刻まれており、内部には青白い光がゆっくりと流れている。


 周囲には、大小様々な石板や測定器具まで並べられていた。


 【大型霊脈接続型装置】

(大型なんとか...その呼び方ずいぶんと無粋でありますわ)

 【霊根、肉体強度、経脈適性、霊気親和性、神魂耐性などを測定可能】


(……思ってたより本格的だな。)


 【補足】


 【単純な霊根の優劣のみで、修仙者の未来が決まるわけではありません】


(まあ、そりゃそうだよな。)


 極品霊根を持っていても身体が弱ければ、修行の途中で死ぬ。


 霊気を吸収できても経脈が壊れれば終わり。


 そして肉体が強くても悟性がなければ功法を理解できない。たとえ今は使わなかったり、測られないとしてもいつかは目にする。

(そう、修練とは、天才の一つだけでは登り詰められない、なんでかって言われると)

たとえ全部揃えることになっていても詰むときは詰む。どれだけ才能があっても、性格が悪すぎれば師匠に見捨てられる可能性だってある。

そして世間的良くてもダメな事だってある、師匠が邪悪な場合はそうだ。


 つまり、人間、一つの才能だけではどうにもならない。まあ、私は一つだけのアルケミストがいるけし、それ頼りに....


 (いや、今のは聞かなかったことにして。)


 【承知しました】


(いや、聞いてるじゃん。)


 こうとやかくしているうち試験はすでに始まっていた。

最初に一人の少年が、測定台の前で。


 「手を置いておけ。」


 少年が霊石へ手をそのままに置く。


 青い光が淡く輝いた。


 「下品残霊根、体に不適合、次。」


 記録係が淡々と書き込む。


 次の少女。


 「中品、妙豊根、蜃宝体か。」

(なるほど、確かに村より多いものが図られているが)


 【特殊体質も図られています】

(そうか、しかしすぐ返答はいいが推理の醍醐味が)

 「それは非合理的すぎ】

(ごめんなんでもない)【謝罪は】

(ちょ、静かに)

 


 結果が出るたびに、周囲から小さなどよめきが起きるが、霊根など私より上は当然になくただ列の後ろでぼんやりと眺めていた。正確的にはアルケミストとの口喧嘩に集中して外から見れば、呆然しているというだろう。


 しかし


 長い。


 とにかく長い。


 前世の会社の朝礼、なんなら学校での校長の話を思い出す。


 誰も聞いていないのに、偉い人が延々と話すあれだ。いや、しかしアルケミストが常日頃に話しているのもあるから、そこまで苦じゃないか。


(いや、これ、途中で休憩とかないのかな。)


 【現在、28人目です】


(数えなくていいよ。)


 【残り67人です】


(聞いてないって。いや案外少ないな。)


 そんなことを考えていると、次の少年が前へ出た。


 顔だけ見れば10歳か、11歳ほど。


 しかし大きな身体をしている、同年代の子供たちどころか、何の大人より頭一つ以上高く、肩幅も広い。しかも腕にはすでにぎっしり筋肉がついており、立っているだけで鍛錬を積んでいることが分かった。


 服装も普通の子供とは違う、黒い短衣に革の腕当て。腰には刀か、環首刀の形に見える。

(しかし、さっきは青年だと思っていたが実際に顔を見ると幼いな。体格、そして服装もそうだが、やはり超常現象が偏在しているから前世の古代とは雰囲気が似てるだけで他は別も)

【特殊】

(うん、今度から質問時だけ返事して、今考えている。)


「ん?」

 彼が測定台へ立つと、試験官の一人がほんの少しだけ眉を動かした。


 その反応を見て、私はそちらへ目を向ける。


 (知り合いなのかな。)


 しかし少年は気づいていない、いや、気づいているかもしれないが、気にしていないのかまっすぐ前だけを見ていた。


 「手を置け。」

 (何かの裏が、それとも資質がいいか見せてもらうぞ)

 少年が霊石へ手を置くと青い光が広がる。


 次の瞬間、少年の足元に、淡い光の輪が浮かび上がった。そこまでは今まで通りであった。


 「測定開始。」


 霊気が少年の身体を走る。全身だった肩に腕をかけては胸から腰へと最後には脚元に戻り全身を光が一周していく。


 「ん?」

少年の身体がわずかに震えた。


 ……いや。震えたように見えた。今までにない反応に私は目を細める。


(今のは……。)


 【対象の身体能力を検知

  肉体強度:測定中

  内部の刺激を確認

  対象、意図的に身体へ力を込めています】


(あ。)


 私は少しだけ笑った。

(また勝手に喋り出してる〜)

 アルケミストの暴走は置いて、なるほど。


 なるほどというのも少し理解していた、数年霊気に触れてたおかげだが、この根骨測定は、ただ立っているだけではない。測定中、身体へ霊気が流れ込み、肉体の反応を操作できる。


 測定の間に、筋肉やら霊気の動作へ力を込めたり、呼吸を調整したり、痛みに耐えたりすれば、多少の数値を誤魔化すことができる。


 もちろん、普通なら気づかない。


 しかし私は練気9層だ

(いや待てよと..私が気付けるなら、見ているあのお爺さんも...いやこの操作も測定の一つかもしれない...)


 そうして見ると少年は、身体をわずかに固めていた。

筋肉の動き呼吸霊気の流れ。

全てを調整している。

だが、やり方が少しだけ不自然だった。

(隠しているな、明らかにぎこちない)


 彼は自分がうまく隠せていると思っているらしい。

私でも気がつくならば試験官は当然気づいている。

だが止めない、止める必要がないからだ。


 これもまた、試験の一部なのだろう。

能力を隠す者。

自分を大きく見せる者。

逆に、実力を隠して低く見せる者。

それを見抜くのも、能力の一部かもしれない。


 (しかし面倒事は避けたいものだから)

 私の番までは、まだしばらくあるしなるべく面倒事にはしたくない、こちらの番になったとき邪魔されたらたまらない。


「ん?」

 何かに思って私はアルケミストへ意識を向けた。

(彼、どれくらい隠してる?)


 【推定肉体強度:同レベル平均の約3.1倍。】

(じゃあ、私がちょっとだけ手伝ってあげよう。)


 【推奨されません先ほどの貴方の推理からして】


(なんで?)


 【他者への干渉はこちらの輪番時に】


(干渉じゃないよ、ただ...)

 【定義が不明です】


 ゆっくりとまるで立ちすぎて痺れた足をほぐすように踏み出した。その場で、足踏みをした

ほんの少しだけ霊気を動かした。


 練気9層。この歳にしては、すでに異常な領域へ達している。だが、私はそれを長年隠してきた。

ならば当然誰しも気がつけるわけではなくて、ましてやどう見ても私よりは弱いここの少年少女たちよ。

しかし一人おイタをする子がいること。


 形もない、エネルギーでもない、そんな特殊な霊気の流れを細く、薄く。

まるで風が一度吹いただけのように。

そうして、少年の足元へ流れていた測定用の霊気へ、ほんのわずかに触れた。

彼を邪魔しようとするもう一人のものへと


 


 「……っ。」

わずかな反応。

ほんの一瞬少年の身体が、ぴくりと動いた。

少年の身体が反射的に力を込めたのだ。


 当然だ。


 自分が隠していたはずの肉体へ、予想外の刺激が走ったのだから。霊気が


 その結果当然測定装置が反応した。

(翼が長き鷲は喙を隠すと言うが、そう中途半端に力を見せられると流石に嫌なことよ)

 「……?」と試験官が明らかに不機嫌そうだ


 霊石の光が一瞬だけ強まって少年の身体能力が、先ほどより正確に測定される。力や技を駆使して自分を強く見せては、その裏を見せないと言う、そんな少年の目的も少しは砕けたか。


 「雑役弟子...」


 周囲がざわめいた。


 少年が目を見開く。


 「……え?」


 悪趣味だな

「ではない、次は外門試験を始めよう、しばらく休息するといい」

明らかに困惑している。

無理もないか。


 「は、承知」


 「それと名を」

爺さんはそう言いながらも、明らかに気配をこちらに向けている。言葉の先の少年ではなく

 私は当然何も知らない顔で通いる。


 (ごめんね。しかし、隠し方がちょっと雑だったものだ...しかし彼はなかなかの実力なのに気がつかない...何か特殊な霊気の扱い方だったな。)


「名を楚昊(ツウ・ハオ)」と少年はこちらが考えている間に答えを出した、試験官へ

 結果を得て試験官は何も言わなかった。

当然だ、彼らは最初から少年やその周りの行動を把握している。

ただ、測定の過程でどのように反応するかも試験だったのだ、とでも言うべきか。


 そして。 少年本人だけが、気づいていない。

少し可哀想だったし、この際善縁を組むべしだな

だから。もう一度だけ。


 少年の横を通り過ぎる時、私は小さく囁いた。


 「……力を抜いた方がいいと思いますよ。」


 少年が振り返る、ここはすかさずこちらがやっとことをなんとなく伝えるように、つまり善意を伝えねば


 「何?」


 私は笑顔を浮かべた。


 「何でもありません。」


 そして、そのまま歩いていった。

(嫌味たらしくを止めるもこれもまた愉悦)


 

 「李清雪。」


 私の名前が呼ばれいよいよ私の番だった。

測定台の前へ立つと巨大な霊石が自然の光を隠すほどのもの


 青雲村で見たものとは違う。


 これほど巨大な霊石なら、今の私が隠しているものも、かなり正確に見抜かれるだろう。


(うん、先ほどの少年、楚昊からはいい提示を得た、この際だ。隠せないとなれば、むしろ一部を見せて、強さを見せよ、そうすればすくなくとも表の敵は減るはずだ)


楚昊がした事を真似る、つまり霊気の操作により己を強く見せること。

世間大抵が己のうちの力を1割出しているとすれば、霊気を練り上げたものは、その10割。

しかし霊気操作によればその倍だって夢ではない。

前世のゲームのうちでもそうだった。

 “兵解法”そいつがそれだ。もっとも有名な一つの功法


もっともそれはあくまでもゲームで見ただけで、原理はわからない

 しかし私はこれまで、ずっと霊気を隠してきた、ならば反転させてやればいいじゃないか。

そしてありがとう少年、楚昊くんよ、君のおかげだ。


 「ん?」とでも言いたげにこちらが視線を配ると、不思議な顔で見返してくる楚昊であった。

(気づいてはいないが、興味はひけたか...面倒ごとにならないと言いが)

 

思うことはいろいろあるが私が手をかざした瞬間、世界が青く染まったように眼前は変わった。


 景色の変化に伴うものはゴォォォォォンとするような轟音


 巨大な霊石が震えるた、震えたのだ、広場の霊気が、一斉に私へ吸い寄せられていったからだ


 「……っ!?」


 「何だ!?」


 「霊石が……!」


少年少女のざわつく声

 光がますます広がる。


 

 霊気が渦を巻く、私の髪が風に揺れるほど

(法術..?!)


 何かの刻印にでも触れたのだろうか、霊気はこれほどまでに現象を引き起こし


 只々と広場はすでに静まり返っている、私が起こした現象を除いて


 誰しも、私を見ていた。


 そしてゆっくりと口を開く。


 「極品青霊根。」


 その声に、広場がざわめいた。


 「極品!?」


 「今年はどうなっているんだ!?」


 「青霊根だと!?」


 「いや。」


 「この数値は……。」


 公孫羅が、一歩前へ出た。


「無量慈悲、彼女を、師伯は白真人の弟子になるものゆえ」


 「な、あの白真人...?!」


「紛れもなく、玄天七仙の白真人こと、白古月なり」


 「なっ...」


 「下がれ、師叔よ、それは本当でしょうか」

試験官の老人が公孫羅に言う。


 「我を疑うか。」


 「い、いえ...しかし」


 「下がれ。これを見た上師妹はこれ以上」


 「公孫大人(様)、失礼します。私より一ついいでしょうか。」


 「....師妹よ好きに言うといい。我も師兄と呼んでいいぞ」


 「私はまだ次の三つの試験を受けたく存じ上げます。」


 「蕭潮....!そのせいか」


 「公孫師兄、これは私が意です!」


そうして、なんとかして争いごとを起こさないようにして頑張ったが、あの後もいくつかこんなふうにくだらない言葉は繰り返された。

(まぁ、あらごとだが、一応危険もないし、とにかくつまらなかったな、公正公平が気になるのが蕭潮...あの爺さんか。いろいろわかってきた)



 「では、試験を再開する、二十八人は正式に試験を受けよ、残り六十七人は雑役弟子とする。」


 「なっ!」


 「なにぃ!?」  「しかし」


 「控えよ!」

そう言って蕭潮は手を振っては騒いでいた67人をどこかへやった

(しかしやはりと言うべきか。まだまだ正式な試験ではなかった...か)

古来より科挙然り、試験然り、一日や一回で終わらないことが多いのは承知、しかし第一試験から数パート、それは予想外にならずして何か。


 

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