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偽聖女は、不要とされた  作者: ゆめ@マンドラゴラ


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3/3

後編

 流れついたのは、小さな教会だった。


 古びた木椅子。

 ひび割れた壁。

 決して豊かではない。


「助かったよ」

「ありがとうね」


 その言葉に少女は小さく頭を下げる。

 ここには少女が聖女候補だったと知る者はいない。


 誰も少女の名前を知らない。

 過去も知らない、尋ねない。


 何も言わずに受け入れてくれた年老いたシスターと、静かに繰り返す日々。


「……」


 両手を組んで祈っても、何も起きない。


 国を出た時から少しずつ弱くなった聖女の力。

 最初は小さな違和感だった。


 祈っても、以前ほど光が強くない。

 小さな傷を癒やすだけで、酷く疲れる。


 国境を越えて遠く離れるほど、神の気配が薄れていくようだった。

 それでも少女は振り返らなかった。


 そしてある日。


 ぷつりと糸が切れるように、光は完全に消えた。

 今はもう、祈っても光は零れなかった。

 二度と誰かを救うことはできない。


 近所の老婆が、掃除をしていた少女へ声を掛ける。


「これ運べるかい?」

「……はい」


 それだけだった。


 祈りも奇跡も求められない。

 誰も少女を特別扱いしない。


「最近、よく笑うようになったね」

「ここでは、誰も比べないから」

「?」

「いいえ、なんでもありません」


 ここには何もない。

 聖女としての栄光も、眩しすぎるあの人も……。


 ようやく、息ができた。



 机に並べられているのは、「問題ありません」と繰り返し綴られた報告書。

 消えることを許してほしいと書かれた手紙。


 そして――派遣された大切な聖女を見失ったことに対する、辺境伯の謝罪もそこにあった。


「追いますか」


 神官の問いに、リュシエンヌは静かに首を横へ振った。


「神の力を失った者のために、国境を侵してまで兵を派遣できません」


 聖女の力は国を守護するための力。

 国から離れれば自然と力を失う。


 同時に、試練で手に入れた知識も本人が知らない間に消えていく。

 消えたことすら気付かないのはきっと神の慈悲だろう。


『力を手放して、安心していたよ』

「……そうですか」


 リュシエンヌは静かに目を伏せた。


「どうか、あの方の心が穏やかでありますように」


 祈りの光が部屋に満ちる。

 だがその光が彼女に届く日は来ない。




 彼女は不要とされた。


 ――誰に?


 己自身に。


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― 新着の感想 ―
うーん、自分のことばっかやなぁと感じました。ある意味自意識過剰なのかな。でも息ができなきゃ潰れちゃうんで、逃げも否定しないし、主人公が楽に息ができるようになったことは良かったと思います。せめて誰かに相…
言い方が悪いけれど、医療従事者が仕事バックレて蒸発したということですよね。他人と比べられたくない、でも本当は他人に認められたいという、何だか終始自分のことしか考えていない子だったなーと思いました。 …
他人は誰も比べて非難なんてしてないけど、自分がしちゃったらどうしようもない。 彼女のこの性質を作ったのは両親なんだろうな。彼らが娘を愛してたかは分かりませんが、聖女の座と一緒に聖女であれと期待をかけ…
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