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THE BORDER 〜AI小説の定義〜 副題 実践型AI小説の見抜き方  作者: ヤーコ


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4/5

 昼下がりの陽光が、白い石畳へ柔らかく降り注いでいた。


 王立アルヴェイン貴族学院。

 その中庭の東屋では、一組の男女が人目も憚らず語り合っている。


「カーラ、君は気にしすぎだ」

「ですが……わたくし、本当に皆様に避けられていて……」

「くだらない嫉妬だろう。平民から男爵家へ迎えられた君が珍しいだけだ」


 ルーク・エスハルト伯爵次男は、安心させるようにカーラの肩を抱いた。


 カーラ・ミレーユ男爵令嬢。

 三ヶ月前、功績を上げた商会主の養女となり、貴族籍を得た少女である。


 学院では注目の的だった。


 平民出身でありながら愛らしい容姿を持ち、さらに伯爵家の令息が熱心に庇護している。

 噂にならないはずがなかった。


「それに、何かあれば僕が守る」

「ルーク様……」


 二人の空気が甘く溶けかけた、その時だった。


「お取り込み中、失礼いたします」


 静かな声が割り込む。


 二人が振り返ると、石畳の向こうに一人の令嬢が立っていた。


 銀灰色の髪を緩やかに結い上げた少女。

 アリアベル・フォン・ユスティーナ侯爵令嬢。


 そして、ルークの婚約者でもある。


 カーラの肩が震えた。


「ひっ……」

「アリアベル。カーラに近づくな」


 ルークは立ち上がり、カーラを庇うように前へ出る。


「また嫌がらせをするつもりか」

「嫌がらせ?」


 アリアベルは小さく首を傾げた。


「そのような暇はありませんわ。わたくしは忠告をしに来ただけです」

「忠告だと?」

「はい。カーラ・ミレーユ男爵令嬢の将来についての」


 カーラが不安げに目を見開く。


 アリアベルは感情の薄い声で続けた。


「男爵令嬢。あなた、最近同年代の令嬢方から茶会へ招かれておりませんね?」

「そ、それは……」

「当然です。あなたは既に“囲われた女性”として扱われ始めていますので」


 ルークが眉を吊り上げた。


「何を馬鹿な」

「馬鹿なのはあなたです、ルーク様」


 ぴしゃりと言い切られ、ルークの表情が固まる。


「本来、爵位を得たばかりの令嬢は、学院で同格の友人を作り、その親族や縁者との交流を通じて婚約相手を探します」

「だから何だ」

「婚約者持ちの男性が四六時中付きまとっていては、縁談の声など掛かりません」


 カーラの顔色が変わった。


「ま、待ってください……ルーク様はただ親切に……」

「親切で済む段階ではありません」


 アリアベルは容赦なく言葉を重ねる。


「周囲はすでに、“あなたが伯爵家次男の愛人候補になった”と認識しています」

「違っ……」

「違いませんわ。この国で、高位貴族の男性が若い未婚令嬢を囲う意味など、一つしかありませんもの」


 カーラの唇が震えた。


「そんな……わたくしは、ただ……」

「安心できる居場所が欲しかったのでしょうね」


 初めて、アリアベルの声にわずかな柔らかさが混じる。


「ですが貴族社会では、善意だけでは生きられません」


 ルークが苛立ったように舌打ちした。


「脅しか?」

「事実です」


 即答だった。


「すでに複数の家が、カーラ様への縁談打診を取り下げています。ミレーユ男爵も理由を探り始めている頃でしょう」

「……っ」


 カーラの呼吸が止まる。


「そしてルーク様。あなたにも処分が下ります」

「何?」

「伯爵家から、学院卒業後の役職推薦が白紙にされました」

「な……」


 ルークの顔から血の気が引いた。


「次男であるあなたには、本来、家名を広げるための政治的価値が求められていました。しかし未婚令嬢を潰したとなれば、話は別です」

「そんなことで……」

「“そんなこと”で、貴族は簡単に終わります」


 中庭に沈黙が落ちる。


 噴水の水音だけが静かに響いていた。


 アリアベルは二人を見つめ、静かに一礼する。


「以上です。あとはご自由になさってください」


 そのまま踵を返し、彼女は去っていく。


 残されたカーラは青ざめた顔で立ち尽くし、ルークは拳を震わせながら動けずにいた。


 もう誰も、先ほどまでの甘い空気を信じられなかった。


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