第2話 花屋なので、花市場は守ります
地下牢の階段を駆け上がると、外の光が目に刺さった。
久しぶりの地上だった。
といっても、地下牢にいたのは一晩だけだ。
それでも、暗く湿った場所から出ると、空の色がやけに明るく見えた。
けれど、王都は穏やかではなかった。
遠くで警鐘が鳴っている。
カン、カン、カン、カン。
人々の悲鳴。
走る足音。
騎士たちの怒号。
それから、獣のような低い唸り声。
花の匂いはしなかった。
代わりに、煙と土と、魔物の臭いがした。
「西門へ向かう」
レオンハルト様が短く命じた。
騎士たちがすぐに動き出す。
馬が引かれてきた。
大きな黒馬だ。
レオンハルト様が手綱を取り、私を振り返る。
「馬に乗れるか」
「乗ったことはありません」
「では、私の後ろに乗れ」
「でも」
「時間がない」
それは分かる。
分かるけれど、少し困った。
私は馬を見上げた。
馬は私を見下ろしている。
その目が、なんとなく嫌そうだった。
たぶん、この馬は賢い。
私を乗せると何か変なことが起きると、気づいているのかもしれない。
「走った方が早いと思います」
私がそう言うと、周囲の騎士たちが一斉にこちらを見た。
レオンハルト様も、わずかに眉を動かす。
「西門までか」
「はい」
「かなり距離がある」
「急ぎます」
「……君は本当に、どこまで普通ではないんだ」
「すみません」
「責めてはいない」
レオンハルト様は馬に乗った。
私はその横に立つ。
「行けるか」
「はい」
「なら、遅れるな」
「分かりました」
レオンハルト様が馬を走らせた。
騎士たちも続く。
私は石畳を蹴った。
体が前へ飛ぶ。
牢屋にいたせいで少し体が重い。
でも、朝ごはんを食べられたのはありがたかった。
たぶん、昨日よりは動ける。
「なっ……!」
後ろで誰かが声を上げた。
気にしない。
西門へ向かう。
今はそれだけだ。
通りには避難する人々がいた。
荷物を抱えた商人。
泣く子ども。
転びそうになる老人。
私は走りながら、倒れかけた荷車を片手で支えた。
「大丈夫ですか」
「あ、ああ……」
「東の広場の方へ逃げてください。騎士団の方が誘導しています」
「お、お前は……」
「通ります」
私はまた走った。
後ろから、レオンハルト様の声が飛ぶ。
「避難路を開けろ! 東の広場へ誘導しろ!」
騎士たちが散っていく。
すごい。
レオンハルト様は、ただ剣が強いだけの人ではないらしい。
誰をどこへ動かすか、すぐに決めている。
私はそういうことが苦手だ。
目の前にあるものを持ち上げたり、押したり、放り投げたりする方が分かりやすい。
西門に近づくにつれ、悲鳴が大きくなった。
そして、花の匂いがした。
西門前の広場。
そこには、王都の花市場がある。
朝に仕入れられた花が並び、王都中の花屋や庭師が集まる場所だ。
昨日までは、私もよく来ていた。
今は、花籠が倒れ、荷車がひっくり返り、白や黄色や赤の花が石畳に散っている。
その向こうに、魔物の群れがいた。
狼に似たもの。
猪のようなもの。
黒い角を持つ大きな獣。
数は、たしかに多い。
三十どころではないかもしれない。
騎士たちは防戦していた。
けれど、魔物は西門の外から次々に押し寄せてくる。
避難はまだ終わっていない。
市場の端で、見覚えのある人影が荷車を押していた。
丸い背中。
灰色の髪。
古びた前掛け。
「ロゼッタさん!」
私は叫んだ。
ロゼッタさんが振り返る。
その顔は青ざめていた。
「ミリアちゃん!?」
よかった。
生きている。
でも、逃げていない。
ロゼッタさんは花を積んだ荷車を必死に押していた。
「花は置いて逃げてください!」
「馬鹿言うんじゃないよ!」
ロゼッタさんが怒鳴り返した。
「これを失ったら、店が終わるんだよ!」
その言葉に、胸が痛んだ。
分かる。
痛いほど分かる。
ロゼッタ花店は、本当にぎりぎりだった。
今日の仕入れを失えば、明日売る花がない。
明日売る花がなければ、店は続かない。
でも。
「命の方が大事です!」
「それも分かってるよ!」
ロゼッタさんの声が震えていた。
その時、黒い猪のような魔物が、ロゼッタさんの方へ突進した。
荷車も、ロゼッタさんも、その先にいる。
私は走った。
石畳が足元で割れる。
レオンハルト様が叫んだ。
「ミリア!」
間に合う。
私はロゼッタさんと荷車の前に立った。
魔物の突進が来る。
私は両手を出して、その角をつかんだ。
どん、と体に衝撃が来た。
足元の石畳が沈む。
でも、止まった。
魔物が驚いたように目を見開く。
私も少し驚いた。
馬車より、動きが荒い。
けれど、止められないほどではない。
「すみません」
私は魔物の角をつかんだまま言った。
「ここは花市場なので、暴れないでください」
魔物は答えない。
当然だ。
私は腰を落とし、そのまま魔物を持ち上げた。
周囲が静まり返る。
重い。
かなり重い。
でも、持てる。
「外に出します」
私は魔物を西門の外へ放った。
黒い大きな体が空を飛ぶ。
西門の外で、どすん、と音がした。
ロゼッタさんが口を開けていた。
「ミリアちゃん……あんた……」
「話はあとでお願いします」
私は倒れた花籠を見た。
花が踏まれそうになっている。
魔物は怖い。
でも、花を踏まれるのはもっと嫌だった。
私は前へ出た。
「レオンハルト様!」
「何だ!」
「人を逃がしてください!」
「君はどうする!」
「魔物を外に出すことはできます!」
「外に?」
「すみません、私は血を見るのが苦手で……」
「外になら出せるのか!」
「たぶん、大丈夫です!」
「その、たぶんは信用していいのか!」
「はい!」
レオンハルト様は一瞬だけ黙った。
それから、剣を振って騎士たちに命じた。
「全員、避難誘導を優先しろ! 魔物はミリアが止める! 我々は人を逃がす!」
「副団長!?」
「命令だ!」
騎士たちが動いた。
迷っていた人々が、東側の通りへ誘導されていく。
レオンハルト様は前線に残り、騎士たちを指揮しながら、私の横に並んだ。
「私は退路を作る。君は魔物を西門の外へ戻せ」
「分かりました」
「君は殺さなくてよい。だが、王都へは入れるな」
「はい」
それなら分かりやすい。
入ってくるものを、外へ出す。
花屋の仕事で言えば、店先に入り込んだ虫を外へ逃がすようなものだ。
少し大きいだけで。
いや、かなり大きい。
私は近くにいた狼型の魔物へ走った。
つかむ。
放る。
つかむ。
放る。
つかむ。
放る。
西門の外に、魔物がどんどん積み上がっていく。
殺してはいない。
たぶん。
外は草地だし、魔物は丈夫そうだ。
たぶん大丈夫。
「ぎゃうっ!」
「ぐるっ!」
「ぎゃん!」
大丈夫そうな声ではないかもしれない。
でも、王都の人たちを襲うよりはいい。
花市場の中央で、巨大な角のある魔物が吠えた。
他の魔物よりも二回り大きい。
地面を蹴るたび、石畳が割れる。
その先には、避難中の人たちがいる。
レオンハルト様が剣を構えた。
「私が足止めする!」
「危ないです!」
「君は他を――」
言い終わる前に、魔物が突っ込んだ。
速い。
レオンハルト様は横へ避けながら、剣で角を受け流した。
金属が軋むような音が響く。
すごい。
普通の人なら、今ので飛ばされている。
でも、レオンハルト様は踏みとどまった。
ただ、完全には止めきれない。
魔物がさらに前へ進む。
私は横から飛び込んだ。
魔物の胴を両腕で抱える。
「すみません、少し止まってください」
止まらない。
仕方ない。
私はそのまま足を踏ん張った。
石畳がめきめきと沈む。
魔物の体が前へ進もうとする。
私は反対に押し返す。
「ミリア!」
レオンハルト様の声。
「平気です!」
本当は少し重い。
でも、平気だ。
ロゼッタさんがいる。
花市場がある。
逃げ遅れた人がいる。
なら、止める。
「ここから先は、通さないです」
私は魔物の体を持ち上げた。
さすがに大きい。
視界が魔物でいっぱいになる。
周囲から悲鳴のような声が上がった。
「おい、持ち上げたぞ!」
「人間か、あれは!?」
「危ない、下がれ!」
まずい。
また見られている。
でも、今さら下ろせない。
私は西門の外を見た。
門の向こうには、他の魔物の山がある。
あそこへ置けばいい。
放ると危ないかもしれないので、今度は少し低めに投げる。
低め。
優しく。
できるだけ優しく。
「えい」
巨大な魔物が西門の外へ飛んだ。
やっぱり少し高く飛んだ。
でも、さっきよりは低い。
たぶん。
魔物は外の草地に落ち、何体かの魔物を巻き込んで転がった。
西門の外で、魔物の山が少し大きくなった。
私は息を吐いた。
「これで、だいたい――」
その時、門の脇の石壁が崩れた。
魔物の体当たりでひびが入っていたらしい。
崩れた石が、市場の屋台へ落ちる。
その下には、花籠を抱えた少女がいた。
避難し遅れている。
私は走った。
間に合う。
でも、少女を押し出すだけでは、石が花市場を潰す。
私は両手を上げた。
落ちてきた石を受け止める。
重い。
馬車より重い。
さっきの魔物よりも、たぶん重い。
腕に力が入る。
足元が沈む。
でも、止めた。
少女が下で震えている。
「大丈夫ですか」
「は、はい……」
「花籠を持って逃げられますか」
「え?」
「その花、つぶれていないので」
少女は泣きそうな顔でうなずいた。
走って逃げていく。
よかった。
私は受け止めた石を見上げる。
これは、どこに置けばいいのだろう。
さすがに花市場の真ん中に置くわけにはいかない。
「ミリア、右だ!」
レオンハルト様が叫んだ。
右を見ると、また魔物が入り込もうとしていた。
私は石を抱えたまま、西門の外へ向き直った。
「すみません。これも外に出します」
石を投げた。
魔物たちの前に落ちる。
どごん、と地面が揺れた。
魔物たちは足を止めた。
ちょうど、石が西門の外で壁のようになっている。
「あ」
これは使える。
私は崩れた石をいくつか拾い、西門の外へ積んだ。
一つ。
二つ。
三つ。
即席の石壁ができていく。
魔物たちが入ってこられなくなる。
騎士たちが呆然としていた。
レオンハルト様だけが、すぐに声を上げた。
「弓兵、石壁の上を狙え! 門の内側へ魔物を入れるな! 避難誘導を続けろ!」
騎士たちが我に返って動き出す。
やっぱり、レオンハルト様はすごい。
私が雑に積んだ石まで、すぐに使う。
その後は早かった。
私は入ってきた魔物を外へ戻す。
レオンハルト様たちは逃げ遅れた人を助ける。
騎士たちが石壁の隙間を守る。
気づけば、西門の中に魔物はいなくなっていた。
外には魔物の山。
中には散らばった花。
そして、呆然とした人々。
私は服についた土を払った。
手のひらには、石の粉がついている。
また汚してしまった。
花屋の仕事の前なら、ちゃんと洗わないといけない。
「ミリアちゃん!」
ロゼッタさんが駆け寄ってきた。
私は顔を上げる。
「ロゼッタさん、無事で――」
最後まで言えなかった。
ロゼッタさんに抱きしめられたからだ。
ぎゅう、と強く。
「この馬鹿!」
「す、すみません」
「謝るんじゃないよ! 無事でよかったって言ってるんだよ!」
「あ、はい」
ロゼッタさんの声は震えていた。
「牢屋に入れられたって聞いて、どうしようかと思ったよ」
「ご心配をおかけしました」
「心配どころじゃないよ! あんた、ちゃんと食べてたのかい?」
「今朝はパンをもらいました」
「それだけかい!」
「スープもありました」
「そういう問題じゃないよ!」
ロゼッタさんは怒っている。
でも、少し泣いていた。
私は何も言えなくなった。
花屋に戻りたい。
そう思った。
この人のところに戻りたい。
けれど、周囲の空気は複雑だった。
助けられた人たちは、私を見ていた。
感謝している顔。
驚いている顔。
怖がっている顔。
昨日と同じだ。
私はまた、普通ではないところを見せてしまった。
今度は馬車どころではない。
魔物を投げた。
石壁を作った。
鎖も切った。
これで花屋に戻れるのだろうか。
不安になった時、レオンハルト様が歩いてきた。
剣は抜いたままだったが、刃先は下げている。
彼はロゼッタさんと私を見て、静かに言った。
「ミリア・ノクス」
「はい」
「君のおかげで、西門の被害は最小限で済んだ」
「よかったです」
「礼を言う」
レオンハルト様が、私に頭を下げた。
周囲がざわめいた。
騎士団副団長が、危険人物として地下牢にいた娘に頭を下げている。
たしかに、少し変な光景だと思う。
「ですが」
私は小さく言った。
「私は、花屋に戻れますか」
レオンハルト様は、すぐには答えなかった。
その沈黙で、答えは分かった。
胸が少し重くなる。
「今すぐ私が決めることはできない」
「……そうですか」
「だが、君が王都を救ったことは事実だ。私が報告する」
それが精一杯なのだろう。
私はうなずいた。
「分かりました」
その日の夕方。
私は、ロゼッタ花店の店先に戻っていた。
正式に戻れたわけではない。
けれど、王城からの沙汰が出るまで、ひとまずロゼッタ花店で待つことを許された。
レオンハルト様が強く言ってくれたらしい。
店は少し荒れていた。
割れた鉢。
倒れた棚。
水が減った花瓶。
それでも、店は残っていた。
私は店先に立ち、白百合の水を替えた。
水を替えるだけで、花が少し息を吹き返したように見える。
やっぱり、牢屋より花屋の方がいい。
「本当に戻ってきたんだねえ」
ロゼッタさんが、割れた鉢を片づけながら言った。
「はい」
「牢屋に連れて行かれた時は、もうどうなることかと思ったよ」
「私も、少しだけそう思いました」
「少しだけ?」
「牢屋は雨風がしのげたので」
「そこじゃないよ!」
ロゼッタさんが怒った。
怒っているのに、目は赤かった。
その時、店の前に馬車が止まった。
王城の紋章が入った馬車だった。
通りの人々がざわめく。
降りてきたのは、王城の使者だった。
後ろには、レオンハルト様もいる。
私は思わず背筋を伸ばした。
また地下牢に戻されるのだろうか。
少しだけ身構える。
「ミリア・ノクス殿は、こちらに」
「はい。私です」
私は前へ出た。
使者は巻物を広げる。
「王城より沙汰を伝える。ミリア・ノクス殿への拘束は、これを解く」
「え?」
「暴走馬車の件、ならびに西門防衛への協力により、そなたが王都の民を救ったことは明らかである。よって、罪は問わない」
ロゼッタさんが息を呑んだ。
私は少し遅れて理解した。
「つまり……私は花屋に戻っていいんですか?」
「そういうことになる」
「本当に?」
「本当に」
力が抜けた。
よかった。
本当に、よかった。
使者はさらに、重そうな袋を差し出した。
「また、王都防衛への協力により、褒美が下される。ミリア・ノクス殿への褒賞金である」
「私に、ですか」
「そうだ」
私は袋を受け取った。
ずしりと重い。
中身を見なくても分かる。
花屋の家賃より、ずっと重い。
「ありがとうございます」
私は深く頭を下げた。
使者は淡々とうなずくと、馬車へ戻っていった。
通りの人たちは、まだこちらを見ている。
でも、昨日のような恐怖だけではなかった。
「よかったな、ミリアちゃん」
「助けてくれてありがとうよ」
「花市場を守ってくれた子だろう?」
そんな声が、ぽつぽつと聞こえた。
胸の奥が、少し温かくなる。
まだ怖がっている人もいる。
それでも、全員が私を怪物みたいに見るわけではないらしい。
私は褒賞金の袋を抱え、店の中に戻った。
「ロゼッタさん」
「何だい」
「これ、お店に使ってください」
私は袋を差し出した。
ロゼッタさんの顔が変わった。
「何を言ってるんだい。それはあんたがもらった褒美だよ」
「でも、私は花屋に戻りたいので」
「だからって、これはあんたのお金だ」
「お店がなくなったら、戻る場所がありません」
ロゼッタさんが黙った。
私は袋を両手で持ったまま、続ける。
「家賃と、仕入れと、壊れた棚の修理に使ってください。あと、できれば今日の夕飯も」
「夕飯?」
「はい。できれば、少しだけお肉が食べたいです」
ロゼッタさんは、何か言おうとして口を開けた。
でも、何も言わなかった。
代わりに、私をぎゅっと抱きしめた。
「この子は、本当に……」
「ロゼッタさん?」
「分かったよ。借りる。これは店が立ち直るまでの借りだ」
「返さなくていいです」
「返すよ。あんたの給金でね」
「給金が出るんですか」
「出すよ。今度こそ、ちゃんと出す」
それは、とても嬉しい言葉だった。
私は少しだけ泣きそうになった。
私が受け取った褒美で、ロゼッタ花店はしばらく持ちこたえられることになった。
王都を救ったことより、そのことの方が私には嬉しかった。
その夜、ロゼッタさんは本当に肉を買ってきた。
小さな肉だったけれど、スープに入れると、とてもいい匂いがした。
「ミリアちゃん、今日はちゃんと食べるんだよ」
「はい」
「明日からまた働いてもらうからね」
「はい」
「ただし、馬車は持ち上げないこと」
「できるだけ気をつけます」
「できるだけじゃなくて、絶対だよ」
「はい」
私はうなずいた。
でも、また誰かが危なくなったら、たぶん持ち上げると思う。
それは言わなかった。
夕方の片づけが終わる頃、店の外にレオンハルト様が立っているのに気づいた。
「レオンハルト様」
「何だ」
「今日は監視ですか?」
「確認だ」
「同じでは?」
「少し違う」
よく分からない。
でも、彼は店の中へ入ってきた。
「白百合を一束」
「贈り物ですか?」
「王都を救った、元危険人物へ」
「私は元危険人物なんですか?」
「少なくとも、地下牢からは出た」
「それはよかったです」
私は白百合を包んだ。
紙の角をそろえ、リボンを結ぶ。
やっぱり、花屋の仕事は落ち着く。
牢屋より、ずっといい。
私は花束を差し出した。
「ありがとうございました。またお越しください」
レオンハルト様は花束を受け取り、少しだけ口元を緩めた。
「ああ。また来る」
こうして私は、無事にロゼッタ花店へ戻った。
王城からもらった褒美のおかげで、店もすぐには潰れずに済みそうだ。
ただし、ひとつだけ問題がある。
私が本当にただの人間ではないことを、レオンハルト様はまだ疑っている。
そして私は、それを否定できない。
だって私は、人間だけれど。
血の奥には、魔王のものが混じっているのだから。




