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デートの予行練習4


 クレープを食べ終え、俺達はショッピングモールを散策していた。


 「次はあそこに行きましょう。あそこのプチプラショップ、新作のピンが可愛いって詩子が言ってたわ」


 まりんが指差したのは、いかにも女子学生が集まりそうな、照明の明るいアクセサリー店だった。


「俺一人で入店したら、確実に不審者になれるな」

「そう? たぶん、彼女さんにプレゼントですか、って聞かれるくらいの見た目はしてるわよ」


 まぁ、一応デートだ。


 俺がそんな服を持ってる理由が姉にある。

 敬愛する姉に恥をかかせない為に、外出用の服は持っている。

 

「それに今日の奏は、服に気合が入ってる。もし、Tシャツにジャージとかだったら、不審者だったわね」


 素材が微妙でも、皿が豪華なら、豆粒一つでも美味しく見えるものだからな。


「まぁ、こんな店に入れない奴は、元から入るつもりがない奴だから……」


 俺一人だと、入るつもりがない奴だ。

 普段から身だしなみを気にしない。


「私の為におしゃれをしたわけね」

「清潔感がない奴は嫌だろ」

「不潔なら、私が磨くだけだけどね。まぁ、努力賞はあげましょうか?」

「何をくれるんだ」

「私が知ってる限りの詩子の下着の柄はどう?」

「素敵な提案だが、詩にゃんの許可があるなら聞こう」


 まりんはスマホを取り出す。


「…………もしもし、詩子? こんにちは、詩子の声を聞くと幸せになれるわ。……うんうん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、奏に詩子の下着の柄を教えてもいいかしら?」


 まりんの行動力には、いつも驚く。


「……え、駄目! なんで! え、恥ずかしい?」


 詩にゃんには、まだ恥じらいが残っていて安心する。


「そう、なら、詩子の代わりに私の下着の柄を代わりに伝えるわ、いいのね?」


 なんでだよ……


「……そう、わかったわ。変な質問してごめんね。詩子、愛してる。じゃあまたお話しましょう」


 まりんは詩にゃんとの通話を終えた。


「詩子からの伝言よ。下着も見せるときは一緒だよって」


「……そうか」


 そう答えるしか俺にはできなかった。


☆★


 詩にゃんへのプレゼント選びのため、まりんと店内を回る。


 棚という棚に、俺の親指の爪ほどのサイズしかないキラキラした金属片がぶら下がっている。


 左を見れば、ピアス、イヤリング、ヘアピン。

 右を見れば、シュシュやヘアゴム、カチューシャ

 ポーチに帽子、ファッショングラスもある。


 客層は当たり前だが、女性が中心だ。

 ちらほら、彼氏連れがいる程度。


「奏、これなんて詩子に似合わないかしら?」


 茶色の猫耳カチューシャを手に取り見せてきた。


「露骨すぎだろ」

「いつもにゃんにゃん言ってる奏からのプレゼントだから、不自然じゃないわよ」

「それはそうだけどさ、折角プレゼントするんだから真面目に選びたい」


 それを選んだら、絶対に安直に選んだと思われる。

 

「そう言いながら、棚には戻さないのね」


「まぁ、これは買うとして、機会を見て詩にゃんに着けてもらおう」

「それもそうね!」 


 店内を見渡し、良さげなものを手に取っていく。


「このもふもふ猫ちゃんの尻尾アクセサリーもきっと似合うわ」

「どこにつけるつもりだよ」

「スマホとかに着けて、ポケットにイン」

「歩くたびに、外に出した尻尾が揺れるわけか……」


 猫耳つけて、尻尾を揺らす。

 

「絶対可愛い!」

「分かるけど、今は真剣にプレゼント選びをしてるんだ」

「私は真剣よ!」


 かっ、て背後に効果線が広がるのが見えた。


「真剣のベクトルが間違ってる」

「奏だって猫アクセを身に着けた詩子を見たいでしょ」

「否定はしないよ」

「だから、私が買ってプレゼントするわ」


 そう来たか。それなら、俺は真面目にプレゼントを選べる。


「装着は盛大にパーティーでも開くか」

「いいわね!」


 太ももが見えるもこもこなワンピースも着てもらって、もこもこなシュシュを手首、足首に、付けてもらって……


「奏、詩子が可愛すぎて、妄想が止まらないわ」

「俺もだ」

「うんうん、妄想を実現させるためにも、詩子の好感度を上げるプレゼントを選ぶわよ」


 お互い、詩にゃんの可愛さを再確認した。


 一通り見てみたが、何がベストなのか、俺には判断できない。

 身につけてもらいたい物なら、そこそこ見つけたんだが……


「色々あるわね。奏は何をプレゼントしたい?」

「それを今探してるんだろ」

「そうだけど、結局、何を贈りたいかが、大事でしょ」


 詩にゃんに贈りたい物。

 喜んでほしいのは当然だ

 邪魔にならないもの。


「ハンカチとか?」

「縁起が悪いから駄目よ。

「そうなのか?」

「日本語で手巾てぎれと書くのよ。手切れ、つまり、手を切る。縁を切るになるじゃない。意中の相手に贈るものとしては縁起が悪いわ」

「なるほど……」

「チョーカーとかは、どうかしら?」

「まりんは、これを俺から貰って嬉しいか?」

「それは……悩むところね」

 

 悩むのか……


「この白猫のチャームでとか、詩にゃんに似合いそうだな」

「まぁ、悪くないわね。独占欲をもう少し見せたとこだけど、このチャームと組み合わせてみる?」

「それは止めとく」

「そう、君のリードを引くのは俺だけだよとか、囁きながら着けてあげたら、きっとイチコロだと思ったんだけど」

「嘘だろ……」

「ええ、嘘よ。でも、普段通りの奏なら、言っても不自然じゃないと思うわよ」

「詩にゃんとの仲をこじらせるつもりか」

「これくらい僕の愛は重いですって意思表示になるって言ってるのよ」


 ドア・イン・ザ・フェイスだな、これ。

 俺があまりにも優柔不断だから、無理な要求突きつけて、他の選択肢を妥協させる手腕。

 俺もよくやってるから、知ってるよ。


「白猫のチャームを買うことにする」

「そう、なら、私はこのチョーカーを買って、奏にプレゼントするわ」

「俺に着けろと?」

「誰に装着させるかは、奏の自由よ」


 人に贈り物をするなら、貰う側の気持ちにもならないといけないと、俺はこの時、強く思った。

  

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