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推しと夏祭りとチョコバナナ2


 母さんが帰宅するまで、ソプラは俺の部屋に居座っていた。


 プライベートタイムをを楽しみたいと、ソプラに言っても、「ソプラは……気にしないよ?」なんて言葉を返してくる。

 

 天ネェも、「お姉さんだから、ペットの我儘には寛容にならないとね。決して、かなでの部屋に長居できるとか思ってないからね」と白々しかった。


 母さんがソプラに家事の手伝いのためには強制連行した。ソプラが甘えても、「八木家のトップはお母さんよ」の一言で鎮圧。


 死なば諸共、「アマネも一緒じゃなきゃ、ソプラは嫌だよ!」と潤んだ瞳を使う。


 結果、俺はやっと一人きりのプライベートルームを取り返すのでした。


 時間を確認すれば、一六時を過ぎている。

 

 何度も電話をするのも、迷惑になると思い、詩にゃんへメッセージを送ることにした。


『途中で電話を切ってごめんね。天ネェと顔見知りが部屋に乱入してきたから大変だった』


 嘘はついていない。

 けど、隠し事をしているようで気が引けた。

 説明しようにも、話が斜め上に飛んでいて、俺が説明して欲しいまである。


 ブゥンと俺のスマホが揺れた。

 音を鳴らさないようにマナーモードにしているためだ。


 詩にゃんからの返事。


『大丈夫だよ。また夜お話しようね』


 文字でさえ可愛いと思い始めた。

 詩にゃんは大切なモノを奪いました。

 それは、私の免疫です。

 そうだとしたら、ガチの病気だ。


 そんなアホなボケを脳内で再生しつつ、もう一件のメッセージを開く。


 まりんからもメッセージが来ていた。


『詩子から聞いたわよ。やるじゃない!まさか二人きりでデートを申し込むなんて、私が振られるのも、時間の問題かしら?』


 デートに、誘った?

 何を言っている。

 俺はお祭りの屋台前で、チョコバナナを頬張る詩にゃんが見たくて、お祭りに誘っただけだから。


 できれば、俺が食べさせてあげたい。

 

『チョコバナナが大好きだなんて、奏も可愛い所あるじゃない。ちゃんと「俺のチョコバナナは美味しい?」って聞くのよ』


 まりんさんは、センスがおっさんなのは何でなの?


 文字にするべきではないと思う紳士として。

 でも、詩にゃんから「メェー君のチョコバナナを美味しい」と自発的に感想述べてくれるのは、喜んでもいいよね。

 純粋な気持ちでだよ?


 詩にゃんからの甘い感想を妄想しつつも、文面に目を戻す。

 二人きりデート……


 一応、まりんも誘うつもりだった。

 詩にゃんからそう聞いたのだろうか。

 それはつまり、詩にゃんもそのつもり。


 これを二人きりデートと言っても過言ではない。

 わざわざ二人きりとつける意味とは!


 デートである以上、楽しい時間にしなければならない。

 本当にチョコバナナだけ食べて帰ったら、それはデートと呼べるのか。

 いや、そもそもデートが何をするものか、俺はそこまで詳しくない。


 俺はスマホを扱い、情報の波から風をつかむことにした。

 まずはやってはならないことだ。


 自分の話ばかりしてはならない。自分語りのナルシストだと思われる。相手は誰でも良いと思われたいか?


 店員に高圧的は止めなさい、相手だって真面目に仕事をしてるはず……してなかったら、店長に怒ってもらおう。


 ネガティブ発言は駄目、聞いて楽しいと思う奴は、たぶん、君のことを好きではないと思う。


 身だしなみには気を付けろ、社会性がないとみなされる上に、隣に歩く人の価値を下げかねない。


 スマホは連絡ツールだと思え、お前の相手は横にいる。


 まぁ、こんなところか。


 高度なコミュ力と社会性、隣にいるのは君じゃないと駄目と思わせる魅力。

 それらをアピールする機会であり、評価される機会。


 夏祭りは一週間後だ。


 女の子のエスコートになれるべきだな。

 

 候補としては天ネェ、まりん、ソプラだ。


 天ネェは家族だから、練習相手としてはどうなんだ? 女性としてエスコートして、ガチで俺に惚れさせちゃうかもしれないじゃない。

 

 次にまりん。まりんは、その場を楽しませるというより、俺の動揺を煽ってきそうだ。エスコート力を鍛えるにはちょうどいいのか?


 最後に、ソプラ。

 

 気の無い相手を期待させるべきか。

 俺の思い上がりだと思うけど、たぶん、おそらく、俺に対する罪悪感と恋心を混同しているかもしれない。

 本気で好かれても困るから、無しだ。



 消去法でまりんとなるわけだが、頼むべきだろうか。


 俺は自分のエスコート力がどうなのか、知らない。

 詩にゃんにつまらない奴だと思われる。

 それは嫌だ。

 相談だけでも、まりんにアドバイスを貰おう。


『相談したいんだけど、俺、デートって初めてなんだよ。アドバイスをくれない?』


 これで、何かしらの助言をもらえるはずだ……たぶん。


 まりんのことだから、ふざけた返答がきそうな予感がする。

 どんどん、学校一の美少女から変態気質の美少女に肩書が俺の中で変化している。

 

 感情表現が直接的過ぎる。

 隠す必要がないと思っているのか。

 それとも、何か見たれたくない想いを、隠すのに必死だから、耳たぶ甘噛、お家水着からの風呂場で洗浄という名前のスキンシップと、常識を疑う行動をとっているのか。


 まぁ、考えすぎか。


 単純に、今が楽しいから歯止めが効かなくなってるだけかもな。

 ゲームにハマったら、朝までやるタイプと見た。

 

 ――ブゥン、とスマホが揺れる。

 

 まりんからの着信だ。


「もしもし、奏? 私とデートの予行練習をしましょう。何事も経験、実戦に勝るアドバイスはないわ」

 

 比較的まともな返答に安堵してしまう。


「明日、暇かしら?」

「暇すぎて、コンビニにアイス買いに行ったくらいだ」

「その返答は暇人のそれね、じゃあ、明日、私とデートね」

「了解、場所はどうする?」

「お祭りデートの予行ならショッピンググモールとかじゃないかしら?」


 色んなものがある分、アドバイスには適しているということか。


 「それでお願い」

「ええ、詩子とのデートを成功させるためだもの。これくらい当然よ」


 俺達は、デートの予行練習について、詳細を話し合う。


 まりんとのデートの予行練習。

 練習なら失敗してもいい。けど、できるだけまりんを楽しませる努力をしてみよう。

 

 

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