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転生爺のいんちき帝王学 〜日の目を見ずに生きてきた最強爺、隠居間際で弱小王女に拾われる〜  作者: 嶋野夕陽


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計画の想像

 グレイは王宮まで帰ってくると、荷車をその場に放置して木箱を担ぎ上げる。

 人が一人入るような木箱であるから、見張りの兵士はグレイを止めるべきかと悩んだが、結局じろりと見られて引き下がった。

 これはグレイが見るからにやばそうな雰囲気を持っているから、というだけではなく、騎士団の方から一応通達が来ているからだ。

 何か妙なことをしていても、よほどでなければあまり関わらないように、と。

 いざという時は自分たちで何とかしようとせず、騎士団の方へ報告するように、と。

 グレイはすでに、王宮内でのアンタッチャブルな存在になりつつあった。

 実際声をかけていたとしても、グレイは木箱の中身を見せるつもりはなかったので、兵士の判断は実に正しかったと言えるだろう。


 グレイはそのままクルムが仕事をしている部屋まで木箱を運び込む。


「お帰りなさい、せんせ……い」


 既にファンファから報告を受けていたクルムは、立ち上がってグレイを迎えに歩き出したが、その肩に担がれたかなり大きなサイズの木箱を見て、なんだか嫌な予感がしてぴたりと足を止めた。


「ファンファお姉様から途中までの経緯は聞いていますが、それは?」

「ふむ、実はのう……」


 グレイは木箱の上に腰を下ろし、ロンヌスが現れて戦いになりそうになった辺りまでを語って立ち上がると、パカリとそのふたを開けて見せた。


「で、戦果がこれじゃ」


 話の流れからすると、どこかの国の武器などが入っているのかと覗き込んだクルムはぎょっとする。

 人間が縛られ、折りたたまれて入っていれば、そりゃあぎょっとする。


「……その間が知りたいのですが」

「なんだかんだぶち殺しつつ、一人くらいは生かしておくことを決めた指揮官がこ奴じゃな」

「大変分かりやすい説明、ありがとうございます……」


 つまりこいつ以外は全員ぶち殺したという犯罪行為の暴露である。

 今更何を注意しようとも思わないし、そもそもこの者たちも、殺されても仕方のない怪しい者たちばかりであるからして、クルムだって咎める気などさらさらない。

 そんなことよりも、クルムには大事な仕事がある。

 それは、ファンファの話とグレイの話を総合して、今貧民街に何が起こりつつあるのかを想像することだ。

 素早く思考を巡らせたクルムは、嫌な想像にぐっと眉間に皺を寄せ、グレイに提案する。


「……先生、これは騎士団に預けて、何をしようとしていたか白状させましょう。説明は私がします」

「ふむ、よかろう」

「それから、明日一日で、北地区以外の皆さんを訪問したいです。状況の確認をする必要があります」


 クルムの緊張した表情を見て、グレイはそちらにも同意する。

 まだ全容の想像はできていないグレイであったが、どうやらクルムはある程度何が起こっているかの想像ができているようであった。


 翌日の朝早くから、ぐるりと北地区以外の貧民街を訪ねた二人は、そこで同じようなことが別の地区でも起こっていたことを知る。

 西のブルトンと東のゾエの方は、既に衝突をした後であり、武器が供与されていたがゆえに、犠牲者も出ているらしい。ただ、血の気の多い二人は見事に皆殺しにはしたようであった。

 まだぶつかっていないのは慎重に事を進めている南のグンナイのみで、とはいえこちらも近いうちに襲撃を企てている最中であった。

 それぞれ自分の縄張りを知らないやつらに荒らされることなど絶対に許せないという、確固たる信念を持っている。まぁ、相手がグレイのような化け物となると、共生していくしかないと諦めざるを得ないのだが。


 グンナイには情報を伝え、あらかじめ十分に警戒して事に臨むよう伝えて、クルムは王宮へと戻ることにする。


「どうする。冒険者ごとぶち殺すか?」

「…………冒険者は隣国の有力商会から依頼を受けて、王都にとどまっています。おそらく、それをするとかなり厄介なことになるでしょう」

「あれだけの武器を運び込み、貧民街の住人に成りすまそうとしていたのじゃ。始末するには十分な理由じゃろうが」

「…………今はできません」


 クルムは悔しそうに歯噛みする。


「今それを公にすれば……、それこそヘグニお兄様の貧民街を焼き払うべきだという提案に追い風を吹かせることになるでしょう」


 どこの所属かもわからないような暗殺者、あるいは兵士たちを潜伏させておけるような場所が街にあってはよくない。いっそきれいに掃除して、そういった輩が二度と現れぬよう徹底的に管理をしよう、などと言われては困る。

 クルムの計画は状況を長い目で見た上で、国に利益をもたらすやり方だ。

 貧民街が今この瞬間に国に大きな不利益をもたらすのだと分かってしまうことは、クルムにとって不利な状況にしかならない。


「ではそれが狙いか?」

「いえ、それにしては規模が大きすぎます」


 少なくともヘグニは、自分の意見が通ることが当然だと思っている。

 今の時点ではまだ、クルムはまともにヘグニと衝突したこともないのだ。

 となると、焼き払いが通る前提で、隣国の兵士に働きかけたのはやはり、第三子のジグラであるはずだ。


 その目的はおそらく……。


「ジグラお兄様が狙っていたのは、焼き払いに乗じての混乱。もしヘグニお兄様がその指揮を執るとなれば、暗殺……、を狙っていたのではないかと」

「なるほどのう……、敵に塩を送ってしまった形になるわけじゃ」

「……仕方ありません。どちらにせよ私の思惑を通すためには潰さねばならない計画でした」


 クルムはため息をついて首を横に振る。

 いよいよ前回の教会騒動辺りから、本格的に王位継承争いらしくなってきたものである。

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― 新着の感想 ―
やっぱり邪魔な王族は全員コロコロしてしまったほうが楽なのでは?
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