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転生爺のいんちき帝王学 〜日の目を見ずに生きてきた最強爺、隠居間際で弱小王女に拾われる〜  作者: 嶋野夕陽


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メロディエの好み

「さて、こ奴らの始末は任せていいかのう?」

「もちろんです」

「うむ。さて、箱の中身でも改めるとするか」


 メロディエに死体処理を押し付けたグレイは、まだ生きている指示役の男を引きずって歩きながら荷車を見に行く。

 その間に、メロディエが指笛を吹き鳴らすと、貧民街の奥から次々とその住人が現れ、死体を引きずって運んでいく。


 適当に中身を漁っていくと、短剣をはじめとした暗殺に使うような武器や道具がゴロゴロと出てくる。毒らしきものが入った瓶まで見つけて、グレイは呆れかえった。

 何が目的か知らないが、貧民街には不相応な装備だ。


 荷物の中には他にも食料品やら、こまごまとした装備品、日用品が入っていた。

 グレイはその中から縄を取り出すと、適当に指示役の男を縛り上げていく。

 尋問して何かを吐くとも思えないが、まぁ、一応こんな奴がいたぞという証拠くらいにはなる。


 死体が完全に引き上げられるのを見届けたところで、メロディエとロンヌスがグレイの方へ歩み寄ってくる。


「グレイさんはどうしてこちらに?」


 もはやグレイ相手には隠すつもりもないようで、メロディエが問いかけてくる。


「うむ。隣国の怪しい冒険者がいると聞いてのう。様子を見ていたら、護衛していた荷車を無警戒に外に放置して姿を消しおった。すると途端にこ奴らが現れて荷車を盗んでいった。あまりに連携が良いからおかしいと思ってついてきたんじゃ」

「そういうことでしたか。……こいつらは最近街に来て、集団で行動している怪しい奴らでした。グレイさんもご存じでしょうけれど、貧民街に集団で現れるなんておかしな話です」


 貧民街はのけ者や、はぐれ者、そして逃亡者などがやってくる場所だ。

 突然集団でやってくる者など悪目立ちするに決まっているのだが、貧民街の内部に暮らしていない者はあまり実感を持たないだろう。

 ましてそれが他国の者であれば、いい潜伏先くらいにしか思うまい。


 実際のところ、昔の貧民街であれば、そんな集団がいたとしても排除は難しかったはずだ。今の貧民街は、二十年ほど前の焼き討ち騒動以来、妙に結束して縄張り意識が強くなっている。

 今回のメロディエとロンヌスによる迎撃は、それが功を奏した形だ。


「十日ほど前にはこいつらが来ていたのは分かっていたんです。それだけなら放っておいたんですが、ここのところ、この周囲で暮らしてた奴らが姿を消し始めたんで、放っておけないなと動きました」

「間違いなく何かを企んでおった。冒険者もグルじゃろうな」

「そっちも片づけます?」


 メロディエは一見幼い少女であるが、中身はロンヌスとセットで立派な貧民街四天王である。人を消すことに躊躇はない。


「放っておけ」

「しかし、その方がグレイさんのお役に立つのでは?」


 グレイはじろりとメロディエを見下ろす。


「余計なお世話じゃ。縄張りの外に手を出してもろくなことにならんぞ」


 メロディエとロンヌスは四天王の中では新顔の方だ。

 今のところうまくやっているようだが、北地区にはまだまだ油断ならない勢力も残っている。

 それに、件の冒険者の腕はこの二人と比べて、それほど遜色ないものだった。

 場合によっては返り討ちに遭う可能性だってある。

 自分の知らぬところで自分のために人が死ぬのなど、グレイにとっては迷惑で仕方がない話だ。


「……わかりました、他に何かお手伝いできることは?」


 メロディエはグレイのそんな気持ちをある程度くみ取った。

 流石、常日頃から無口なロンヌスと共に行動をしているだけあって、人の気持ちを察する能力が高いようだ。


「クルムに頼まれたことだけしっかりとやっておくんじゃな。……その荷車の中身は、適当に使うといい」

「いいんですか? 証拠とかに必要なんじゃ……?」

「そんなもんいらん」


 どうにも子供の見た目で殊勝なことを言われると弱いグレイは、空の木箱の中に指示役の男をぶち込んでふたを閉め、その木箱だけを積んだ荷車をガラガラと引いて、さっさと貧民街を後にすることにした。


 メロディエはグレイの背中をじっと見つめていたが、やがて姿が見えなくなると一言ぽつりとつぶやく。


「……素敵」

「……爺さんだぞ」

「年とか関係ないの。いい? 男は強くて頼りがいがあるのが一番。あなたもなかなかいい男だけど、グレイさんにはかなわないわね」


 ロンヌスはなんだかとても複雑な気持ちだ。

 もちろん嫉妬とかではない。

 小さなころから何かと庇ってくれたメロディエが誰にどんな思いを抱こうと、本当にどうでもいいのだが、あれだけは違うんじゃないかと思ってしまう。

 この気持ちを分かりやすく表すのなら、実の姉が悪い男に恋をしている時のような、なんというか、単純に『やめとけばいいのに』という気持ちだ。

 ちなみに、ロンヌスよりメロディエの方が年上であるから、その間にどんな関係が結ばれようと倫理的には何の問題もない。


「……王女様の計画がうまくいって、私たちも普通の人として暮らせるのかしら」


 メロディエは振り返って歩き出しながら、ロンヌスにしか聞こえぬような小さな声で呟く。


「……そうかもしれない」

「そうなったら……、もし本当にそうなったら……。グレイさんや、グレイさんが応援しているクルム王女の役に立つようなことがしたいわね」

「……そうだな」


 元々はたった二人で生きてきたメロディエとロンヌスは、随分と昔に放り捨てたはずの希望を胸に抱きながら、自分たちの縄張りへと歩いて帰っていくのであった。

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― 新着の感想 ―
自白系の薬や呪いとか無いんかな
エルフの王女であるスペルティアのことを話さないのは信用していないからかなぁ
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