依頼を受けて
お久しぶりです
腰に下げた袋。
動きやすい戦闘服。
その太腿の脇部分に収納された短剣。
そして厚底の靴。
これこそが旅の冒険者の正装、これこそが王道!
――感じ方には個人差があります、なんてね。
色々と賑やかだった出来事の翌日、私は新装備を引っさげて意気揚々と街を出た。
依頼によると、ここから五分程度歩いた場所の山の中で度々魔物の目撃情報があって、魔物の討伐と……
「あわよくば原因の究明もお願いします……か」
提案してみると、とても嬉しそうに「本当ですか、ありがとうございます!」と言われた。了承を得れたので思いっきり暴れてこよう……!
ちなみに今回向かう事になっている魔物の出る山は、以前は薬草や調合のための素材の回収をしていた場所であったようだ。
魔法で回復と云う手段はあるものの、実際は診療所のおじいさんのような魔力をある程度持つ物にしか使いこなせないので、薬草などの需要はまだ充分にある現状で魔物が出現したのは正直きつい。
――主に薬草の在庫がなくなってしまった後の診療所のおじいさんが。
15分ほど歩くと意外と早く目的地についた。今のところ大きな魔力の気配はないけど、獣族の魔物は身を潜めるのは得意だと聞いているし、充分に注意することに越したことはない。
「じゃあ、調査開始と行きますか」
腰ほどもある草をかき分けて斜面を登っていくと、だんだんと地面が木の根っこに覆われていく。ごつごつとしていて注意していないと足を取られそうだ。
運動不足の素人が安易に入るとあっという間に踝を捻ってしまうらしい。
え……実体験……? なんの事……?
どこからか何か聞こえた気がしなくもないが、気にせず探索を続ける。
魔物を探す内に、私の頭の中には昨日の記憶が甦っていった。
◇
喫茶店の昼休み時間、私は今の仮の寝床である、裏山に一際目立つようにそびえるやや背の高い木の枝の上で「運動と高いところが苦手」と言うので登ってこずに木の下に座っている林檎と話をしていた。
「花梨ちゃんはさ、どうしてこの街に来たの? 確か街の近くで倒れてたって聞いたけど……」
「うん、正直この街に辿り着かなかったら野垂れ死んでたね」
少し驚いた様子の林檎に、これ以上話しても変に慰められそうだなぁと思いつつ更に言葉を続ける。
「そもそもこうやって半ば死にかけてまで元々住んでた所を出たのは……簡潔に言うと襲われたんだ、魔物の群れに」
今では夢でうなされる事も少なくなってきたが、その時のことは未だに鮮明に思い出せる。逃げ回る人々、悲鳴、恐怖を煽る獣の唸り声――
「幸い軽い怪我人だけで済んだけど、それでも住んでた場所からは追い出される形で離れないといけなくなった。その時に家族と別れて、独りで冒険者として旅をする事にしたんだ……」
「魔物って……この辺りで最近出てくるようになったって言う獣型の……その群に村が襲われたの……?」
その問いにかぶりを振りながら説明を続ける。
「獣型もいたけど……それ以上に怖かったのは、そいつらを使役してた人型の魔物達だった。恐ろしいほどに醜くて、子供と同じ位の背の高さなのに大人よりも力が強くて獣と同じくらい獰猛だった……」
人型の魔物、という言葉は聞き慣れていないらしく、林檎は目を瞬かせて想像している様子だったが、すぐに考えるのを止めたようだった。
「それでも思ったんだ。小さい頃からの夢、自分の知らない世界を探して旅にでるんだって……今がその夢を叶えるいい機会なんだって思ったから、離れ離れになった村のみんなを探しながら旅を続けてるんだ……」
――少々意気込んでしまったようで、ふと我に返って話し相手の方を振り返ってみると……
何か考え事をしていたのか、こちらも話が終わるとはっとしたような顔でこちらを見てきた。
「ご……ごめんなさい……そっか……いつまた家族に会えるか分からないんだね……」
流石にちょっと話が重かったかな、なんかあっさり話しちゃって大丈夫だったのかな……と今更のように話すことに焦りを覚えたが、次に発せられた言葉は私も予想だにできなかった内容だった。
「村が襲われた話を聞いて思ったの……最近近くの山に出るようになったっていう動物型の魔物、もしかしたら花梨ちゃんの見た人型の魔物も関わってるんじゃないかって……」
「……!」
それを聞いて、私は大いに驚きながらも、反射的に必至に頭を回転させその可能性を探していた。
私がこの街に辿り着いたのは一週間前、魔物の目撃情報は更にその数日前から……
もし最初から侵略の為に私の村だけじゃなくてやこの街も目標にしているなら、私より速く――実際は散々迷った挙げ句行き倒れと同義でこの街に着いたわけだからこちらが遅いのは確実だけど――着いていても不思議はない。
人員や物資の準備期間は十分にあった。時期的にもそろそろ攻めてくる可能性が高い。
しかし正直な所現時点では突拍子過ぎる考えだし、仮に受け入れてもらえたとしても街中がパニックになることは想像に難くない。
その結論を踏まえて、私は林檎に伝えた。
「もしかしたら可能性は高いかもしれない……でも想像の範囲内だし信憑性はまだ薄い。明日依頼の為に山に入るから、少し探索してみるよ。」
◇
――そうして物思いに耽っていた私は、突然視界に開けた場所が出てきて驚き、ちょっとした崖の様になっていた所を危うく転げ落ちるところだった。
なぜこんな山の中に平たい土地が? と思ってから気づく。ここは街の人が薬草などの採取を行う際の休憩所的なものだ。
現在自分以外の人間は見あたらないが、少し様子を見に行こうか……と茂みを乗り出しかけたその時、私の耳は静かなはずの山の中に何かの気配を漂わせる人為的な音を感じ取った。
まさか……危惧した通りに獣以外の魔物がいるの?
お読みいただきありがとうございます
誤字脱字間違った表現等は随時修正していこうと思います|ω・)ノ




