表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険と魔法の世界で果実は実る  作者: 休止中
第一章 世界を探す旅
3/9

変わった名前だね


「えっと、ここで働きたいんですが!」

 と私。


「唐突だねぇ」

 とお客さん。


 驚く店主と従業員。

 なんでこんな事になってるのかは詳しく話すと長くなるけど、おおよそで1時間半ほど前に遡る事になる……



                  ◇


 さて、診療所のおじいさんと別れて街に出てきたことだし、早速観光と洒落込みますか。

あ、でも変に大通りにでも行くとなんだかんだ騒がれそうだなぁ……

 おじいさんも「ここの住人は噂話に関しちゃ何でも知ってる勢いで話してくるからねぇ」なんて言ってたし、もう街の中をぶらぶらするのは後にして、直接喫茶店とやらに行っちゃおうっと。


 幸い人に聞くような事もなく、街のあちこちにある掲示板に新聞代わりの一面記事と街の地図が載っていたお陰で、特に迷うこともなく例の喫茶店前までたどり着くことができた。


 でも結局のところすれ違う人からは何かしら声をかけられたので、話し相手になることも多々あった。

模範解答の精度が熟達してるんじゃないかな?


 まあ予想外だったのは喫茶店がかなり街の端っこの近くにあったことかな。かれこれ40分くらいは歩いたから、そろそろ足が痛くなってきた。そもそも病み上がりだし……


 あのおじいさんさらっと言ってたけど、やっぱり地元民で(慣れてま)すね……


 そしてなんとかそのお店の前にいるわけだけど、


「ここが……その喫茶店? 『古き糸の巣』って……なんか変わった名前だね?」


 少し古めかしい印象を与える木製の入り口には、店名の通りクモの巣の意匠があしらわれた看板が掛けられており、端的に言えば僅かな不気味さを醸し出している。

 扉の取っ手と蝶番は目立つ金色の素材でできていて、隣に目を向けると扉と似たようにこれまた木製の窓枠があって、古びた感じのガラス窓が嵌まっている。


 ぼやけてて外見れないじゃんあれ、何かしら意味があるのかな?


 そう思いながらも意を決して扉をあけて入ってみると、カランカラン と控えめな鈴の音がなった。どうやら扉を開けた時に当たるよう設置されているらしい。


「いらっしゃい」


 落ち着いた声で迎えてくれたのはここの店主だろう、茶色い色合いの前掛けを腰の辺りに巻いている。

どうやら料理の最中らしい。

「こんにちは。医者のおじいさんに紹介されてきました、この前はどうもありがとうございました」


 うんうん、上出来上出来。ここに来る前に考えといて良かった。


「そうかぁ、わざわざありがとう。とりあえず落ち着ける場所に座って」

「あ……はい」


 案内された席は座る部分に布団のような生地がついていて、柔らかくてとても座り心地がいい。四角い木製の机は、少し年季を感じさせる黄ばんだ壁紙と相まって個人的にとても落ち着く空間だ。


「どうぞ、ただのお水ですけど……」


 店主とおそろいの前掛けを腰に巻いている女の子が、おずおずと私の所に水を持ってきた。

 見たところ店主と親子なのだろう、白い長髪は透き通るように輝いていて、偶然にも私と同じ淡紅色の瞳を持っている。もしかしたら私と歳も近いのかもしれない。


 ふと彼女がこちらに目を向けた。じっと見てたのが気に障っちゃったかな……?

しかし謝罪の言葉を口に出す前に、なぜか少し驚いた様子の彼女の方から話が出てきた。


「その……首飾り……」


 そう言われて思わず私と彼女の首元を交互に見ると、確かに色こそ違えど同じ意匠で同じ大きさの宝石が紐に通されて首から下げられている。


「あ、これはお守り代わりというか……小さい頃から身に着けてたからそのまま旅に持ってきちゃったんだよね」


 これは小さい頃住んでいた場所の裏手にあった山の中で遊んでいる時に見つけたもので、物珍しかった私は親に頼んで首飾りに加工して貰った。


 ――今となっては懐かしい思い出。


「そっか……初めてきたお客さんだけど、歳もたぶん近いかなって思ったら嬉しくなっちゃって。ここあんまり人こないし……」


 そんなー、と言う声と笑い声が聞こえた。仲の良い親子なんだなぁ……


「私は花梨(カリン)、呼び方はそのままで良いよ。しばらくはこの街に居るつもりだからよろしく」


「うん、こちらこそ。それにしても変わった名前だね、私もだけど……」


「…?」


「私の名前は林檎(リンゴ)。よろしくね」


 楽しそうに話す私たちを見て、店主とお客さんは「あんなに楽しそうに話す林檎(ちゃん)は始めて見た……」と言っていた。

 お客さんも滅多に見ないらしい彼女の笑顔はとても可愛らしく、私のまぶたに焼き付いていた。


「それで花梨ちゃん、何か頼む?」


「……またお金が入ったら頼みに来ます……」



 結局水しか飲まずに、観光してきますと言って私は古き糸の巣を出た。

 瞳の色か宝石か、あの子の何かが私を惹き付けている気がして、もう一度話をしたいという気持ちが起こっていた。


 しばらく周りを観光してから、再び店の方に戻ってきた私は、近くの芝生に寝転がって空を見上げながらのんびりと考え事をしていた。放浪の末ここに着いたのも何かの導きだと思わなくもないので、しばらくここにいてもいいかな……

 そして妙案が浮かんだ。どうにかしてあそこに雇って貰おう!と。


 ――そして現在。

再び喫茶「古き糸の巣」に来た私は早速申し出たのだった。


「えっと、ここで働きたいんですが!」

お読みいただきありがとうございます


誤字脱字間違った表現などは随時修正していこうと思います|ω・)ノ

31,2/8 文章の改行間隔、その他言い回しを修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ