#56 安心熱
(2026/03/03)
朝が来た。
少しの安心と消えない不安のせいで、また眠れない夜を過ごしてしまった。
昨日の小鳥の様子が気になって仕方なかったのだ。
それに、久しぶりに映画を見始めたら止まらなくなった。
私は映画を見始めると何本も続けて見てしまう。
そして数日、あるいは数ヶ月のインターバルを空けて、また一気見する。
逃避行動なのだと思う。
映画の光で、不安を薄めようとしていた。
実際、それは成功した。
なんやかんや時間を潰していたら朝が来た。
来てしまった。
小鳥は、朝を迎えられているだろうか。
夜中、少し動くような音は聞こえていたが……。
でも、安心は思ったより早く訪れた。
ピピピピピ。
文字にすると電子音みたいな鳴き声で、小鳥が朝を歓喜している。
オモコロチャンネルを流しすぎて真似するようになった、あの独特の鳴き声だ。
カバーを外す。
きゅるんとした目で、「もう外に出る準備できてますぜ」と言わんばかりの姿。
昨日の体調不良など、まるでなかったかのようにケロッとしている。
こちらの心配も知らずに。
でも、本当に良かった。
ケージの中には卵が一つ、コロンと転がっていた。
今回はどうやら難産だったらしい。
卵詰まりにならなくて、本当に良かった。
ほっと胸を撫で下ろす。
……撫で下ろしたのはいいが、身体がやけに熱い。
室温を上げているせいかと思ったが、どうやら違う。
布団に横になると、背中が嫌に熱い。
半袖Tシャツなのにおかしいなと思いながら、結局そのまま朝まで起きていた。
小鳥の無事を確認して、ようやく気づく。
体温計を取り出し、左脇に挟む。
しばしの沈黙。
ピピピピピ。
小鳥より機械的な音が鳴る。
37.5℃。
どうやら私は微熱らしい。
むしろ、これからもう少し上がりそうな気もする。
知恵熱ならぬ、安心熱と名付けよう。
2月の終わりに「3月は取り返す月にするぞ」と高らかに宣言したというのに、スタートダッシュがおっとっとと転げていく。
幸い、今のところ調整できる予定しかない。
この熱とも、うまく付き合っていくことにする。




