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#55 終電より先に帰る理由
(2026/03/03)
バーキンパーリーから帰宅する。
小鳥は無事か。
無事なのか。
その不安を紛らわせるように、阪急電車の中で今日観た映画の感想を書いていた。
思いのほか筆が乗る。映画レビューもマガジンにしようかな、などと考える。
書いている間は、不安が少し薄れる。
どうやら私は、書くことで気持ちを保つらしい。
商店街を抜け、家の扉を開ける。
暗い部屋。
重い扉が閉まり、鍵をかける音がやけに響く。
靴を脱いでいると、奥から微かに聞こえた。
ピ。
眠たげな声。
あぁ、良かった。
ちゃんと生きている。
「ごめんね、起こしちゃったね」
暗いまま、ケージにカバーをかける。
本当に良かった。
今のところ、変わりはない。
正直、帰宅したくなかった。
朝までカラオケをして、鴨川沿いを歩いてから帰ろうかとも思った。
私が帰ることで、小鳥の眠りを妨げてしまうのではないかと、余計な心配をしたからだ。
でも、こうも考えた。
もし最悪があったら。
暗い部屋の中で、一人、冷たくなってしまうかもしれない。
それだけは、絶対に嫌だった。
だから、怖くても終電より先に帰ることにした。
不安は、理屈をぐにゃぐにゃに歪める。
身に染みて分かった。
まぁるい黄色と青のパステルカラー。
濡れたら灰色になる、可愛い小鳥。
朝には、もっと元気になっていますように。




