#53 静かすぎる朝
(2026/03/02)
朝――いや、昼前。
違和感とともに目が覚めた。
いつもなら「起こせ」と鳴いて主張する我がルームメイト、セキセイインコの声がしない。
名前を呼びながらケージのカバーを外す。
見た目はいつも通り。
少し安心する。
だが、違和感は消えない。
背後から嫌な予感が抱きついてくるような感覚。
とりあえず水を換え、ご飯を新しく入れ、放鳥のために扉を開ける。
そこで確信した。
いつもならギャギャギャと鳴き叫び、勢いよく飛び出す小鳥が、
“普通の小鳥”の大人しさになっている。
指を差し出す。
いつものように爪を剥ごうとする執拗な嘴タッチがない。
扉の前で立ち止まり、私の指に擦り寄り、目をシパシパとさせる。
飛んではみたが、いつも止まる位置より数十センチ低いところに着地した。
明らかに身体が重そうだ。
体重を測りたい。
でも今は余計な接触は避けた方がいい気がする。
昨夜、室温が少し下がっていた。
ヒーターが足りなかったのだろうか。
エアコンを最大の30度に設定し、ケージにブランケットをかける。
一緒に暮らして三年目。
初めての異変。
卵詰まりの可能性もよぎる。
だが止まり木には止まれているし、おもちゃで遊ぶ様子もある。
ただ、覇気がない。
あのけたたましい主張がない。
数時間様子を見て変わらなければ、病院へ行こう。
午後に予定していた買い物も市役所も、すべてキャンセルだ。
目の前の小さな命がいちばん大事だ。
少しでも良くなってくれ。
早く、あの騒がしい声を聞かせてくれ。
小鳥は、静かにご飯をつついている。




