#52 深夜3時の入稿ボタン
(2026/03/02)
23時に寝たはずなのに、1時に目が覚めた。
暗い部屋の中で、少しの自己嫌悪。
だが横になっても眠れそうにない時は、諦めて起きるに限る。長年の生活リズムの乱れで、このパターンは把握している。舐めんなよ、私。
ベッドを抜け出し、何をしようかと考えた末に原稿チェックをすることにした。
一週間寝かせておいた今が、見直すにはちょうどいい。
画面を開く。
数日しか経っていないのに、もう直したい箇所が見える。
ああ、成長しているらしい。
けれど、手を入れすぎれば別物になる。
誤字脱字、表記の統一、レイアウト調整にとどめる。
あとがきは書きたい。めちゃくちゃ書きたい。
でも、今の熱量を持ち込めば作品の温度を壊すと分かっている。
このジレンマ。
そして、完成と呼ぶことにした一冊目。
深夜3時、入稿ページと注意書きを何度も往復する。
zipファイルを確認し、原稿を見直し、ボタンの前で止まる。
押せない。
でも押さなければ、一生本にはならない。
「なんか間違ってたらすみません印刷会社さん」
祈りながら、クリック。
不安と高揚が入り混じる。
下から上へ、ゾワッと何かが駆け抜ける。
眠気は来ない。
じゃあ作業だ。
そのまま二冊目、三冊目の校正も進める。
誤字を拾い、揺れを整え、レイアウトを詰める。
深夜の静けさが、妙に心地よい。
今日はルームメイトのセキセイインコも静かだ。
よく眠れているらしい。何より。
二冊目と三冊目は、一冊目の印刷が届いてから入稿する。
まずは生まれてくる我が子を拝んでからだ。
フォルダをそっと閉じる。
まだ眠れないので、息抜きに短編を書いた。
頭の中でごちゃごちゃ喋る主人公ができあがる。
相変わらず内面を直接掘るのは好きじゃない。
情景で匂わせる方が性に合う。
登場人物を好きになってほしいのではない。
横に立てるような作品が好きなのだと、改めて思う。
カーテン越しの外が騒がしくなり始めた頃、ようやく眠気が来た。
昼からやりたいことがある。
できたらいいなと思いながら、二度目の眠りに落ちた。




