8話 東村山大脱出 (挿絵あり)
ポノコとクシアはねがい星の戦士たちに囲まれてしまった。
ポノコが話す。
「まずったわね、こいつら消耗した私たちを狙うために待ち構えてたんだわ。」
最初は遠くへ待機していたが、先程戦った時間逆行は能力が能力であるため戦闘にかなり神経を使い、意識を持っていかれると人の気配を感じ取る感覚は鈍くなるため2人は気がつくことができなかったのだ。
ポノコが構える。
「仕方ない、私の能力でこいつらを相手するわ。片無絵、あなたは回復に専念…」
クシアは半分くらい灰化している男に触れ、時間逆行をコピーする。
「何してるの!?その怪我で超絶身体を解除するのは危険よ!!」
「がはぁっ!!」
クシアは吐血する。
「ポノちゃん!右から来る奴を左手でアッパーカット!!」
「え?」
「3秒以内に言う通りにして!!」
「だりゃあ!!」
ポノコはクシアの言う通りにした。
「そしたらすかさず後ろから来る奴の股間を左足でヒールキック!!空いた右手でレンガを取り出しながら上げたままの左足で360°回し蹴り!!勢いをつけたまま正面から来る奴の鼻元目掛けてレンガを叩きつけて!!そうするとその先を狙って左右から2人来るからレンガを押し付けた腕を支柱に半回転ジャンプ!!」
ポノコはクシアの言う通りにして次々と敵を薙ぎ倒していく。
「よし、オールクリアで4分30秒!!げほっ…がはっ…!」
ポノコはクシアへ駆け寄った。
「何回巻き戻ったの!?無茶し過ぎなのよ!!」
抱きかかえてきたポノコの手を握り超絶身体をコピー、すかさずポノコをおぶり、向かってくる追加戦力の軍隊にクシアは全力疾走で突撃した。
ポノコは抵抗する。
「何してるの!?離しなさいよ!!」
「大人しくして!!セーブ地点自動更新の30秒間だけはどうやってもポノちゃんは死んじゃう、私が突っ込むしかないんだぜ!!」
クシアはダメージを受けながらも最小限に抑える立ち回りで30秒間ダッシュした。クシアはループを繰り返したことで精神と神経のブレーキが外れ、肉体の限界をはるかに超えて全力疾走をした。クシアの全身から血が吹き出す。
それを見たポノコは叫ぶ。
「これ以上やったらあんたは!」
「ポノちゃん後方確認!!」
言う通りに後ろを見ると、集団からはかなりの距離が離れており、このままスピードを維持すれば振り切れそうだった。
「ポノちゃん!足は!!」
ポノコはクシアが逆行して得た知識による立ち回りのおかげで、ダメージはほとんど回復していた。
ポノコはすかさず足をつきクシアをお姫様抱っこして持ち上げ、全力疾走で東村山を脱出した。
太陽の7割が沈み、空が紫に輝く頃、追っ手を撒いたポノコは檜原村の児童館の中心部へ到着し、周囲の安全を確認するとクシアを下ろした。この児童館の入り口は橋一個であるため侵入経路が限られる。ポノコは自販機に設置された救急車道具の蓋を破壊し、勘で不器用にクシアを止血する。
「あり…がと……な…ポノちゃん…」
「なんなのよ!!」
「ふえ?」
「あんた一体なんなのよ!?学校に通っていた時は私を執拗にいじめて!!私はあんたのせいで何回死のうか迷ったくらいよ!!なんの変哲もない日常の中では私を全力で殺しに来たくせに、絶体絶命のピンチになるとどうして私を命懸けで助けるのよ!!」
クシアは朦朧とする意識の中で、ポノコの目を必死に見ていた。
「・・・」
「こんな無茶までして……」
「私は、お前を殺すつもりなんて…最初からなかったぜ…」
「は?」
2人の心情に応えるように、強い山風が吹き荒れる。
「何言ってんの?」
「私はポノちゃんが羨ましかった。ポノちゃんは外出する時、一度も同じ服を着てきた事なかったよね?」
「ちょっと待ってなんで知ってるの!?」
「私より可愛くて…お金があって…強い心を持つポノちゃんが…羨ましかった…」
「羨ましかったら殺すの?」
「私がしてきたいじめが酷いのはわかってた、普通の人に耐えられるようなものじゃなかった事も。でも、ポノちゃんはどんなに酷い目に遭っても自殺なんて選ばない、学校にも絶対に来る。ホテルでおじさん達に身体を弄ばれても、ポノちゃんはいつも笑って出てきていた。」
「あんた私をずっと観察してたの!?学校がない日も!?」
「も、もちろん毎日じゃないぜ…」
「毎日だったら、キモいわよ!!」
「私はポノちゃんが絶対に死なないってわかっていたから、いじめてた。当たり前でしょ?人を死ぬとこなんて見たくないし、殺したくないし、怖い。」
「理解不能…」
「私はポノちゃんが羨ましくて…妬ましくて…愛していて…憎かった……」
ポノコは拳を振り上げる。右手に全力を込め、震わせる。
「やっぱり…ぶっころ…!!」
クシアの顔面目掛けて拳を振り下ろす。
「絶対生き残ってね…」
「っっっ…!!!!」
ポノコは寸止めする。
もうポノコの目は涙でいっぱいで、光の屈折で視界は全て薄紫に輝き、何も見えなくなっていた。
「この…クソバカ……」




