留守番は大切に。
朝食はベーコンエッグで十分なので、ウインナーは半分は冷蔵庫に、残りはレアの集落への手土産に。ベーコンも肉自体が大きかったので結構な量ができあがったので、ベーコンエッグの残りは冷蔵庫へいれて、手を付けてないベーコンは手土産用にした。精肉も小さめのブロックを残し、同様に保冷バックに詰めた。どのぐらいの距離あるかわからないので保冷剤も忘れずに。
俺が手土産準備している間に、レアはというと・・・
ベーコンを一枚ずつ大切そうに食べていた。特にベーコンの端っこのほうが気に入ったらしい。あの生肉を食いちぎれるほどの頑丈な顎と歯に似合わず、ゆっくりゆっくりかみしめていた。
ベーコンの端っこ、かみしめる気持ちわかるなぁ~。
端っこは硬いけど、なんとなく味が凝縮しているような気がする。かみしめるほど味が出るようなそんな感じ。昔、スーパーで端っこの寄せ集めが安く売られていたので買ったことがあって、そのときは衝撃を受けたもんだ。なぜこれをもっと売らないのかと。普段スーパーとかで売られているベーコンだと端っこは切り落とされてないからいつも残念なのである。
ようやく食べ終わったレアが若干残念そうにお皿を眺めていた。
おいしかったという満足感と、もうなくなったという喪失感では後者が勝ったようだ。
「レアの村に持って行く用のベーコンもあるから安心して良いよ」というと途端にレアの顔が明るくなったのが証拠だ。
茶わん洗いもして、よしそろそろ出発しようかと思ったところで玄関をノックする音が聞こえた。
ドアフォンごしにみるとリリーが立っていた。
あ・・・燻製用の枝だけもらってすっかり忘れていたよ。
扉を開けてリリーと直接会うと、リリーは不思議そうに部屋の中を見回す。
「ご主人様、この部屋は植物の声がいっぱい。リリーが育てるからちょうだい」
リリーが両手を広げるが、何のことやらさっぱりで俺は首をかしげた。
一人暮らしのワンルーム、しかも仕事終了して家に帰宅してからはずっとゲームをしていたので、はっきり言って植物を育てるような趣味も暇も無かった。観葉植物すらない。
リリーもつられたかのように首をかしげるが、すぐに戻して滑るように部屋の中に入ってきて、冷蔵庫の前に立ち、野菜室をあけた。
そういえば、普段は野菜なんか買わないんだけど、職場の後輩君が北海道出身だから実家から送ってきた野菜を分けてくれたんだっけ。ゆでるだけで大抵食べられるからやってみろっていってごっそり渡されたけど、男の一人暮らしで野菜なんかちまちま食べるはずも無く、もらった袋のままつっこまれたままになっていたっけ。
「それ、リリーにあげるよ。立派に育ててやって。あ、そういえば。植物と言えばこれも使えるかな」
俺はクローゼットから大袋をひとつ出してきてリリーに開けて見せた。そのなかには精米してない籾がついた米がいっぱい入っていた。
これはながいこと連絡していない田舎の米農家の両親から仕送りで定期的に届けられる米である。精米してからよこしてほしいもんだが、長期保存にむいているとか、精米した手の方が美味いからという理由で受け入れてくれてない。しかたないので毎度近くのワンコイン精米のところでやっているけど、最近はめんどくさくてサボっていた分、山のように残っていた。
「かわいい。いっぱい愛されて育った子たち。リリーが立派に育ててあげるね」
リリーは米袋を抱きしめた。すごく愛情深くて、なんかじーんとくる場面なんだろうけど、その抱きしめている米袋は軽く20キロ近くあるんですけど。
レアといい、リリーといい、なんかこう・・・女子として色々間違っている。
「それじゃあ、リリー。留守番まかせて良いかな?」
ドリュアスであるリリーは宿り木があるこの家からはそう遠くは離れられない。なので必然的に留守番になってしまう。リリーもわかっているようで、米袋を抱いたまま、コクンとうなずいた。
さて、ずいぶんとのんびりしてしまったけど、いよいよレアの村へと出発だ。




