続・朝食は大切に。
精肉ブロックはちょっとだけ切って置いておいて、残りはラップで包んでドリップで汚れないようにビニール袋に入れ、一時冷蔵庫へ避難させた。
このあたりの気温が今のところそんなに高くないとはいえ、異世界だしどんな菌がいるかわからないからね。異世界に来ました、食中毒で死にましたとか間抜けすぎる。
カットした肉はそのままフライパンに並べておく。
夜の家に仕掛けておけばよかったんだけど、すっかり忘れていたので米を急ぎ研いで、お急ぎ炊飯スイッチオン。
さて、早速目当てのベーコンをスライス。
せっかくのブロックなので少し厚めにカットして、フライパンに投入してガスコンロに乗せる。
ココでこだわりが砂糖ひとつまみ入れること。
先にフライパンを温めたり、油引く人もいるけど、俺の好みの焼き方はこんな感じ。
カットした肉、ベーコンの両方のフライパンのガスコンロの火を付けると、ボタン一つで火がついたことにレアが驚いた。
「なにこれ?魔法、青い炎がいっぱい!というか、今回も肉焼くんだ。なんで焼いちゃうの?というか、この肉、色が変なんだけど、腐ってないよね?」
「ん~。俺としたら生肉をもしゃもしゃ食べる方がびっくりなんだよな。正直、お腹壊しそうで怖い」
「え?・・・うぅ~ん。確かにたまにお腹壊す人はいるね。村長が言っていたけど、食べ物をいただくという罪深き人間が避けて通れない試練と罰なんだって」
どんなスパルタだよ、と心の中でつっこんだが、とりあえず、それがレアの集落の考え方だし、今力説してもしょうがないので、「へぇー」とだけ聞き流した。
「ご主人様!良い匂いがしてきたですだ!」
ぽんたが尻尾フリフリしながら大きな声で言った。口の周りは唾液だらけで、しゃべるたびにほとばしっている。ちょっと汚いけど、しょうがない気もする。実際、今ベーコンの焼けるにおいで、俺の口の中にも唾液が勢いよく分泌されている。いつも思うが、ベーコンには魔力がある気がする。
表面にかけたひとつまみの砂糖が良い仕事をして、カラメル状になり、香ばしい香りを放つ。
脂のパチパチとはじける音がまたいい。
厚切りなベーコンは表面がパリッとやきあがり、フライパンに大量の脂を残した。
ベーコンを皿に盛った後、その脂に卵を2つ割って投入し、少量の水を入れる。
水を入れた瞬間ジュゥゥゥという勢いのいい音がでて、白い蒸気が上がったところを逃さないようにさっと蓋をした。
目玉焼きは表面が白くなり、白身が固まったらベーコンのお皿に一緒にのせる。
目玉焼きにも人それぞれに好みがあるだろうけど、俺は半熟の片面蒸し焼きが好み。
カットしてただ焼いた肉は別なお皿にもりつける。
そんなこんなで、お急ぎ炊飯で炊いていたごはんが炊けて炊飯器がピーッと音がした。
料理のレパートリーは少ない俺だけど、このぐらいの朝食はつくれたりするんだよね。
テーブルに、箸は難しいだろうからレアにはフォークとナイフを置いて、俺は箸を準備し、出来上がったごはんを茶わんによそって、ベーコンエックの皿を横に置く。
「レア、できたよ。食べようか。いただきます」
俺は手を合わせてベーコンをまずはひとかじり。
口の中いっぱいにベーコンの脂のうまみがじゅわっと広がり、唾液と混じり合い何とも言えない幸福感が広がった。
魔法でつくったおかげか、素人がつくったわりに塩加減がちょうど良い。ハーブとか難しいものを使ってないシンプルなものだが、それがまた余分な香りがすくないため肉の味が楽しめる。
だが、かすかにだがチップに使った木の香りなのか、鼻に抜ける香りが涼やかで肉の脂のくどさを抑えてくれている気がする。
これだけでも塩分はちょうど良いが、目玉焼きには醤油派の俺は、こしょうを一振りかけて、醤油を一回しし、目玉焼きの黄身を潰してベーコンにからめてまた一口。
卵のまろやかさが口の中全体にひろがり、また違ううまさになる。
そこにごはんをかっ込んだ。
うーんっ!やっぱり最強の朝食だな。
もちろん、人にはそれぞれの最強飯があると思うので、これは俺の中の勝手なランキングだけどね。
ちらっとレアをみるとナイフとフォークを両手に持ち、交互にみて戸惑っている。
使い方がわからないようだ。
「レア、それはそっちフォークというので押さえて、好みの大きさにナイフできって、そのままフォークで口に運べば良いんだ。こっちのごはんというのはフォークですくって食べると良いよ」
レアは言われたとおりにして、俺の食べる順番をみていたようで、その通りに食べた。
ベーコンを口に運んだ瞬間、目が見開かれて、そのまま夢中でその順番通りの食べ方をくり返した。
そして口の中いっぱいに食べ物が詰まった状態、口の周りが卵の黄身だらけになりながら「おいひぃ」とつぶやいた。
食べ方は女子にあるまじき汚さだけど、慣れない道具で慣れない食べ物だからしょうがないね。
でも、こんな男料理でも喜んでいる姿を見るとちょっとうれしいね。
再び飯が美味くて夢中になっていると、ぽんたが膝の上に前足をのせてきた。
「ご主人様、オラさのぶんは?」
「ん。忘れていた。これがお前の分」
俺は先ほど別皿に取っておいたただカットして焼いただけの肉をぽんたに出した。
ぽんたはそのお皿をのぞき込んで、がっかりしたような顔で俺をみる。
なんとなく、言いたいことはわかる。
食べたいのはこれじゃないと言いたいんだろ?
「動物に塩分と脂の取り過ぎは体によくないからぽんたはそれな」
「そんなぁ~あんまりだぁ~」
いくらほしがってもやっぱりそこは厳しくしないとね。




