フリュス・9
「・・・グド、何か言いたそうな顔をしているな」
王の私室に飛び散った血をふき終わった俺に、王は声をかけた。
「いや・・私にではなく、あの「来訪者」にか」
そう、確かにさっき俺はあいつ・・鈴木に言いたいことがあった。
「なぜお前はそんなに簡単に命を懸けて戦えるのか」と・・。
「はっ・・。別にどうでもいいことなのですが・・。私はあの「来訪者」の、あの底なしの勇気と言うか・・自分の命をなぜあんな簡単にかけれるのかと・・」
普通、王によほどの忠誠がないものでなければ、いくら王の命令と言えど、「魔物と戦え」などと言われれば迷う。
それも今回は王の暗殺を計画している魔物・・。おそらく、精鋭であることが予想される。
確実に死亡率は上がる。
それなのになぜ、鈴木はああも簡単にこの依頼を快諾したのか。
単にこの任務の危険性がわかってないのかもしれないだけかもしれないのだが・・。
「・・なるほど、まぁ、その理由はそこにいる神官だ」
「?」
王は今だテレビの前で格ゲーにいそしんでいる神官を親指で指さす。
「まぁ、簡単なことなんだが、まず、そこの神官はこの世界に招く人間へのテストとして、この世界を再現したゲームを作り、地球にばらまいた。」
「ふむ・・」
「まずここで一つ目、あの「来訪者」は、この世界をもともと「ゲームの世界」として認識していた。今は神官にこの世界の事を説明され、この世界の事を「ゲームのような世界」として認識しているのだろうが・・・。まぁ、どちらにせよこの世界を「ゲーム」として意識しているのは変わらない。あいつの頭の中にはいまだこの世界を「ゲーム」としてとらえているところがある・・。さて、ゲームの世界で王から命令・・「クエスト」を受けた場合、お前ならどうする?グド」
そう言って王は俺をビシィ!と指さす。
「それは・・まぁ「はい・いいえ」があるなら迷わず「はい」を押しますよね・・。そうしないとストーリーも進みませんし、報酬もないですから」
「そう!それだ!あいつの頭の中には「王様からのクエは迷わず「はい」だぜ!」と言う考え方が神官のゲームの中でしみついている。」
「そんな・・たかがゲームで・・」
「それがあるかもしれないんだよ。だってあの神官が作るゲームだぜ?魔術の一つ二つかかっててもおかしくはない。」
「・・・」
まぁ、そういわれると何も言えないのだが・・。それって、大丈夫なことなのだろうか?
「で、もう一つは、あいつは「死」を経験しすぎている」
「?」
「もちろんこれもゲームの中の話だ。あの「来訪者」みたいなレベルのゲーマーになると、死んだ回数なんて十や二十な足りないだろう。新ボスをサイトなしで倒そうと思ったら、数え切れない程のトライ&エラーが必要だ」
「・・・」
「それがあいつへの「死の恐怖」を薄れさせていった。さらに神官の「痛覚遮断」の魔術が加わってさらにそれを悪化させた。」
「・・・・そんな」
そんなことがあるのか。
あの来訪者は神官が作り上げた「恐怖を感じない兵隊」だったのだ。




